上岡陽江 大嶋栄子『その後の不自由 「嵐」のあとを生きる人たち』(医学書院)

東 えりか2011年02月10日 印刷向け表示
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毎週土曜日の朝のお楽しみに週刊ブックレビューがあります。

私も毎年出演させていただくが、意外な人が意外な本読みでとても面白い。

ときどき大議論や徹底批判が行われたりして、ちょっとはらはらさせられるととてもお得な気分が味わえます。

次回の放送、2月12日は、松田哲夫(編集者)信田さよ子(臨床心理士)明川哲也(作家)の3人が合評ゲスト。

松田さんはともかく、他の二人の選んだ本は私もすごく興味を持って読みました。

明川さん(昔はドリアン助川)の選んだルイ・セロー『ヘンテコピープルUSA』(村井理子訳 中央公論新社)はいくつか書評を書いたほどお気に入りの本。

成毛眞さんのブログでも詳しく紹介されています。
ヘンテコピープルUSA ヘンテコピープルUSA
(2010/10/25)
ルイ・セロー

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さて信田さんの選んだ『その後の不自由 「嵐」のあとを生きる人たち』は、昨年読了した後、すぐに当てのない原稿を書いてしまいました。私の中のマイブームでもある医学書院のシリーズ ケアをひらくの最新刊。

薬物やアルコールに溺れ「依存症」とか「境界性パーソナリティ障害」と診断された女性たちが、どう行き続ければいいのかをたくさんの例を引いて紹介していきます。

奇しくも今、小向美奈子の逮捕状問題がニュースになっていますね。

彼女は「その後」どうしていたのか…

読み終わった直後に、思わず文章にしてしまったのは、それだけ衝撃が大きかったから。

土曜日の(再放送もあります)週刊ブックレビューとともに読んでいただきたい本です。

『その後の不自由 「嵐」のあとを生きる人々』
その後の不自由―「嵐」のあとを生きる人たち (シリーズケアをひらく) その後の不自由―「嵐」のあとを生きる人たち (シリーズケアをひらく)
(2010/09)
上岡 陽江、大嶋 栄子 他

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女性には月経がある。そんなことはわかっている、と男性は言うだろう。しかし、その辛さや面倒くささ、そして心の動きは男性には絶対に理解できない。いや、女性同士でも本当にお互いの症状がわかっているかは大いに疑問である。

本年度の大宅賞受賞作『逝かない身体』、新潮ドキュメント賞受賞作『リハビリの夜』などで注目度の高い医学書院の「シリーズケアをひらく」から、また新たな問題作が出版された。

『その後の不自由』は精神疾患や何らかの不幸な事件などで心に大きな傷を受けた女性たちが、そのあとの人生をどう生きているかを探った労作である。著者のひとり、大嶋栄子は精神科ソーシャルワーカーを経て、女性の福祉支援施設「それいゆ」の設立者。もうひとりの上岡陽江は、自身が薬物依存と摂食障害の経験者でありながら、依存をもつ女性をサポートする施設『ダルク女性ハウス』の代表である。

本書は依存症の発症原因から構造、回復後の経験や相談者の心得を6章に渡り語っていく。特に注目したいのは「生理のあるカラダとつきあう術」。この章は「ダルク女性ハウス」の収容者が行う「当事者研究」という活動のひとつで、薬物や自傷などの依存の引き金に「月経」が大きな要素である、ことを明らかにしたものだ。

社会に受け入れてもらえない、生きづらいと考える人は多い。しかし、今日と明日、生き延びるために本書を参考にして欲しい。著者が最後に語っているように「明けない夜明けはありません。」

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