『振仮名の歴史』

成毛 眞2009年08月20日 印刷向け表示
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振仮名の歴史 (集英社新書)
作者:今野 真二
出版社:集英社
発売日:2009-07-17
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タイトルのまま、振り仮名(ふりがな)の歴史についての本だ。サザンオールスターの歌詞やコミックスなどに使われる振り仮名の説明のあと、平安時代から室町時代、江戸時代、明治期の3時代に分けて振り仮名の歴史を俯瞰する。

本書の結論としては振り仮名は未来に伝えていく必要があるということになる。100%同意するものだ。

本書でははっきりと明言してはいないのだが、現代日本語は大陸の中共語と同様、「官」が用法を規定しつづける言葉だ。昭和21年の内閣告示第32号の「当用漢字表」の発表いらい、現在使われている「常用漢字表」も学者と官僚によって作られている。その「当用漢字表」には「振り仮名は原則として使わない」と規定されていた。

本質的に「官」に従順である新聞やテレビはこれらの「御触れ」を遵守しているため、漢字表にない「癌」は「がん」としか書かない。本書のあとがきでも新聞上の「改ざん後も光るみずみずしさ」という例を引いている。うまく振り仮名を使えば、たとえ新聞であっても日本語の豊潤さが楽しめるのだが、残念なことだ。

「家」=「うち」、「他」=「ほか」、「想う」=「おもう」、「尚」=「なお」、「寿司」=「すし」などは現在使われている常用漢字表の表記にない。日本人のほとんどはこれではバカ丸出しだと感じて「漢検」をこぞって受験している可能性があった。しかし、その「漢検」がじつは個人商店だったことを知り、この分野の人材の払底があらわになってしまった。

ともあれ、本書の本来のテーマである振り仮名の歴史がじつに面白い。左右に振り仮名が付けられているケースがあるのだが、これは室町時代から使われていたらしい。すなわち「旱天」に対して「ヒデリ」という振り仮名が右に、「カンテン」という振り仮名が左についているのだ。江戸時代では「艶書」の右に「えんしょ」、左に「アダナルフミ」とある。ルビだけで頭の中にいろいろなイメージが広がる。

日本語を研究対象としてしか読んだことのないような日本語学者と、法律文しか読んだことのないような官僚によって作られた現代の「御触れ」を考えるうえで、このうえない本となっている。

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