『すごい廃炉 福島第1原発・工事秘録<2011~17年>』一般メディアが語らない前代未聞の巨大な”現場”

2018年3月16日 印刷向け表示
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出版社:日経BP社
発売日:2018-02-16
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新国立競技場の建設が佳境に入った。2月からは屋根工事もはじまり、20基もの大型クレーンが同時に動き回る様子は壮観だ。敷地面積11万3000平米、総工費1500億円を超える巨大現場である。完成すると6万8000人の観客を飲み込むという。

いっぽう、福島県双葉町・大熊町ではそれをはるかに凌ぐ規模の工事が進んでいる。敷地面積は30倍の350万平米、総工費は50倍の8兆円。完了まで30〜40年かかると見積もられている福島第1原発廃炉工事だ。

新国立競技場を47都道府県それぞれに建設するような規模なのだが、その全貌が一般のメディアで語られることはない。あまりに専門的すぎるからだ。

本書は土木専門誌「日経コンストラクション」に不定期掲載されている巨大現場のレポートのまとめである。それゆえに、本文は土木関係者向きのお硬い内容になっている。

そもそも前代未聞の現場である。放射能に汚染されたガレキの撤去や無人搬送、膨大な汚染水対策や地下水を遮断するための凍土遮水壁など、最先端の土木技術を開発しながら、施工するありさまは土木関係者にとっては知っておくべきテクノロジーなのだ。

たとえば、ガレキ撤去では無人重機が使われているだけでなく、無人で給油するための装置も開発され、特許も出願したという。

その現場に入ったのは、日経コンストラクションの専門記者だけではない。写真家の篠山紀信も時代を写すために乗り込んだ。

専門記者たちの写真はあくまでもテクノロジーを語るためのものだ。建造物や重機が画面の真ん中に映り込む説明的な写真である。

しかし、篠山紀信のそれはドキュメンタリーである。曇天の広大な現場、危険な現場で働く男たち、奇妙で複雑な構造物、人が住むことを許されない帰還困難区域。視野は広く、観察眼は鋭い。時代を記録するために写真家を起用した編集部の慧眼が光る。

 ※週刊新潮転載

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作者:成毛 眞
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