『東京右半分』 新刊ちょい読み

内藤 順2012年03月27日 印刷向け表示
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東京右半分
作者:都築 響一
出版社:筑摩書房
発売日:2012-03-24
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最近HONZでは、紹介する本が3,000円を超えていると「ブルジョア本!」の掛け声がかかり、俄然、みんなのチェックが厳しくなる。要は「3,000円超える本なんだから、さぞかし良い本なんでしょうねぇ。」というわけだ。

そんな中、本書はブルジョア基準比200%を達成する6,000円(税抜き)のお値段だ。ダブル・ブルジョア本、略してダ・ブルジョア。厚さ:32ミリ、重さ:900グラム、ページ数:575頁。しかし、その内容の濃さが、スペックを軽く上回るのだから、紹介しない訳にもいかない。

本書で紹介されている東京右半分とは、地図で見たときに東京23区の東側に位置する地域だ。すなわち北区、荒川区、文京区、新宿区、足立区、葛飾区、江戸川区、江東区、墨田区、台東区、品川区。そして今、東京のクリエイティブパワーはこの右半分に移動しつつあるのだという。

表紙の美少女からして侮れない。新手のアキバ系美少女かと思いきや、なんとラブドール。しかも右半分と言いながら、両方の胸の半分を見せているところがニクい。

そのラブドールの製造元が、台東区・上野にあるそうだ。2001年にシリコン製のラブドール登場というパラダイムシフトが起きて以来、その顔の作り方なども大きく変貌を遂げたという。美人をそっくりに真似しても、死体のようになってしまい魅力的にはならず、人間の造形美を良いほうにデフォルメするのがコツだと、造型師さんは熱く語る。

バーや飲み屋の話題も盛りだくさん。足立区竹ノ塚のフィリピン、錦糸町のタイのようにアジア色が濃厚な地域もあれば、褌スナック、梵字バー、男の娘メイドバーなんていうのもある。その酒池肉林のディープさは、まさに禁断の果実。

もちろん、本関係の施設だって見逃せない。新宿区の楊場町には、SM・フェティシズム専門の雑誌・資料を蒐集している資料館があるほか、台東区鳥越には女装図書館などというものまであるというから驚く。

85の物語と108のキャラクターで綴る、都心でも郊外でもない、地方としての東京。東京スカイツリーの開業で沸き立つ東京右半分だが、本当に面白いのは、ガイドブックなどには載っていない、こんな場所なのだと思う。

本の値段はブルジョアジーだが、紹介されているお店での値段は、その面白さに比べれば決してブルジョアジーではないはず。損して得を取るべし。

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ノンフィクションはこれを読め!  2014 - HONZが選んだ100冊
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