『ワンクリック』新刊超速レビュー

田中 大輔2012年10月18日 印刷向け表示
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ワンクリック ジェフ・ベゾス率いるAMAZONの隆盛
作者:リチャード・ブラント
出版社:日経BP社
発売日:2012-10-18
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1994年9月22日、ジェフ・ベゾスは本の売り方を学ぶため、米国書店協会主催の書店開業セミナーに参加していた。アマゾン・ドット・コムの前身となる法人格を取得した2ヵ月後、そしてアマゾン・ドット・コム開設まではまだ10ヵ月もあるころだ。

いまや、地球最大の書店であり、世界最大のオンライン通販業社となったアマゾン。その創業者であるベゾスにもこんな時代があった。あのベゾスが、街の書店を開業しようとしている人達に混じって、書店開業セミナーに参加している光景を思い浮かべてみてほしい。とても微笑ましい光景になんだか笑いがこみあげてくる。

この本はアマゾンの創業者ジェフ・ベゾスの半生を数多くのエピソードとともに綴ったノンフィクションである。ベゾスは、マスコミに対する露出を丹念に調整し、イメージを管理している。あまり多くを語らないので、謎に包まれている部分が大きい。またアマゾンも秘密主義を貫いている会社である。それゆえにアマゾンのことを扱っている本はそう多く出ていない。そういった意味でも、ベゾスとアマゾンのことがわかるこの本は注目に値する1冊である。

ベゾスはプリンストン大学を卒業後、ファイテル、バンカーズ・トラスト、D・E・ショーといったウォールストリートのシステム開発を経て、年率2300%(!)という驚異の成長を遂げていたインターネットの魅力にいち早く気づき、アントレプレナーとしてスタートを切ることになる。

ベゾスははじめから地球最大の書店を作ろうとしたわけではない。(ベゾスは若い頃から乱読家で、本を読むことは好きだったそうだが…。)可能性さえ大きければ、どのような事業でもよかったのだ。

インターネットには多くの人が集まる。人が集まったときにその特性を理解し、上手に利用する方法を発見できれば、集まった人たちになにかを売ることができる。そこでベゾスは世界最大のインターネット小売店を作りたいと考えた。

同時にベゾスは、スタート時にはひとつの市場に集中すべきだと考えた。ひとつの市場で成功できれば、その後、他の市場についても同様にできる。では何を売るべきなのか?そこでベゾスは20種類の商品をリストアップし、ディールフローチャートを作成して考えた。そうして選ばれたのが本だったのである。

事業をはじめる際もベゾスはフローチャートを作成している。ベゾスは物事を検討するとき何かとフローチャートを作成するくせがあるようだ。ここで「後悔最小化理論」というものを思いついたらしい。年をとって人生をふり返ったとき、どちらの道を選んだほうが後悔しないのかと考えるのだ。これは私達でも使える理論である。あのときやっておけばよかったと後悔するよりは、トライして失敗して後悔した方がいいに決まっている。

そして冒頭の場面へと戻る。このセミナーでベゾスは「顧客サービスをアマゾン・ドット・コムの礎にする」と決めた。アマゾンは現在に至るまで顧客を最優先するという考えを貫いている。その上で使いやすさを追求し、考案されたのがワンクリックで購入を済ませることが出来る仕組みである。

この仕組みはほんとうに便利である。ワンクリックで商品が買えることで、購入の障壁は著しく低下した。HONZの書評をみて、そのリンクからアマゾンへと飛び、カートに入れるボタンを押す。早ければ翌日には商品が届く。この利便性は街の書店がどうあがいても現状ではかなわないだろう。

しかし街の書店が必要ないかというとそんなことはない。私はアマゾンと街の書店は共存すべきだと思っている。「顧客サービス」の面で街の書店ができることはまだまだ多くあるはずだ。

とりあえず書店で働いている私の目下の課題は、HONZの書評でとりあげられた本を、いかにして街の書店で売るかということである。ワンクリックは便利だけど、たまにはHONZで紹介されている本を街の書店でも買ってほしいなぁ。

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ノンフィクションはこれを読め!  2014 - HONZが選んだ100冊
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出版社:中央公論新社
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