『おじさん追跡日記』-新刊超速レビュー

栗下 直也2013年12月31日 印刷向け表示
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おじさん追跡日記
作者:なかむら るみ
出版社:文藝春秋
発売日:2013-11-25
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12月の22時以降の山手線の中での「おじさん」の存在感はすごい。つり革を命綱に周りの人にぶつかりまくる泥酔おじさんや、飲んだ帰りなのだろうが何故か同僚にひたすらケンカを売りまくるおじさん。おまえの頭は何トンあるんじゃと突っ込みたくなるほど座席で隣のオネーさんに頭を預けるおじさんなどがいる。格好も千差万別で見ていて飽きない。ただ、私がこうした肯定的な気持ちを抱くのは私自身がおじさんであり、そうした光景に遭遇するとき、大抵酔っぱらっているからだろう。時には私自身が周囲にフライングボディーアタックをかましているのかもしれないし。当事者になりかねない私のような人間を除けば、多くの乗客にとって、彼らは迷惑な客にすぎない。そして、一部の中高年の22時以降の傍若無人の振る舞いにより、世の中の中高年は多様にもかかわらず「おじさん」というネガティブな四文字に生態が集約されてしまっている。明らかに飛躍した論理のような気もするが、年末なので文脈上、許してください。

著者の前著『おじさん図鑑』はおじさんを観察して48種類に分類し、絵と文で観察した。例えば「アート系のおじさん」、「リュックのおじさん」、「人の物をのぞくおじさん」、「全身白っぽいおじさん」、「何となく嫌なおじさん」などなど。「おじさん」で済ましてしまう中高年をおじさんで済まさなかったことに、全国のおじさんに希望をもたらした名著であった。

その前著に続く本書は著者が24人のおじさんと実際に飲んだり、インタビューしたり、おじさんにより踏み込んだ一冊だ。『おじさん図鑑』同様、著者の脱力したイラストがおじさんを身近に感じさせるが、登場するおじさんの職業も年齢も見た目も人生観も見事にバラバラ。ユニークなヘアスタイルのコンビニ店長、女装好きの画家、刺青だらけのタバコ店店主、ジャーナリストや劇作家、もちろんサラリーマンも。そして政治家の石破茂氏まで。一番強烈なのは名刺に「ヤクルト月極」、「愛犬教室「、「パンク修理」、「大人のおもちゃ」が並列するおじさんか。自宅もゲームセンターとドッグランがある不思議な世界で私の筆力では説明できません。ちなみに、全く交わる気配のない24人の人生だが、酒のつまみは「イカと落花生」が好きという共通点もあるとか。年の瀬なので少しばかりレビューっぽいことを書けば、本書は脱力系の文体とイラストだが、全体を通じて、人生は多様であり、自分が信念を貫けば意外にも周囲は許容してくれるという示唆に富んでいる。

とはいえ、「おじさんにインタビューしてるだけだろ」と突っ込まれては身も蓋もない。そのとおりである。ただ、通勤列車に乗っていて、やたら気になるおじさんに遭遇した経験ある人や、おじさんになる前にどのようなおじさんを目指すべきかに悩む男子は手に取ると新たな発見がある一冊である。

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男子必読。私は「全身白っぽいおじさん」にだけはなりたくないです。

おじさん図鑑
作者:なかむら るみ
出版社:小学館
発売日:2011-12-07
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  • 丸善&ジュンク堂
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ノンフィクションはこれを読め!  2014 - HONZが選んだ100冊
作者:
出版社:中央公論新社
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