ついに、ドラマ化!『ローマ法王に米を食べさせた男』

版元の編集者の皆様2015年06月22日 印刷向け表示
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7月19日からTBS系列で放映される日曜劇場『ナポレオンの村』の原案となった作品です。

高野誠鮮さん

かつてフランス皇帝ナポレオンは「余の辞書に不可能の文字はない」と豪語しましたが、本書の著者・石川県羽咋市の職員・高野誠鮮さんは、「可能性の無視は、最大の悪策」がモットーです。

平均年収たった87万円、夢も希望も若者もなく、さびれるばかりの限界集落を救うために次々に大胆な行動を起こして、わずか5年で過疎の農村を生き返らせました。そんな高野さんの超人的な活躍ぶりに、お隣の富山県出身の落語家・立川志の輔さんは、リスペクトをこめてこう称えました。

――スーパー公務員!

2002年のこと。ある出来事で上司の反感を買った高野さんは、異動で農林水産課に飛ばされます。腐ったそうです。そして傷心の思いで棚田が並ぶ山間部の神子原という村まで足を運んだときに、「農業は金にならない」「若者が減って村が消える」と嘆く老人たちを見て、愕然としました。

なんとかしなければ……高野さんは大きな衝動に突き動かされます。もちろん役所では限界集落対策をしてきたのですが成果はなかった。そこで高野さんは決意します。

――限界集落脱却の予算は60万円。自分を崖っぷちに追い込んで、知恵を絞り尽くそう!

神子原の棚田

それまでの役所の常識や仕事のやり方を一切無視し、村へ若者を呼び、農民の収入をあげるための行動へと次々に打って出るのです。

会議はしない……上司にはすべて事後報告……実行が伴わない、会議するのが目的のような会議は一切開かない。また、稟議書を回すと時間がかかるし、それまでなんの成果ももたらさなかった人たちに仕事の伺いを立てる必要は、まったくない!

村人が認めない人は移住させない……過疎の村では移住希望者を誰でも歓迎しますが、高野さんは頭を下げません。村人の面接をクリアした村人好みの人でないと住まわせないのです。なぜなら村の掃除や祭に参加しない自己チューな人は、村の秩序を乱すから。

酒の飲める女子大生を呼ぶ……閉鎖的な村に移住者を呼ぶためのデモンストレーションです。連夜の酒盛りで女子大生と仲良く話すうちに、若者が村にいると楽しいなと村人も明るさを取り戻し、新規移住者への受け入れ態勢も整ってきました。

酒の飲める女子大生が集落に活気をもたらす

人工衛星で田んぼをチェック。なんと無料で……神子原の特産物は米と決めた高野さんは、「他のJAに売り込むから、人工衛星のテストをしたい」と商社に直談判、まずは神子原の田んぼを調べてと無料で測定してもらいます。お金がないから知恵を絞りに絞るのです!

1のものを100にするブランド化の秘策……神子原の棚田で獲れるおいしい米をブランド化させるためには、超がつく有名人に食べてもらうのが一番。ならば日本の象徴・天皇陛下に食べていただこうとするも失敗。では、米の国と書くアメリカ(米国)大統領に食べてもらおうか? いや待て。神子原を英語で書くと、「the highlands where the son of God dwells.」になる。「サン・オブ・ゴッド」とは神の子、神の子といえばイエス・キリストだ。ならばカトリックの頂点、ローマ法王に召し上がっていただくしかしかない! この強引さ、しびれます(笑)。そしてなんとローマ法王への献上に成功、神子原米はブランド品になり、注文が殺到!

農家が値段をつける直営店をつくる……いくら良い大根をつくっても、よそでたくさん獲れたら値段が下がり農家の儲けも減ってしまう。そこでJAのシステムに反旗を翻し、農民が値段をつけるシステムの直営店をオープン。農家の年収を増やし、やり甲斐を生むことができました!

他にもエルメスの書道家に、神子原米と米袋に書いてもらったり、“奇跡のリンゴ”の木村秋則さんを巻き込んで、羽咋発で自然栽培を広めたり、サッチャーやゴルバチョフ、レーガンに羽咋のPRをお願いしたり、市に残る古文書を強引に解釈して羽咋をUFOの市にしたり、本物のロケットをNASAから格安で買って日本初の宇宙博物館をつくったり……

その行動力は目を見張るばかり。もちろん失敗もある。けれど成功するまでやめないから、結果、失敗はないのです。ここまでが2012年刊行のベストセラー『ローマ法王に米を食べさせた男』の話。

――しかし高野さんに新たな試練が。ここからが今回の新書版に書き加えられました!

日本初の宇宙博物館

なんと高野さん、定年まであと2年と迫った2014年に辞令を受けます。こんなに地域活性化に貢献したのに、「文化財室に異動だ。定年までの2年間で国宝を作ってくれ。君ならできるだろう」と、とんでもない無茶振りをされるのです。

しかし最悪な状況ほどスイッチが入るのが高野さんです。さっそく目をつけたのが妙成寺でした。それまでの寺の由縁書に蓋をして、学者を巻き込んで寺の歴史を謎とく一方で、新聞社には無料で記事を書いてもらう方法を編み出し、妙成寺発のニュースをヘビーローテーションで発信。国宝ブームを盛り上げていきます。

同時に仏教で大切なのは不殺生なので、虫を殺すための農薬をつかわないでできた自然栽培の食材こそ寺にふさわしいと、道の駅ならぬ「寺の駅」を開店。

寺の駅にて。高野さんと働く奥様方

さらに自然栽培こそ日本を救う唯一の道と確信して、「少子化の今こそ世界中から学生を集めましょう!」と、某大学の理事長を口説き、世界初の自然栽培学科の開設にこぎ着けます。

このように高野さんは、置かれた場所で大樹を育て、果実をたわわに実らせる人です。超強引なやり方もするけれど、私心がなく、利他の心で行動するから周りも動いていく。

うちには「売り」がないし、売り方や効果的なPR方法もわからないと嘆く企業、ショップや役所、企画力を身につけたいと切実に願うビジネスパーソン、そして生きがいがなく、働く意欲もわかないと悩む若者にも、わずか2コインでココロの活力が得られるおすすめの一冊です。

――ちなみにドラマで高野さん役は、唐沢寿明さんが演じます。こちらも楽しみですね!

灘家 薫(なだや・かおる) 講談社 
高野 誠鮮さんとの出会いは、チーフ・ディレクターを務めたパートワーク『世界百不思議』(2008~2009)のUFOの取材で、高野さんがプロデュースした宇宙博物館「コスモアイル羽咋」に訪れたとき。以来、車で何度も羽咋を往復し、羽咋が第2の故郷と思っている。 
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