著者インタビュー 『なかのとおるの生命科学者の伝記を読む』仲野徹氏(その2)

土屋 敦2012年02月23日 印刷向け表示
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インタビューその1はこちら! 

成毛 なんだか面白そうな本がありますね。(一冊手にとって) えーっ(笑)。

早速一人の世界に入り込み、本を読みふける代表

仲野 ああ、『まんが医学の歴史』ですね。講義の小ネタ用に使ってます。どのくらい売れているのか知らないけど、ものすごくよく書けてますよ、これ。

まんが医学の歴史
作者:茨木 保
出版社:医学書院
発売日:2008-02-01
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アマゾンのレビューもほとんどが☆5つ

成毛 (本をめくりながら)あー、ヒポクラテスの誓いから始まってずっと……

仲野 分子生物学のことも書かれていて、これはおすすめの一冊。面白いです。僕の本よりもずっと読みやすいですしね。まあ漫画ですから当然ですけど。

成毛 この先生、医師で漫画家なんですか。

仲野 奈良県立医科大学を出た産婦人科の医師です。この本、もっと売れてもいいなぁ、と思いますけどね。ものすごい好きな本です。

成毛 この『カラー版 医学ユーモア辞典』っていうのも相当面白そうなんですけど(笑)

カラー版 医学ユーモア辞典 改訂第3版
作者:長谷川 榮一
出版社:エルゼビア・ジャパン
発売日:2008-06-19
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仲野 これは、医学上の面白いエピソードなんかを集めて書いておられる。これも著者はお医者さんですけど、いろんなこと調べてはるなぁ、と思いますよ。医学関係者じゃない方が読まれてもすごく面白いと思います。

成毛 ……。

また一人の世界に没入。仲野先生に返事して下さい! 

仲野 ……。えっと、ぼくは年間に60分×50時間ぐらいしか講義をしないんですけど、その三分の一ぐらいは、こういった本に載っているような雑談です(笑)。講義の後でアンケート取ると、「講義も雑談の勢いでして下さい」とか、「雑談は面白いけど講義は面白くない」とかね。毎年2〜3人はすっごい真面目な学生がおって、「雑談は無駄です」と書いてあったり。

成毛 ぼくは早稲田でMBAの講義を持っているんですけど、ゲストを呼んで、1コマ目に好きなことを話してもらうんですよ。それで2コマ目に学生に講演をしてもらう。評価は「いかに聴衆を笑わせられるか」で決める。笑いをとった奴がAです。まじめな奴は「役に立たなかった」って言いますね。

仲野 自分の学生時代を思い出しても、覚えているのは講義の内容より、雑談のほうですよね。

成毛 しかし、医学部ですから、他の学部に比べて学生時代に覚えなければならない情報の量があまりにも多いですよね。

仲野 むちゃくちゃ多いです。ちょっと学生がかわいそうなぐらいです。

成毛 戦後間もない頃にくらべて医学情報は700倍になったっていう話もあります。

仲野 それはあるでしょうね。今は、われわれが教えてもらっていた頃の30倍って言われてますから、戦後間もない頃からでいうと、1000倍近くになってるんじゃないですかね。ですから、覚えるのはもう無理なんですね。それを考えると、プリンシプルだけを覚えて、あとは調べればいい、ということになります。人間が覚えることのできる量って限られているわけですから、おもろいことを覚えておいたほうが得、みたいな気がするんですよ。だから雑談ばかりしている、というわけじゃないんですが。でも、まともなことは調べれば必ずわかりますしね。学生にはwikipediaを見てレポート書いたらあかん、とか言うてますが、私は見てます(笑)。英語のwikipediaはものすごい情報量ですよね。だいたいあれだけで学生を教えられるんちゃうかな、と思うぐらい。

成毛 wikipediaの日米の違いは、両国の決定的な差になりかねないと思っていますね。まったく関係な話になっちゃいますが、この間、戦車の砲塔の強度について、何発打ったら壊れるか、調べてたんですけど……。

仲野 そんなん載ってるんですか?

