『なぜ老いるのか、なぜ死ぬのか、進化論でわかる』私たちの生命には、老化と寿命の驚くべき秘密が隠されている

インターシフト2016年02月04日 印刷向け表示
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
なぜ老いるのか、なぜ死ぬのか、進化論でわかる
作者:ジョナサン・シルバータウン 翻訳:寺町朋子
出版社:インターシフト
発売日:2016-01-27
  • Amazon
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • 丸善&ジュンク堂
  • HonyzClub

 パラドックスだらけの生命

「なぜ私たちは老いて死ぬのか?」――本書はこの問いかけに進化論によって答える。そこから見えてくるのは、私たちの生―老い―死(寿命)が、矛盾、パラドックス、トレードオフに満ちあふれているという実態だ。

もともと老化や死は有性生殖に伴って登場し、多細胞生物において広まった。では、単細胞生物から複雑な多細胞生物へと進化したメリットは何なのか? 

多細胞生物のメリットのひとつは、損傷や感染して細胞にガタがきても新たな細胞で作り直せることだ。ただし、デメリットもある。細胞分裂の際のエラーが蓄積すると、ガンにかかってしまう。そして、ここに矛盾がひそんでいる。

より体が大きく(細胞が多く)、より寿命が長い生物ほど、ガンにかかるリスクは高くなるはずだ。しかし、そうではない。より長命の種のほうが、そして、より大型の種のほうがガンから守られているのである(ピトのパラドックス)。

セックス(生殖)と寿命は、トレードオフ

どうやら生存(寿命)と生殖(繁殖)は、トレードオフのかかわりのようだ。たとえば、卵巣のない突然変異体のショウジョウバエは、野生型よりかなり長生きする。大豆などの植物でさえ、花をすべて取り除いて去勢すると、何カ月も長く生きる。生殖細胞は化学信号によって遺伝子スイッチを切り換え、寿命の長さを制御しているらしい。

注目すべきは、同じ生物でも、成獣の死ぬリスクが変わると、生殖スタイルや老化の速さも変わってくることだ。たとえば、タスマニアデビルは、もともと生きているあいだずっと繁殖をしていた。ところが、重い感染症に多くが侵されるようになってしまうと、若いうちに1回だけセックスして死ぬという「生き急ぎ、若くして死ぬ(Live Fast, Die Young)」道を選ぶようになる。

一方、外的死亡率の低い環境なら、老化は遅くなる。たとえば、大型捕食者のいない島で暮らすオポッサムは、捕食リスクの高い本土の仲間たちと比べて、その老化速度はほぼ半分にすぎない。

こうした知見から、ヒトが長寿な種である理由のひとつも浮かび上がる。ヒトの祖先たちは、成体死亡率の低い樹上で暮らしていたーーそして樹上で生活する霊長類・哺乳類は、一般に寿命が長い。また、哺乳類では脳の大きな種ほど長生きする。

倍々の法則で、老化は進む

寿命についてもねじれた事実が浮かび上がる。本書は寿命について、まず「死亡倍加時間」と「初期死亡率(性的成熟時に測定)」に注目する(ゴンペルツの法則)。死亡倍加時間とは、老化の速度は大人になると指数関数的に倍々で増えていくということだ。その期間は、ヒト=約8年、イヌ=約3年、ラット=約4カ月。たとえ外見はまだ若々しくても、私たちの体には猛スピードでガタがたまっていくわけである(残念ながら)。

さて、ゴンペルツの法則をとおして、人間の寿命の延びは、初期死亡率の低下に起因し、老化が進んでいないためではないことがわかる。しかし、驚くべきことに超高齢になると、なんと老化は止まってしまう! こんなジョークがある……「よいニュースは、あなたの老化は止まったということで、悪いニュースは、いずれにせよあなたはもうすぐ死ぬということだ」

老化や死を克服できるか? 

人類はその大きな脳を駆使して、老化を止められるだろうか? 本書はカロリー制限や抗酸化物質の効果を検証する一方で、老化細胞を除去する実験にも注目する。生命の回数券といわれるテロメア(染色体の末端にあるDNA)を修復したり、そのほかいろいろな老化要因を治療すれば、不老不死も可能になるという科学者さえいる。

しかし、不死の未来を思いめぐらす前に、立ち止まって考えてみよう。そもそも老化や寿命は、なぜあるのか? 一見、わかりやすい答えは、衰えた個体を除き、新たな若々しい個体へと道を譲るためにある、というものだ。しかし、これでは「老いるのは老いのため」という堂々巡りになってしまう。問うべきは、「なぜ老化や死を生命進化(自然選択)は許すのか」ということなのだ。

この地球上には、私たちのように老いて死ぬのではない生命もたくさんいる。あなたの体内に棲む大腸菌も、次々と分裂増殖して自分のクローンを作っていくから、基本、「不死」だ。こうした単細胞生物は、生命発生の当初から今日まで延々と続き、繁栄している。
植物も、1万歳という木があるくらい、長生きできる。しかも、老木を調べたところ、若木と同様の成長力があることがわかった。つまり、歳取っても「老化」していないのだ。

地球上の生命とは、進化の、多様性の実験場のようなもの。この生命の道の途上で、老いと寿命と死がいかに進化とかかわり、許容されてきたのか? 本書の答えは「大いなる無常にして無情」とも言えるだろうか……それについては、ぜひ本書で確かめてほしい。

インターシフト はや創業30年になりますが、出版社としてはまだヒヨッコです。自分たちが面白いと思う本だけをコツコツと作り続けて、なんとかどうにかやってます。社内にはCD5000枚、社外には猫8匹……猫向けレストランもこっそり営業中。

記事へのコメント コメントする »

会員登録いただくと、記事へのコメントを投稿できます。
Twitter、Facebookにも同時に投稿できます。

※ 2014年3月26日以前にHONZ会員へご登録いただいた方も、パスワード登録などがお済みでない方は会員登録(再登録)をお願いします。

コメントの投稿

コメントの書き込みは、会員登録ログインをされてからご利用ください。

» ユーザー名を途中で変更された方へ
 変更後のユーザー名を反映させたい場合は、再度、ログインをお願いします。

ノンフィクションはこれを読め!  2014 - HONZが選んだ100冊
作者:
出版社:中央公論新社
発売日:2014-10-24
  • Amazon
  • Amazon Kindle
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • 丸善&ジュンク堂
  • HonyzClub

電子版も発売!『ノンフィクションはこれを読め! 2014』

HONZ会員登録はこちら