『猟奇博物館へようこそ 西洋近代知の暗部をめぐる旅』 新刊ちょい読み

内藤 順2011年12月29日 印刷向け表示
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
猟奇博物館へようこそ ─ 西洋近代知の暗部をめぐる旅
作者:加賀野井 秀一
出版社:白水社
発売日:2011-12-23
  • Amazon
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • 丸善&ジュンク堂

猟奇的という文脈のもとに、古今東西の異貌のオブジェを博物館さながらに紹介している一冊。キュレーションのお手本のような構成だ。

本書には解剖学ヴィーナス、デカルトの頭蓋骨、腐敗屍体像にカタコンベ、奇形標本などのグロテスクな写真がふんだんに登場する。それでいて上品さが損なわれていないのは、対象人物や、その思想へのリスペクトを欠いていない著者の語り口によるものであろう。

例えば哲学者デカルトは、紆余曲折を経て頭蓋骨と身体が別々の場所に葬られている。この事実を紹介した後の、著者のコメントが憎い。

それにしても、心身二元論の標榜者にふさわしく、デカルトは今日もなお、形而上的な頭蓋と形而下的な四肢の骨とを別々の場所に眠らせているのだねぇ。

また、功利主義思想家のジェレミー・ベンサムも負けてはいない。一望監視装置「パノプティコン」の考案者にふさわしく、自身の姿をロンドン大学にて衆人環視の中にさらし続けているのだ。一方で、我らが日本の代表選手は小野小町。肉体が腐敗してゆく過程を九段階に分けて描写した「九相図」というものが紹介されている。美は移ろいやすいがゆえに、美しいのであるという。

本書の序文には、「ひとたび足を踏み入れれば、もはや後に引き返すことはできません。いいですかな。よろしいかな、覚悟してお入りあれ」と書かれている。さて、どうします?

記事へのコメント コメントする »

会員登録いただくと、記事へのコメントを投稿できます。
Twitter、Facebookにも同時に投稿できます。

※ 2014年3月26日以前にHONZ会員へご登録いただいた方も、パスワード登録などがお済みでない方は会員登録(再登録)をお願いします。

コメントの投稿

コメントの書き込みは、会員登録ログインをされてからご利用ください。

» ユーザー名を途中で変更された方へ
 変更後のユーザー名を反映させたい場合は、再度、ログインをお願いします。

ノンフィクションはこれを読め!  2014 - HONZが選んだ100冊
作者:
出版社:中央公論新社
発売日:2014-10-24
  • Amazon
  • Amazon Kindle
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

電子版も発売!『ノンフィクションはこれを読め! 2014』

HONZ会員登録はこちら