『民警』猪瀬直樹が活写した民間警備会社の光と闇

東 えりか2016年04月16日 印刷向け表示
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民警
作者:猪瀬 直樹
出版社:扶桑社
発売日:2016-03-09
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 日本の民間警備会社は、長嶋茂雄の「セコムしてますか?」でお馴染みになったセコム株式会社(創業当時は日本警備保障)と、オリンピックの金メダリストを起用したCMが印象的な綜合警備保障(ALSOK)が勢力をほぼ二分している。

だがその成り立ちは対照的だ。

セコムは1962年に飯田亮と戸田寿一という青年ふたりがベンチャー企業として興した会社である。水と安全はタダ、という日本の常識を破り、全く新しい警備会社を立ち上げるため、スウェーデンの警備会社からノウハウを学び、東京オリンピックの警備というビッグチャンスを掴む。

かたや綜合警備保障は、その東京オリンピックの組織委員会事務局次長、村田順が1965年に起業した。彼は初代の内閣調査室長でもあった政府の中枢にいた人物だ。東京オリンピックで民間の警備会社の必要性に気づき、政府や官僚の意見を聞きながら、をれを取りまとめて作り上げた。 

そこに追い風となったのが「ザ・ガードマン」というテレビドラマだ。警察の手が行き届かない「警備」という仕事を請け負うかっこい男たちを描き、大人気となったのだ。

初老の守衛が巡回するという警備員のイメージが、ここで一挙に覆る。経済の高度成長の波にも乗り、企業規模は拡大していく。だがそこには大きな落とし穴があった。

猪瀬直樹は民間の警備会社の嚆矢、シャーロック・ホームズにも登場する「ピンカートン探偵社」から始まる歴史を丹念に読み解いていく。

欧米と日本の事情の比較、二つの会社の性格の違いや問題点、警察や自衛隊ではできない警備の実態、そして最前線で働く警備員に取材を重ねていく。いまでは当たり前になっている通報システムが定着するまでのドラマは非常に興味深い。 

政治家から作家に戻り、猪瀬直樹の文章は活き活きしている。ノンフィクション作家の手腕は誰もが認めるところだ。今後の作品に注目したい。(週刊新潮 2016年4月14日号から転載)

 

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