『関東連合』、『鎮魂』 新刊超速レビュー

栗下 直也2013年09月30日 印刷向け表示
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関東連合:六本木アウトローの正体 (ちくま新書)
作者:久田将義
出版社:筑摩書房
発売日:2013-09-05
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鎮魂 〜さらば、愛しの山口組
作者:盛力 健児
出版社:宝島社
発売日:2013-08-30
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昨年9月の六本木クラブ襲撃事件以降、新聞、雑誌をこの漢字四字はどれだけにぎわしただろうか。俗物の塊である私も雑誌を捲ったり、そういう筋を取材している知人に聞いたりもしたのだが、聞けば聞くほど、よくわからないのである。東京の夜の街を全て牛耳っているだの、山口組も戦闘力ではしのぐだの。メディアは実態が見えないからか、煽り続け、彼らの姿をひたすら肥大させた。こうした中で、幹部による暴露本も出たが、当事者の語りには意外な事実も含まれていたものの、客観的な視座に欠ける物足りなさもあった。

そこに現れたのが本書である。筑摩書房が関東連合。漢字四字以外、共通項を見いだせない意外な組み合わせが新書ファンには魅力だったりするかもしれない。目次を眺めるとわかるが、アンダーグラウンドの歴史が時系列に丹念に調べられている。興味の有無にかかわらず、不良少年の歴史などこれまで注目を集めなかっただけに、資料もほとんどなく骨の折れる作業であることは容易に想像できる。関東連合云々よりも時系列の整理が最大の読みどころかもしれないと思えるほどだ。実話誌の編集長を務めていた著者だから可能だったのだろう。

著者は彼らが世間を騒がす前から取材していることもあり、過剰でも過小でもない等身大の描写を試みる。彼らだけでなく、捜査当局や暴力団など周辺の関係者の声も拾うことで、関東連合に寄りすぎず、淡々過ぎると思えるほど客観視する。そのことにより、これまでの報道では見えなかった彼らの姿を浮かびあがらせる。

詳細は手にとって読んで欲しいが、著者は彼らがこれほどまでに影響力を持った解を時代性、地域性に求める。ヤクザに対する規制が厳しくなる一方、間隙を縫うかのように、彼らが六本木周辺で経済力を蓄え、存在感を増したことからもそれは明らかだ。

本書を深く理解するためには、同時期に発売された盛力健児の『鎮魂』を合わせて読むと面白い。山口組の直参の回想録だが、昔気質のヤクザが服役中にバブル景気とその崩壊が訪れ、出所後は浦島太郎状態になる。義理や人情ではなく、経済が行動原理になったからだ。滅私奉公の働きは報われず、服役前の抗争で率先して動かなかった人間が自分の組どころか山口組のトップに上り詰めている。映画『アウトレイジ』もびっくりの裏切りの連続で描写も克明だ。

これら2冊は我々から遠い世界の話ではない。アンダーグラウンドの世界は陸続きである。関東連合は準暴力団に指定され、取り締まりも強化されつつある。ただ、規制をすれば犯罪は消えるわけではない。むしろ、規制でがんじがらめにすれば悪は潜って形を変え、見えにくくなることは歴史が証明しており、この2冊が物語っている。

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