『援デリの少女たち』新刊超速レビュー

村上 浩2012年11月28日 印刷向け表示
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援デリの少女たち

援デリの少女たち

  • 作者: 鈴木 大介
  • 出版社: 宝島社
  • 発売日: 2012/11/21

「援デリ」とは、組織的に運営される「援助交際デリバリー」の略である。援デリ業者は、出会い系サイトで集めた男性客のところへ少女を派遣して売春させ、少女が男から受けとった金額の一部、あるいは大部分、を徴収するのだ。これら違法な援デリ業者は、当然通常の性風俗業者のように営業届けを出していない。法の外側を自らの生息範囲に選んだ彼女たちには、様々な危険が待ち構えている。

本書には、著者の6年間に及ぶ取材によって明らかにされた、援デリの実態が克明に描き出されている。その現実はあまりにも残酷で、読んでいるだけで気分が悪くなるほどだ。誰がどのように援助デリを運営しているのか、少女に群がるのはどのような大人達か、そして、あらゆるセーフティネットからこぼれ落ち援デリに行き着いた少女たちは何を思うのか。

本書に登場する援デリ少女の多くは、未成年どころか、18歳未満の女子中高生である。援助交際というと、遊ぶ金欲しさの軽率な行動と思われるかもしれないが、彼女たちの多くは「生きるため」に援デリに手を染めている。著者は買春男たちに怒りを覚えながらも、貧困によって行き場を失った少女たちにとって、援デリをはじめとする売春産業が「闇のセーフティネット」として機能していることに、出口のないジレンマを感じている。買う男たちの一掃だけでは解決しない、深刻な問題がそこにはある。

違法な性風俗が、堅気の世界だけで完結するはずもなく、非道な暴力が少女たちに襲い掛かってくる。それでも、強く、前へ進む少女もいる。第7章「身籠った少女」に登場する里奈は、幼くして両親が失踪したため、叔母の家で育てられた。その叔母も、里奈が11歳のときに逮捕され、彼女はその後養護施設、里親の家を渡り歩く。里親の家を15歳で飛び出した里奈は、過酷過ぎる人生を歩むこととなる。

里奈は18歳になると直ぐに合法的風俗店で働き始め、自らの力で、ばらばらになった家族を修復していく。しかし、里奈のように自分の力で人生を切り開ける少女は珍しい。本書に登場する少女のほとんどが、溺れそうになりながら、もがき続けている。性風俗・売春産業の底辺には「精神・身体障害者」や「知的障害者」も多いという。生活保護不正受給を巡る議論や、失業率などの統計数字からは見えてこない、生々しい貧困の現実に圧倒される。

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