『ご先祖さまはどちら様』 産経新聞 6月11号 「書評倶楽部」掲載

成毛 眞2011年06月16日 印刷向け表示
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ご先祖様はどちら様
作者:高橋 秀実
出版社:新潮社
発売日:2011-04
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誰でも両親は2人である。祖父母は4人、曾祖父母は8人と、世代を遡るにつれ、先祖の人数は倍増する。1世代20年とすると、20代前には100万人を超え、30代前には20億人を超えてしまう。それぞれたった4百年前と6百年前のことである。

もちろん、そんな数の日本人が住んでいたわけでない。ぎゃくに一人の祖先から何100万人もの子孫が生まれたと考えるべきである。つまり、私たちは誰しも立派な人の末裔の「素質」を持っているのだと著者は知ることになる。その立派な人には天皇家も含むのだ。

著者は縄文人風の顔つきだからというきっかけで、二年がかりの先祖さがしの旅をはじめた。もっとも遠い先祖である神々が住む出雲、父の先祖が住んでいた宮城県、鈴木という苗字の親睦団体がある神戸、母型の祖先が住んでいた静岡県、家紋をたどって山梨県などを訪ね歩いた。

それぞれの土地で、わが家系は源氏や平家の末裔であったり、武将の系譜であったりという逸話が土地の人たちから語られる。しかし、けっしてそれを家系図などで確認することはできない。それもそのはず、著者は先祖探し旅を通じて、いまを生きている人々との会話を楽しみながら、自分と日本を新しく発見することを本当の目的にしているようなのだ。

文体は穏やかであり、どこかとぼけていて親しみやすい。古書や歴史書、郷土史や戦災記録などから引用をしながら、視覚に訴えるような九つの物語を紡ぎだしている。

著者が最後に訪問したのは京都の清和天皇陵と清和天皇社だ。神社である天皇社の代々の氏子に、参拝をするときには「家内安全、村安全」を願うのだと聞いて、著者は思わずうなずく。皇室の被災者訪問と鏡合わせに見えてしまうのは評者だけだろうか。

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この本は「本のキュレータ勉強会」改め「HONZ」の定例会で、今月読む本として紹介されたものだった。お恥ずかしいのだが、著者の高橋秀実さんを存じあげなかった。当然、本書は高橋ワールドの最初に読んだ本になった。それ以来『からくり民主主義』『やせれば美人』『趣味はなんですか』『トラウマの国ニッポン』と読みつづけ、高橋秀実のコヤシと化してしまった。

「HONZ」定例会でメンバーが、あまりにも面白そうな本を紹介しつづけるのが最近の悩みである。新刊以外にも手を出してしまうし、書評もおろそかになる。

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