『オタクの息子に悩んでます』 新刊超速レビュー

仲野 徹2012年10月09日 印刷向け表示
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オタクの息子に悩んでます 朝日新聞「悩みのるつぼ」より (幻冬舎新書)
作者:岡田 斗司夫 FREEex
出版社:幻冬舎
発売日:2012-09-28
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人生に困った時、この本をひもとけば必ず何らかの打開策を得ることができる。なんとも画期的な本である。おもろい人生相談だけでなく、その回答にいたる思考回路を惜しげもなく披瀝し、その方法論を一般化したこの本は、かの古典的名著、デール・カーネギーの『道は開ける』 に匹敵すると言っても過言ではない。

朝日新聞の土曜版に掲載されている『悩みのるつぼ』の回答陣の一人、岡田斗司夫の本である。知る人ぞ知る岡田氏にとって、これは、三本目のホームランだ。ひとつめは、東大で「オタク学」まで講義したオタクの王様「オタキング」としての活躍、ふたつめは、自らのダイエット体験から編み出した『レコーディングダイエット』。今回は、前の二つに比べ、その対象の多さ、扱う範囲の広さからいって、はるかに大きなホームランだ。

この本、昨夏に大阪のNHK文化センターで開催された「岡田式『悩みのるつぼ』実践講座~悩みは解決させるな!?」二回講座の記録である。その人生相談のすばらしさにかねてから感銘を受けていた私は、この講座を受講した。おもしろかった。観客ウォッチングが趣味の一つで、いろんな講演会やコンサートの客筋を見て、こんな人が来てるのね、と思うのが好きである。この講座での50人程度の出席者は、あまり見かけることのないオタクっぽいおにいちゃんが多くて、それもなんだかふしぎにおもしろかった。

人生相談を自らの天職とまで言い切るだけあって、岡田斗司夫のセミナーはすばらしかった。なによりも驚いたのは、回答の内容よりも、回答にいたるプロセスの普遍化である。悩みをいかにして要素に分解し、いろいろな角度からながめ、最後に価値観を付加しながら再構築するか。

これだけ書いただけでは何のことかわからないだろうが、

分析、仕分け、潜行、アナロジー、メーター、ピラミッド、四分類、三価値、思考フレームの拡大、共感と立場

という10の「思考ツール」のシンプルさと説得力には度肝を抜かれた。

いかに毎回考え抜いているとはいえ、悩みに回答していくだけで、これだけの論理的フレームワークを作り上げてしまう能力というのはどれだけのものだろう。岡田斗司夫のIQは150近いと聞いたことがあるが、その論理的構築力の高さは、おそらくIQどころではない。

岡田斗司夫は、悩みを「複数の問題がこんがらがった状態」と定義する。それだけややこしいのであるから、もちろん、回答をもらったところで一気にすべてが解決するようなものではない。しかし、相談者の悩みのるつぼ状態は、岡田斗司夫の愛情あふれる回答によって、まちがいなくほぐれ始めていくだろう。

20年ほど前、悩みがいろいろとあって、人生論や幸福論を読み漁ったことがある。結論としては、どれも似たり寄ったりであって、結局のところ、精神的なよりどころをもつしかない、ということだった。しかし、この本はちがう。かなり機械的、かつ、極めて論理的な方法論が提示されている。だから、そこそこ理詰めにものごとを考えられる人であれば、わざわざ岡田氏にゆだねずとも、自分自身で自分の悩みに答えることができるはずだ。

自慢じゃないが、セミナーや講演などではほとんどメモをとらない。しかし、このセミナーだけは違った。その時にびっしり書きこんだ資料は、いまでも「悩みのるつぼ」と印したファイルにいれて大事にとってある。幸いなことに、それ以来、悩みというほどの状況に遭遇したことはないので、そのファイルを開いてはいない。

開いてはいないが、そのファイルの中に解決法が見つかるはずだと思うだけで心が安まってくる。そう、この本は読んでためになるだけではない。読んだ後、手近なところに置いておくだけで、お守りとしても役にたつのだ。「すばらしい内容+お守り」代として、なんと1000円でおつりがくる。これほどお買い得な本は、いまだかつて見たことがない。

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