『PHOTO ARK 動物の箱舟 絶滅から動物を守る撮影プロジェクト』

新井 文月2017年09月16日 印刷向け表示
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PHOTO ARK 動物の箱舟 絶滅から動物を守る撮影プロジェクト
作者:ジョエル・サートレイ 翻訳:関谷 冬華
出版社:日経ナショナルジオグラフィック社
発売日:2017-08-12
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パンダ・トラ・ゾウ・ライオン・ゴリラ。

これらはふだん動物園で見ることができる動物だ。そのせいかあまり意識しないのだが、じつは国際自然保護連合(IUCN)が作成する絶滅のレッドリストカテゴリーにすべて該当してる。

カテゴリー「CR:近絶滅種」「EN:絶滅危惧種」「VU:危急種」に分類された動植物は、特に絶滅寸前種と考えられ、哺乳類1194種、鳥類1460種、爬虫類1090種、両生類2067種、魚類2359種、無脊椎動物4553種。つまり約1万3000種の動物がこの3つに分類され、絶滅の危機にある。(2017年1月時点)

ニシローランドゴリラ

著者であり写真家のジョエル・サートレイは、ナショナル ジオグラフィックと共に「PHOTO ARK(フォト・アーク)」プロジェクトを立ち上げた。これは世界中の動物園・保護施設で飼育されている約1万2000種の動物すべてを記録する活動だ。本書では、そこから絶滅寸前の400種に絞り掲載している。

プロジェクトの目的はひとつ。動物の姿を記録し発表することで、絶滅危機にある動物を知ってもらうためだ。「ARK(アーク)」とは箱舟の意味であり、さながら聖書に登場するノアの箱舟のように、地上のあらゆる動物を救おうという「写真の箱舟」がコンセプトなのである。

ビーズヤモリ
ヤモリの仲間はまぶたがないため、ときどき眼球をなめてきれいにする 
 
クチヒゲグエノンの一亜種 
親をなくしたこの2匹は野生動物救護活動家に保護された。仲がとてもよく、頻繁に体を寄せ合う

撮影方法は、白または黒の背景となる照明設備付のテントを用意し、そこに動物を連れてくるところから始まる。背景を黒または白に限定しているのは、画面に余計な要素を排除し、動物本来の表情を見てもらうための工夫だ。おかげで、どの被写体も生き生きと映っている。

テント内に入る動物は、小型動物であれば比較的撮影は容易になるが、身体が大きく臆病なシマウマやサイ、ゾウなどはそうもいかない。彼らの場合は後方に背景を設置し、自然光で撮影するのが良いそうだ。足元にシートを置こうとすると、とても臆病で逃げてしまうので何も設置しない。撮影後にフォトショップで床と背景を消していく。

地球上には約120万の動物が発見されているが、実はこの数は氷山の一角と考えられている。現在までに発見された動物の95%は無脊椎動物で、ほとんどが昆虫ということになる。魚類・両生類・爬虫類・鳥類・哺乳類は合計で6万種だが、地球上では主役のように思える脊椎動物も、実は動物全体のほんの一部にすぎないのだった。

シロヘリミドリツノカナブン

 

キリギリスの一種。
数千個に1個の確率で色とりどりのキリギリスが孵化する。野生では派手な色のためすぐに食べられてしまうが、研究所内では安全に生存できる

知らない動物には愛着が湧かないかもしれないが、本書の写真をただ眺めるだけで、美しいもの、力のあるもの、穏やかなもの、チャーミングなものなど魅入ってしまう。そして名称の隣に記載される表記(EN=絶滅危惧種)を見ると、この動物も今世紀かぎりの滅びる運命かもしれない現実を突きつけられる。

それでも生物の存在を知ることで、絶滅の危機から守れる可能性もある。著者はまず、問題を認識することが解決への第一歩だと語る。もし絶滅危惧種について何も知識がないとしたら、本書はその意識が広がるチャンスかもしれない。

アメリカシロヅル
一時は20羽を下回ったが、生息地の保護と人工繁殖により絶滅をまぬがれた

 

※画像提供:日経ナショナルジオグラフィック社

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