成毛 それが細かく載ってました(笑)。M1A2に使われている砲塔の50口径に関しては、ロットナンバーの◯番~◯番までは200発、とか。そこまで載っているのかと感心すると同時に、ここまで日米のwikipediaに差があると、まずいんじゃないかと思いましたね。

面白いのがいい、笑えるのがいい、と意気投合する二人。真面目な学生さんたち、ごめんなさい。

……えーっと、話が思いっきりずれたのでもとに戻します。というか、代表、なんで戦車の砲塔の耐久性について調べてるのか。もう意味がわかりません。

「あの本がどの程度売れるかが、日本人の試金石になるんじゃないか」

 成毛 今、1ヶ月にどれくらい本を読んでいますか。

仲野 あんまり読めてませんね。こう見えても結構仕事をしているんです(笑)。

成毛 失礼しました(笑)。むちゃくちゃ読んでおられると思っていました。

仲野 出張が多いとよく読めるんですよ。できるだけ飛行機で行かずに新幹線で行く。そうすると落ち着いて読めますから。土日含めて本をじっくり読めるのは1週間で10時間ぐらいじゃないですかね。

成毛 そんなもんですよね。僕が10年前に書評サイト始めようかな、と思ったのも、仕事をやめたからですから(笑)。そうじゃなかったら厳しいですよね。

仲野 年間で言えば、だいたい年コンスタントに100冊ぐらい読んでますね。

成毛 読んでますね~。

仲野 でも本好きとなると年間300冊ぐらいは読まないといけないような気がしていますけど。成毛さん何冊ぐらい読みますか?

成毛 最初から最後までしっかり読むのはやはり100冊ぐらいだと思いますよ。まあ、年間400〜500冊ぐらいは目の前を通り過ぎていきますが。そんなに面白い本はあまりないですよ。やっぱり。

仲野 でもHONZで勧められる本はだいたいおもろいんですよ、これが。tweitterでHONZをフォローした人でも、何回か見て、「これはあかん」と思うてフォローを外した人も多いんちゃいますか。全部買いたくなりますから。ホントにむちゃくちゃおもろい本が紹介されますよね。最近では、『パンドラの種』とか『謎のチェス指し人形「ターク」』とか。『謎のチェス〜』なんて、よう考えたらそんなおもろい話とちゃうんですよね、あれ。でも本としては本当に面白い。うまいですよね。

成毛 あれは(翻訳者の)服部桂がうまいんですよね。

仲野 科学技術系の本で、今一番楽しみにしているのは、なんといっても『The Emperor of All Maladies: A Biography of Cancer』です。あれは面白い! もう歴史に残る本やと思いますね。むちゃくちゃよく書けている。著者はインド出身のお医者さんなんですよね。インドのネイティブで、英語であれだけすごい本を書ける人がおる、というのが、もう一つの大きな驚きでしたね。ピューリッツァー賞取りましたからね。どういう能力なんでしょうね。

The Emperor of All Maladies: A Biography of Cancer
作者:Siddhartha Mukherjee
出版社:Scribner
発売日:2010-11-16
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  • 丸善&ジュンク堂

成毛 アマゾンドットコムの方で見ましたけど、読み手も絶賛ですね!200以上も☆5つのレビューが付いている本って久しぶりに見ました。

仲野 腫瘍内科の先生が書いているので、われわれが読んでも、非常に正しいんですよね。それでいて、エピソードの集め方などはすっごく面白いです。日本のどこの出版社が版権を取っているのかわかりませんが、あれは楽しみですね。あれが売れないようでは、日本のノンフィクションもいよいよ……。

成毛 問題は翻訳者によって……。

仲野 そう。それは心配ですよ。訳が悪くて「本当は面白いはずやのになぁ」と思う本、ありますからね。

成毛 そうそう、しかも、ここをこういうふうに誤訳して、もとの言葉はこうだったに違いない、というところまでわかるという、イタい訳とかありますよね。

仲野 あの本がどの程度売れるかが、日本人の試金石になるんじゃないかと思いますね。がんがテーマだから結構売れるんちゃうかな、という気はするんですけど、「がんの歴史」ですからね。それがどの程度ウケるか……。

成毛 じゃあ、HONZも総力を上げてこの本の応援を……。いや、それより先生がレビューを書いてくださいよ、HONZに。そのほうが早いわ。

仲野 (思わず)はっ、書かせてもらいます。あれは絶賛に値しますね。あれだけの本はなかなかないんじゃないかなぁ。

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……ということで、代表による、お忙しい仲野先生へのレビュー依頼が見事に決まった瞬間でした。先生、もう逃げられませんよw

それにしても仲野センセイ大絶賛の『The Emperor of All Maladies』、本当に楽しみです。原書を読める方はすぐにでも購入を。私のように英語ができないいらない9割の日本人は、素晴らしい翻訳による日本語版出版を待ちましょう!

 
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出版社:中央公論新社
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