『ダチョウ力』

成毛 眞2009年03月31日 印刷向け表示
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
ダチョウ力 愛する鳥を「救世主」に変えた博士の愉快な研究生活
作者:塚本 康浩
出版社:朝日新聞出版
発売日:2009-03-19
  • Amazon
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • 丸善&ジュンク堂

久しぶりの本ブログ強力お勧め本である。著者は子供のころから鳥に魅せられた、根っから動物好きの研究者である。研究テーマはもちろんダチョウだ。本書はこの不思議な生き物を人類の役に立てようとする熱血研究物語なのだ。

これまでウサギやラットを利用して作られる抗体は1グラムあたり数億円もしたという。ところが、驚くべきことにダチョウを使うと1グラムあたり10万円になったというのだ。原理的には無毒化した病原体をメスのダチョウに注射し、生んだ卵の黄身に含まれる抗体を分離するのだ。

事実この抗体を塗布したマスクが20枚入りで6000円くらいで販売されはじめた。抗体とは病原体が体に進入したときに作り出される物質だ。これをあらかじめ体内に仕込んでおくことで、病原体を不活性化することができるのだ。たしかに安価になることで人類の救世主になるかもしれない。

ところで、ダチョウは驚異的に病気や怪我に強いのだという。また、ダチョウは相当の「アホ」な動物だという。カラスに自分が小腸に到達するまで食べられているのも気づかずにエサのもやしを食べていたりするのだというのだ。その怪我も数日で治るのだという。しかも、ダチョウは強いらしい。研究者も飼育者もダチョウに蹴り倒されたりして、気を失うことがままあるというのだ。

つまり、超アホで超元気な巨大鳥ダチョウを毎日追い掛け回し、注射をし、卵を取り出し、研究をして世界を飛び回るお話なのだ。著者は関西人生物学者である。研究そのものも面白いのだが、研究者自身もけったいなのだ。弟子の足立君もいい味をだしている。同じく獣医師である奥さんとは「野生のカンが働いて、この子とならつがいになって、生涯をともにできると直感した。」という。うははは!「つがい」か。

著者は鳥インフルエンザの抗体だけでなく、食中毒病原体の抗体を混ぜ込んだ納豆の開発やら、卵の殻を利用したアロマスタンドやら、美顔用ダチョウ油の開発やら、冗談とも本気とも区別できないような研究もおこなっている。じっさいここから何か全く新しい知識が得られるに違いない。著者の研究室ではまたガン治療および検査のためのシリアスな研究も行っているという。本のタイトル、副題、装丁、デザイン、帯も大満足。この本で1300円なら安い。

記事へのコメント コメントする »

会員登録いただくと、記事へのコメントを投稿できます。
Twitter、Facebookにも同時に投稿できます。

※ 2014年3月26日以前にHONZ会員へご登録いただいた方も、パスワード登録などがお済みでない方は会員登録(再登録)をお願いします。

コメントの投稿

コメントの書き込みは、会員登録ログインをされてからご利用ください。

» ユーザー名を途中で変更された方へ
 変更後のユーザー名を反映させたい場合は、再度、ログインをお願いします。

ノンフィクションはこれを読め!  2014 - HONZが選んだ100冊
作者:
出版社:中央公論新社
発売日:2014-10-24
  • Amazon
  • Amazon Kindle
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

電子版も発売!『ノンフィクションはこれを読め! 2014』

HONZ会員登録はこちら