10月のこれから売る本-トーハン 吉村博光

吉村 博光2013年10月23日 印刷向け表示
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統計学の本が良く売れています。あみだくじは真ん中が当たりやすいなど、新しい発見がたくさんあり、仕事にも活かせそうです。ただ個人的には、確率・統計というと(少しズレますが)、中学のころ友達の家で麻雀に溺れていた日々を想い出します。勿論、そんなことができたのは、部活が休みになる定期テスト前だけでしたが。。。

愉快な仲間たちとビートルズを聴きながら、「カンパーピンロン!(Can't Buy Me Love)」なんて言って、遊んでいました。まぁまぁ数学もできてた私は、麻雀は確率論にもとづいた必勝法があるに違いないなんてことを考えながらやっていました。たぶん突き詰め方が中途半端だっただけでしょうが、最終的に、必勝法は見つかりませんでした。そればかりか負け惜しみが増えて、ゲームがつまらなくなってしまいました。(笑)負けておきながら、自分の選択の正当性を主張するなんて。ね。格好悪いですよね。

負けたときに「それでいいじゃん」と胸をはれる生き方をしたい私の、10月のこれから売る本をご紹介します。

クマムシ博士の「最強生物」学講座: 私が愛した生きものたち
作者:堀川 大樹
出版社:新潮社
発売日:2013-09-18
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本書は、常識破りな「最強生物」を紹介した本です。ヒトの致死量の放射線に耐えるクマムシをはじめ、うんこになって飛行移動するカタツムリなど、人類の常識的な評価尺度ではついつい見逃してしまいそうな、凄い価値を秘めた生き物たち。生物学のゼミに参加し「黄河文明と地球環境」(他の文明は砂漠化)という切り口で卒論を書いた異型の文学部生だった私は、この本に出会うべくして出会ったのかもしれません。

高度経済成長、公害発生、それ以後のバブル経済発生と崩壊・・・人々の価値観がひとつのベクトルに向かうことの怖さを、つくづく感じていました。「もし来年、巨大隕石が地球に衝突したら?もし次の氷河期が、とてつもなく寒くて長かったら?ネアンデルタール人のように、我々も絶滅してしまうかもしれない。」本書にこんな一文がありますが、この種の心配をもっていきてきたのです。

統計学やデータ分析は優れていますが、現状ではもう一歩踏み込みが必要な気がしています。データから一般的に売れる確率の高い物を導きだし、同じものを多くの商売人が売りたいと考えたとき、多様性とダイナミズムが失われてしまうのではないかと。商売人は、自分がクマムシになった気持ちで、閉塞状況を打ち破るチャレンジをする必要があるのではないか。そう考えると、ビジネス書としても読める本だと思います。

※土屋敦のレビューはこちら

戦略思考トレーニング (日経文庫) (日経文庫 I 49)
作者:鈴木 貴博
出版社:日本経済新聞出版社
発売日:2013-04-16
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戦略思考トレーニング2 (日経文庫)
作者:鈴木 貴博
出版社:日本経済新聞出版社
発売日:2013-08-09
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本書を読む前に『売れないものを売る ズラしの手法』(青春出版社)という本を読みました。「ひこにゃん」「今年の漢字」「佐世保バーガー」などのヒットの裏には、常識的な売り方から「人」や「場所」や「時」をズラす、思い切った仕掛けがあったというのです。私には、とても大事なメッセージだと感じたその直後、本屋さんで『戦略思考トレーニング』を見つけました。

皆さん、ハインツのトマトケチャップをご存知ですか?本書によると、ガラス瓶のためなかなか中身が出てこず消費者が離れ始めていたとき、ハインツは「中身が濃いのでなかなか瓶から出てきません」という思い切ったCMをうって大成功したというのです。普通なら、伝統的なガラス瓶を廃止するところですよね。このエピソードは比較的メジャーかもしれませんが、このような事例が次から次に1巻だけで51問もクイズ形式で出題されるのです。CDが売れない時代に、AKB48のCDが次々とミリオンになったのは勿論「1人1枚」という常識を覆したからですよね。

現場のビジネスマンはもとより(重厚な作りのビジネス書ではないので食指が伸びないかもしれませんが)経営層の方にとっても、素晴らしい示唆を与えてくれる本だと思いました。この本に掲載されている事例が生み出された背景に、各企業の「現場」と「経営層」の間に意見の一致があったことは間違いありません。いま私は「ほんをうえる」プロジェクトで新しい取組みをさせてもらっていますが、それは本当に得がたい幸せな環境なのだと心底感謝しています。紋切り形ではないズラす努力をしなければ、と念じながら本書で思考訓練をさせてもらいました。

誰かに教えたくなるアレの統計・確率
作者:
出版社:宝島社
発売日:2013-08-23
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本書は、知っていると役に立つ確率や興味深い統計データなど、ヘぇ~と感じる数字が満載の雑学本です。肩の力を抜いて読みたい本です。この本を読むと、生活のあらゆるシーンに確率って、あるんだなぁと感じます。例えば、「双子が生まれる確率は1.86%」とか「タクシーで女性ドライバーに当たる確率3.1%」などがあります。じゃんけんにおいては、「最初の手でグーを出す確率は35.0%」「あいこになったとき、相手が直前と同じ手を出す確率は22.8%」というデータから、初手は「パー」を出し、あいこではそれに負ける手を出すという結論を出しています。こういう情報を頭に入れて上で、臨機応変にズラすことができると良いですね。

面白くて眠れなくなる数学プレミアム
作者:桜井 進
出版社:PHP研究所
発売日:2013-07-17
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確率・統計から少し話が広がってしまいますが、テレビ番組の影響もあって、近ごろ「数学」そのものの美しさに惹かれています。本書によると、ヒマワリの花と松ぼっくりには驚くべき「数の秘密」があるそうです。前の二つの数を次々に足してできあがる「フィボナッチ数列」にまつわるこの「数の秘密」を巻頭で読むと、その美しさに思わずため息が出てしまいます。黄金比とか円周率とか色々ありますが、著者が主張する「世界は数学でできている」という言葉を念頭において、我々は生きていくべきだと納得させられます。

円周率の小数点以下は無限ですが、様々な業種によって、円周率πをどこまで使用するかが決まっているそうです。私はなんとなく16桁まで覚えていましたが、それが小惑星探査機「はやぶさ」で使用されたレベルときいて少し嬉しくなりました。もし、3.14で計算してしまうと、15万キロもの軌道誤差が生まれてしまうそうです。ヒマワリや松ぼっくりの造形に数学の美しさが影響を与えているように、何かを生み出すときに、数学的な考え方が実は役に立つものなのかもしれません。物事に成功や失敗はつきものですが、数学的な美しさに適っているかどうかが、結果を左右しているということはないでしょうか。数学的な感性をもつことは、心を素直に保つことと同じくらい大事なことなのかもしれないと、この本を読んで感じました。

統計・分析を、一般的な確率論として使ってしまうと多様性が損なわれると思うので、さらに一歩深めて、楽しく個性的に使っていきたいと思う今日この頃でございます。

吉村博光

トーハン勤務

夢はダービー馬の馬主。海外事業部勤務後、13年間オンライン書店e-honの業務を担当。現在は本屋さんに仕掛け販売の提案をする「ほんをうえるプロジェクト」に従事。

ほんをうえるプロジェクト https://www.facebook.com/honwoueru

TEL:03-3266-9582

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