『お墓の大問題』入るだけでも、こんなに大変!

篠原 かをり2016年10月02日 印刷向け表示
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お墓の大問題(小学館新書)
作者:吉川 美津子
出版社:小学館
発売日:2016-08-01
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墓。それは、21歳の私には想像もつかないほど遠く感じるテーマである。しかし、墓は限りなく現実的なテーマだ。

義務教育さえ終わってしまえば、進学や就職をしない人生だってある。この先、結婚できる保証などないし、子供が生まれるかもわからない。仮に結婚できたとして、離婚だってありうる。しかし、どんな人にも必ず平等に訪れるイベント、それが死なのだ。

自分の死だけではない。それよりずっと早く、親の死が訪れるだろう。死は意外と身近にあるのだ。

普段、身近な人と死について話すことは少ない。穢れとまでは言わないまでも、縁起が悪いから日常の話題の種として適さないと考え、いざその時が来るまでほぼ一切の知識を得ないまま過ごしてしまう。しかし、自分が死んだあと、どんな墓に入るのかすら知らないまま死を迎えるようでは、あまりにも心許ない。

本書は墓にまつわる様々な問題を網羅的に扱った本だ。疑問に思っていたことから全く盲点だったことまで、実際の例を交えてわかりやすく解説してくれている。墓の相場はいくら? 墓を継ぐって具体的に何をすればいいの? どんな墓を選べばいいの? 夫と同じ墓に入りたくないんだけど、どうすればいいの?

ペットと同じ墓に入りたいんだけど、できるの? などなど、読み進めるほどに疑問が湧いてくる。墓について何も考えてこなかったことを怖いとすら感じ、その無防備さを反省するだろう。

私はまず墓に種類があることを、本書を呼んで初めて知った。墓というものは全て寺の敷地内にあり、檀家としてお布施を払いながら、法要だのお彼岸だのといった供養をやってもらうものだとばかり思っていた。

大きく寺院が管理する「寺院墓地」、自治体や公益法人が運営する「公営墓地」、民間の業者が運営する「民間墓地」の三つに分けられるが、最近はその中でも様々な形態の墓地が増えている。例えば、NPO法人や老人ホームが共同墓地をもって合同の供養祭りを開くケースもある。子供が少なく、独居老人も多い現代社会のニーズに即しているといえるだろう。

それらの墓は種類ごとに、メリットとデメリットがそれぞれ存在する。

寺院墓地は比較的立地がよく、管理が行き届いているというメリットもある反面、お寺との付き合いを子供や孫まで代々託していく必要があり、寺院との相性や住職の人柄にも左右される。公営墓地は安定した管理と割安な永代使用料が魅力だが、倍率が高く、本書の中でとりあげられていた例では市営墓地の抽選倍率が54倍にもなっていた。

民間墓地は購入までのハードルは一番低いものの、立地が悪いことが多く、管理体制や運営などもばらつきがある。

しばしば墓を「買う」と表現するが、墓は家や車のようにそっくりそのまま購入できるわけではないことも知らなかった。お墓を買うと言った時に買うことができるのは墓石と墓所の永代使用権だけだそうだ。永代使用権とはその場所を永久に使用できる権利のことであるが、他のものを購入することと違うのはその権利が持続するのは墓を継ぐ承継者がいる時のみという点だ。

つまり、承継者がいなくなって無縁墓になってしまうと使用権利を失い、自分の墓ではなくなってしまう。墓を継ぐのは金銭的にも身体的にも負担が大きい。少子化が進み、一人っ子同士で結婚すると、墓の問題はさらに深刻化する。二つの墓を少人数の家族で守っていくのは困難だ。仮に継いだとしても、一人っ子同士の両親をもつ一人っ子の子供がさらに同じ境遇の相手と結婚したら、全ての墓を守っていくのはまず不可能ではないだろうか。気のおけない友人に任せようにも墓によっては3親等以内の承継を認めていなかったり、他人への譲渡を禁止していることも多い。

そして、おそらくこの本に目を留めた人が一番気になるのがお墓の相場だろう。

一から自分の墓をもつとしたら永代使用料と墓石や工事代、管理料で約200万円程度かかる。死んだあとなんて知ったこっちゃないからいっそどこかに遺灰を撒いてくれという気持ちになってしまうような値段だが、法律の問題でなかなかそうはいかない。

死んだら当たり前のように誰かがお墓に収めてくれるものだと漠然と考えていたが、墓に入るのがこんなに難しいことかと思わずため息をついてしまう。

こんなに重要なことを知らないで、よくものうのうと生きてこられたものだ。

お墓のことを知るのに適した年齢などない。10代の大学生でも80代のおばあちゃんでも、お墓について気になった時がまさにそのタイミングだ。本書ではお墓について一刻も早く知っておくべき知識が余すところなく載っている。十分に知っていると自信があると知っている人でも是非読んでみてほしい。予期せぬトラブルというものはどこにでもつきまとうし、今は墓石を通販で注文し、お坊さんをAmazonで頼めるような時代でもある。

「終わりよければ全てよし」という言葉があるが、人生の終わりをよしとするために本書を読んで、是非ともこれからのお墓について考えてみてほしい。 

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