『聖書考古学 - 遺跡が語る史実』by 出口 治明

出口 治明2013年07月03日 印刷向け表示
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聖書考古学 - 遺跡が語る史実 (中公新書)
作者:長谷川 修一
出版社:中央公論新社
発売日:2013-02-22
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世界で最も読まれている書物は何か。それは、聖書において、他にはない。中でも、アブラハムの物語、モーゼの出エジプトや十戒、ダヴィデ王やソロモン王の栄華等は、果たしてどこまでが伝説で、どこまでが史実なのか、判然としない向きも多いだろう。

本書は、現地調査に従事する新進気鋭の著者が、こうした疑問に真正面から取り組んだ力作である。「1章:聖書はなぜ書かれたか」では、古事記との対比にまで言及し、「2章:考古学は聖書について何を明らかにするか」では、考古学の限界をきちんと整理し、「3章:アブラハムは実在したか」「4章:イスラエルはカナンを征服したか」「5章:民族の栄光と破滅」では、旧約聖書に描かれた歴史を、1つずつ、丁寧に検証していく。

一見地味な記述が連続しているような感じを受けるが、主観に引きずられることなく、できるだけ歴史を客観的に叙述するためには、こうした正統的な取り組みが必要不可欠だと思われる。南北に分かれたダヴィデの王国では、南ユダ王国よりも、北イスラエル王国の方が栄えていたという記述も説得力に富む。

「6章:一神教の形成からキリスト教へ」は、やや足早な感じが否めないが、このテーマは聖書考古学というジャンルから、少し離れているからだろう。「7章:聖書学と歴史学・考古学」では、現在の聖書学・歴史学、考古学の地平と、これからの展望がコンパクトにまとめられている。巻末の読書案内も、もっと学びたい人には、とても親切である。

本書の副題は、「遺跡が語る史実」である。著者は、聖書を題材として取り上げているが、ここで展開されている議論は、文献史料の研究と遺跡発掘調査に基づくアプローチの双方から、より多面的に歴史の真実に迫ろうとする、本格的な現代歴史学の方法論そのものである。歴史好きの皆さんにお勧めする所以である。

出口 治明

ライフネット生命保険 代表取締役会長兼CEO。詳しくはこちら

*なお、出口会長の書評には古典や小説なども含まれる場合があります。稀代の読書家がお読みになってる本を知るだけでも価値があると判断しました。

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