『紀州のドン・ファン』美女4000人に30億円を貢いだ男

栗下 直也2017年01月30日 印刷向け表示
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紀州のドン・ファン 美女4000人に30億円を貢いだ男 (講談社+α文庫)
作者:野崎 幸助
出版社:講談社
発売日:2016-12-21

どんな目標でもいい、目標を持って本気でやれば年齢なんて関係ありませんし、いつかその目標は適うはずです

本書の結語である。ビジネス書では見慣れた台詞だ。夢を持て、できない理由を探すな、きっと適うのだから。その通りかも知れないが、本書の著者が十代から現代まで変わらず抱き続ける「目標」はシンプルだ。成功して、多くの女性と性交したい。

記憶に残っている方も多いかもしれない。2016年2月、50歳年下の愛人に6000万円相当の金品を盗まれたとして、著者はワイドショーの話題になった。週刊誌上でこれまで約4000人に30億円近い金を貢いだと告白。「紀州のドンファン」ならぬ「紀州の助平じじい」の存在は日本を震撼させた。

本書では、70数年の人生を振り返りつつ、いかに女性と夜をともにするために涙ぐましい努力をしてきたかを綴っているのだが、正直、参考にならない。いかに女性の気をひくのかからして、真似できそうで真似できそうもない。

名刺は特注品の少し厚いもので二重になっており、表側は普通に名前や住所が書かれていますが、裏側は紙を挟めるように切り込みが入れてあります。遼子さんに渡した名刺の裏の切り込みには、折りたたんだ1万円札を挟んでおいたのです

名刺を工夫するところまで、「おっ」と思わせながら、思いっきり、金で物を言わすのである。
定番の口説き文句も紹介しているが、これまた凄い。

ハッピー・オーラ、ハッピー・エレガント、ハッピー・ナイスボディ。あなたとデートしたい、エッチしたい

路上や電車内でこんな台詞を吐くのである。変態である。そして、この後に、あの名刺を渡して、「お付き合いしてくれたら40万円あげるよ」。交際なのか、買春なのか。いずれにせよ、全然、ドンファンじゃない。

とはいえ、破天荒な助平じじいと切り捨てるなかれ。買春だろうが、その源泉となる金をどう稼いできたのかは気になるところ。本書の半分以上は著者がいかに稼いできたかに触れられているが、そちらの方は読み応えがある。女性の口説き文句はぶっ飛んでいるが、巨万の富を築いたビジネスの戦略は論理的で堅実だ。

例えば、著者は戦後に稼業を鉄くず拾いからコンドームの訪問販売に乗り換えるのだが、業種が業種だけに闇雲に売ろうとしたところで売れない。玄関先で煙たがられるだけである。どのように販売先を選定したのか。

また、一財産築いた著者はその後に貸金業に乗り出すのだが、資本もそれほどなく、暴力団とのつきあいも決して持とうとしなかった中、なぜ成功できたのか。不良債権を抱えずに、与信コストをどのように下げられたのか。地元の和歌山で貸金事業があまりうまくいかずに、全く無縁の土地である東京に場を移し、霞ヶ関で集中的に勧誘のティッシュを配ったのはなぜか。

タイトルの印象と違い、事業についての記述が多い本書。ビジネスの失敗談も多く紹介されている。助平じじいには興味が無くても読んでみたら意外な発見がある一冊かも。

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