命がけで生きる 『男一代菩薩道』

村上 浩2010年06月02日 印刷向け表示
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採点:★★★☆☆

インド、仏教に興味がある人にはおススメ。題材は最高なのだが、書き手が素人っぽい。。。

佐々井秀嶺という日本生まれのインド人についての話(佐々井氏のWikipedia)。フジテレビのドキュメンタリーの取材を基に、ディレクター自らが本書を作成しているため、著者は仏教の専門家でもないし、文章のプロでもない。よって、本書の見所は佐々井氏へのインタビュー、佐々井氏自身の言葉だ。


男一代菩薩道―インド仏教の頂点に立つ日本人、佐々井秀嶺 男一代菩薩道―インド仏教の頂点に立つ日本人、佐々井秀嶺
(2007/12)
小林 三旅今村 守之

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本書の副題にもあるように、佐々井氏は仏教の生まれた国、インドで仏教の頂点に立っている。インドの宗教といえば最初にヒンドゥー教を思い浮かべるが、近年では仏教徒が増えているようだ。どのような人が仏教徒になっているかというと、アウトカースト、いわゆる不可触民の人たちがヒンドゥー教を捨て、仏教へ改宗しているのだ。インドのカースト制の厳格さは色々聞いたことがあったが、インド人の知人に聞いた話が最も衝撃的だった。インドにある彼の家には3人の使用人がいるが、一人は運転手、もう一人は台所、そしてもうひとりは台所の床専門らしいのだ。床専門の使用人はそのカースト故に、テーブルの上のモノは触ってはならないらしい。

あのガンジーですら不可触民については、黙認だったらしい。著者が言うには、

ガンディーはこの制度を改革しようとはついにしなかった。素振りすら見せなかった。彼は不可触民をなくそうとしたが、カーストという枠組みには疑問をもたなkったのである。

そんな状況に真っ向から立ち向かった人間がいた。インド仏教復興の立役者であり、インド憲法の父として知られる、アンベードガルである。自身も不可触民の出自であるが、その明晰な頭脳で奨学金を得て、欧米へ留学する機会を得て、その後弁護士、労務大臣、ついに初代法務大臣にまで上り詰めている。彼のガンジーへの言葉は、その差別が如何に苛烈なものであったかを物語る。

私には(祖国が)ありません。犬や猫のようにあしらわれ、水も飲めないところを、どうして祖国だとか、自分の宗教だとかいえるのでしょう。自尊心のある不可触民なら誰一人としてこの国を誇りに思うものはいません。この国が私たちにあたえる不正、虐待はあまりに大きく、意識的、無意識的にこの国に反逆するようなことになったとしても、その罪はこの国にあるのです。裏切り者と罵られても、私は構いません。その責任はこの国にあるのですから

アンベードガルの後を引き継ぐように現れたのが、佐々井氏である。彼の人生は本当に波乱万丈である。その詳細がきになって、ついつい600p2段組という脅威のボリュームの新書も買ってしまった(まだ読んでない)。


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(2008/10/17)
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彼は徹底的に行動する。闘う。彼の仏教は闘争仏教なのだ。

彼を突き動かすものは何か?夢に現れた竜樹か?理不尽なカースト制への怒りか?

行動即お勤め。もう何も考えずに寝られるということはありませんよ。全インドがかかっているんだから。

遠いインドの話だが、日本は無関係といえるだろうか。

以下のニュースは殆どマス媒体では伝えられていない。自分もエコノミストを読んだ後気になって調べたが、ほとんど情報が得られなかった。そして、完全に忘れていた。

カイロへの飛行機での不可解な死亡事件

気づかない内に多くの人を切り捨てているのかもしれない。切り捨てられた人々が牙を剥くそのとき、我々に向けられる怒りにどう対処すればよいのか。9・11後のアメリカのように行動できはしないだろうし、してはならない。

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