『江戸の数学教科書』

成毛 眞2009年03月01日 印刷向け表示
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江戸の数学教科書
作者:桜井進
出版社:集英社
発売日:2009-02-26
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和算とは江戸時代に日本人が独自に生み出した数学のことだ。この和算は寺子屋とは別の塾で教えられていたらしい。以前、紹介した『幕末下級武士のリストラ戦記』の主人公も7才から寺子屋に、8才からは算術塾にも通い始めている。寺子屋を描いた絵にソロバンをはじく子供がでてくるのだから、算術塾では足し算引き算ではなく、いわゆる数学を教えていたことが予想できる。

現代の学校で和算という言葉は日本史の授業にでてくるだけで、数学の授業では取り扱わない。しかし、その和算は二つの理由で驚くべき発達をとげていた。まず、第一は頂点を構成していた数学者たちが世界的なレベルにあったことだ。和算は無限大の概念を持たないため、微積分こそ発達は遅れたが、それ以外では世界の頂点を極めていた分野もあった。しかし、世界との接点はなかったため、当時の外国人だけでなく現代日本人にもあまり知られていない。

第二は庶民のレベルの高さだ。和算を勉強していたのは武士の子弟だけではない。農民も学んでいた。しかも、いわば趣味として学んでいたのだ。世界広しといえど、今から百年も二百年も前に少なくとも何十万人という人が数学を趣味としていた国は日本だけではあるまいか。wikiによれば18世紀の江戸の成人男性の識字率は70%を超えていたという。同時代のロンドンは20%、パリは10%未満だったらしい。日本人は付け加えて数学まで学んでいたのだ。

ともあれ、本書は当時のトップレベルの数学についての入門書という位置づけだ。いわゆる歴史読み物ではない。和算の練習問題が巻末に付録として付いてくるが、一部の解法には代数を使っていて、本来の和算になじまないような気がする。それゆえに星2つだ。

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