ひと息で手に入る幸せ『サーチ・インサイド・ユアセルフ』

田中 大輔2016年05月19日 印刷向け表示
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サーチ・インサイド・ユアセルフ――仕事と人生を飛躍させるグーグルのマインドフルネス実践法
作者:チャディー・メン・タン 翻訳:柴田裕之
出版社:英治出版
発売日:2016-05-17
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この本は今年読んだビジネス書の中で、断トツにおもしろかった。まだ半年以上あるけれど、この本が2016年のベストビジネス書になるような予感さえしている。こんなにおもしろい本を読まないなんてもったいない!なによりこの本には読んだ人の人生を変える大きな力があると思うのだ。ザッポスのCEOトニー・シェイも「この本は人生を変える可能性をもち、幸福をもたらしてくれる」と、この本に賛辞を送っている。私自身もこの本を読んでから、心が穏やかになり、幸福でいられる時間が増えたと感じている。ぜひとも多くの人に読んでもらいたい。

この本はGoogleで開発されたマインドフルネス(心を整えるエクササイズ)に基づくEQ(情動的知能)育成プログラムについて書いた本である。そう言われても多くの人にはなんのことだか、さっぱりわからないと思う。そこで、まずはこの本を読むことで得られるという効能を本著から引用しよう。

意のままに心を鎮める方法を学べる。集中力と創造性が向上する。自分の心のプロセスや情動のプロセスを次第に明瞭に知覚できるようになる。自信は鍛錬を積んだ心のなかに自然に沸き起こるものであると気づく。自分の理想の未来を見いだしたり、成功に必要な楽観とレジリエンス(回復力)を育んだりすることを学ぶ。練習によって共感の力を意識的に高めることを発見する。社会的な技能は訓練によって十分身につけられることや、他人に愛してもらいやすくできることを学ぶ。

なんだかいいことずくめではないか。ただ少し胡散臭い感じもする。でもこの本をどういう人物がどういう経緯で書いたのかを知れば、そんなこともなくなるだろう。著者はGoogleのエンジニアで、107番目の社員だったチャディー・メン・タン。彼がGoogleに所属していたときに20%ルール(就業時間の20%を本業以外のプロジェクトに当てられるというルール)を使って、開発したのがこの『サーチ・インサイド・ユアセルフ』だ。

エンジニアが書いた本なので、上で引用したようなことがどうして可能なのか?ということも、科学的に検証している。人間の脳がポジティブなものより、ネガティブなものにより強く反応することなど、本の中に出てくる脳の仕組みについての話もとても興味深い。なにより「この本とプログラムはGoogleの文化の最高の部分を表している。」と、Google会長エリック・シュミットがお墨付きを与えているので、この本はまず間違いない。

実はこの本、4年前に『サーチ』というタイトルで、別の会社から出版されていた。書店員時代にこれは売れると思い、たくさん仕入れたのだが、いかんせん発売されるのがはやすぎた。装丁があまりぱっとしなかったこともあり、あまり売れなかった記憶がある。そして知らぬ間に絶版になっていたようだ。絶版になってからは、中古品がamazonでは高値で取引されていた。

サーチ・インサイド・ユアセルフ』はその本を改題、改訳して復刊させたものである。最近、雑誌で禅の特集をよく見かける。またマインドフルネスという言葉も、よく目にするようになった。やっと時代がこの本に追いついたのではないだろうか。本には旬があるとよく言うが、この本はまさにいまが旬だと思う。

私はこの本に出てくる2分間の瞑想というものを日々実践している。それにより日々心が満たされるようになった。この本を読むまでは、瞑想と聞くとスピリチュアルや宗教といったものが頭をかすめ、なんとなく怪しいという偏見を持っていた。しかしこの本を読んだことで、瞑想というのはたんなる心のトレーニングに過ぎないと知った。また瞑想というのはけっして難しいものではなく、とても簡単にできるものだということもわかったのだ。

では簡単にできる2分間の瞑想のやりかたを紹介しよう。2分間の瞑想には「やさしい手法」と「もっとやさしい手法」の2種類がある。まずは「やさしい手法」から。楽な姿勢で座り、自分の呼吸に意識を集中する。目はつぶっていてもいいし、開いていてもいい。他のものに意識がそれたら、また自分の呼吸に意識を戻す。これを2分間繰り返す。「もっとやさしい手法」は、さらに簡単だ。2分間なにをするでもなく、ただ座っているだけである。この程度の事なら誰でもできるだろう。

著者は本の中で"一日ひと息だけ、これから一生やること"と書いている。だから実際は2分もやらなくていい。お風呂でくつろいでいるときや、寝る前に寝そべりながらやってもかまわない。とにかく「ひと息」だけ呼吸に意識を集中させればいいのだ。それだけでも十分心が穏やかになり、幸せを感じることができるようになるはずだ。まずは騙されたと思って、ひと息の瞑想をやってみてほしい。それで心が穏やかになったら儲けものではないか。

この本には瞑想以外にも様々なマインドフルネスのエクササイズが載っている。マインドフルネスとはなんぞや?という話もでてくる。著者はマインドフルネスをただあるがままでいるときの心だと思うと表現している。また幸せはあるがままでいることで達成できるともいっている。

幸せというのは心が穏やかで明瞭なときに自発的に起きるものだそうだ。ということは、1日ひと息だけであなたは幸せになれるのだ。人生を豊かなものにする瞑想体験とマインドフルネスの力を、この本からぜひ感じとってほしい。

なお、この本は自分の働いている会社が出版した本である。それを抜きにして素晴らしい本だと思ったのでこうしてレビューを書かせてもらった。

EQ こころの知能指数 (講談社+α文庫)
作者:ダニエル・ゴールマン 翻訳:土屋 京子
出版社:講談社
発売日:1998-09-18
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 本著の序文を書いているダニエル・ゴールマンの著作。本著に出てくる推薦図書にも載っている。併読するのがオススメ。

言いにくいことをうまく伝える会話術
作者:ダグラス ストーン 翻訳:松本 剛史
出版社:草思社
発売日:1999-11
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 すでに絶版になっているようだが、巻末に出てくる推薦図書で、これだけは読んでほしいと著者が紹介している本。

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