世界地図のいろいろ『オン・ザ・マップ』

刀根 明日香2014年12月17日 印刷向け表示
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オン・ザ・マップ 地図と人類の物語 (ヒストリカル・スタディーズ)
作者:サイモン・ガーフィールド
出版社:太田出版
発売日:2014-11-29
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地図に思いを馳せるーー残念ながら私はそんなロマンチストではなく、地図も全く当てにできない方向音痴だ。しかし、宝の地図や、新大陸と聞けば、やはりワクワクせずにはいられない。古代の人々にとって、地図とはそのようなものであった。南北アメリカが初めて地図に登場した時代、アフリカ大陸の内陸部の状態が分からず空白だった時代、それぞれの時代を生きた人間が持つ世界観や野望が地図には克明に表れている。本書は、時代を遡り、地図にまつわるあらゆる物語を記した力作である。

アレクサンドリア大王の治世、アレクサンドリア図書館は「世界中の写本をすべて揃え、人類のこれまでの知識を結集させようという大望」を抱くほどの巨大図書館だった。そこで世界中から集まった地理情報を地図としてまとめあげたのが、紀元前149年、エラストテネスによる世界地図だ。彼は自分で緯線・経線を導入し、科学的原理にもとづく手法を用いて地球の円周を限りなく正確に導きだし、また同時に、世界最初の大旅行者、ストラボンによる地理書も作成された。

これら2冊を統合した大作が、古代ローマの地理学者、クラウディス・プトレマイオスによる『ゲオグラフィア』である。天文観測等のデータがあまり正確ではないという弱点もあるが、地図製作法(座標と投影法)を確固たるものにした。不確かな情報だけを頼りに、世界地図を完成させる。アレクサンドリア図書館の壮大さといにしえの賢人たちの想像力に感服せずにはいられない。

当時の人々の世界観は、地図上に描かれているもの、または描かれていないもので表現される。例えば、11世紀に描かれた地図には、ユニコーンや奇妙な“スキアポデス”(肥大した一本脚をかざして、太陽から身を守る男)、世界のてっぺんには“最後の審判”の様子など、科学を度外視して神話や哲学がびっしりつまっている。

もう1つの例として、アフリカも面白い。17世紀初頭に製作した、〈アフリカ新地図〉は、ゾウやライオン、ラクダがいる楽しそうなサファリが描かれ、情報もぎっしりと書き込まれている。しかし、一世紀後に描かれた地図はなんと空っぽで、多くの川や湖・町・山までもが空白になっている。なぜか?まるでこれから始まる、世にも残酷な列強の植民地化により、おとなしく色分けされるのを待っているかのようだ。地図は細かく見れば見るほど、奥が深い。

本書で紹介されている、ジョゼフ・コンラッドの小説『闇の奥』の語り手チャーリー・マーロウの台詞が印象的だ。

「おれは子どもの頃、地図がたいそう好きだった。」
「南アメリカ、アフリカ、オーストラリアの地図。どれだけ眺めていても飽きることなく、胸踊る探検の数々を空想したものだ。当時はまだ地上に空白地帯がたくさんあったが、特に気に入った場所があると(と言うより、たいていの場所がそうだったのだが)、そこを指で押さえ、大人になったらここへ行く、と独りで呟いていた。」

そう、当時はまだ「空白地帯」がたくさんあったため、冒険色が非常に強かった。ガイドブックがあふれる今日、「未知」なる世界はどれだけ残っているだろう。宇宙の地図は?脳や生命体の地図は?また、これからデジタルマップはどんな進化を遂げるのだろうか。地図は過去の偉大なる遺産であり、未来への限りなき可能性を秘めているもの。本書に収録されている、100点以上もの貴重な図版をお供に、地図の物語に没頭してしまおう。

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ノンフィクションはこれを読め!  2014 - HONZが選んだ100冊
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出版社:中央公論新社
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