『県都物語』新刊超速レビュー

峰尾 健一2018年03月21日 印刷向け表示
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県都物語 -- 47都心空間の近代をあるく
作者:西村 幸夫
出版社:有斐閣
発売日:2018-03-14
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これまで、多くの場合、日本の都市は無個性だと揶揄されてきた。大都市の駅前はどこも無性格で、金太郎飴のようにどこを見ても同じ、これといって特徴のない駅前ビルや似たような看板が続く……。

 

駅前、繁華街などのエリア単位、あるいは個別の建物やお店といった単位の個性ならば目につきやすい。一方でもっと大きなレベル、都市のデザインの個性となると、なんとなく歩くだけでは見えてこないもの。仕事で月に1、2回国内出張に出かけるが、オフィスの密集する中核都市のようなところほどかえって特徴が掴みづらく、一見すると新鮮さに欠ける感じがする。

 

しかし、建物単体だけではなく、まちのでき方から地形、都市の骨格となる幹線道路の構成などをじっくり見ていくと、それぞれの都市はかなり個性的で、類型化することすら難しいほどであると感じるようになってきた。

 

本書は都市計画の第一人者が、47の県庁所在地(東京都については東京駅周辺)の成り立ちを、実際に訪れた経験と豊富な資料をベースにたどり、各県都の個性を浮かび上がらせていく1冊だ。漠然と歩くだけではわからないが、どの都市の構造にも何らかの特色があり、そこに至るプロセスもまた多様である。

目次を読むだけで、それぞれの都市のイメージが膨らむ。【青森 - 拡張と反転のバランス都市】、【長野 - 境内から始まる漸進拡大都市】、【大津 - 重層する難読都市】、【鳥取 - 層状都市を貫くモダン軸】、【那覇 - 変転を繰り返すメタモルフォーシス都市】など気になる見出しがいくつもある。

仙台は城下町としていかに異形か。鹿児島の都市の軸線はなぜそれぞれ別の方向を向いているのか。徳島駅が徳島城にお尻を向けるように建てられている理由とは。挟まれる問いに引きつけられながら読み進めると、それぞれの県都の成り立ちが自然と頭に入ってくる。

過去の大きな開発の道筋や、その裏にあった行政と住民の折衝などのエッセンスが凝縮されていて、そのまちの都市開発におけるターニングポイントをおさらいできるだろう。古地図や現在の地図、地形図、現地の写真など多くの図と写真とともに、過去と現在を行き来するような目線が象徴的だ。

都市の「軸」や、「へそ」にも意識が向くようになる。何度か訪れたことのある高松も、商店街からなる歩行者の軸と戦後にできた幹線道路の自動車の軸が並行して走る「時代ごとに軸が付加された都市」、「常磐橋のあたりは高松のへそ」といった風に書かれると今までにない見え方がしてくる。ちなみに、上で挙げた大津が「難読都市」たる理由は、「へそ」が見出しにくいからなのだそうだ。

ひとつの県都に割かれているのは6〜8ページほどだが、その裏には豊富な参考文献の裏付けがある。県史や市史を中心に、ひとつの県都につき最低で10冊、多いところでは50冊を超える文献が控えている。密度は濃い。

そのわりに案外読みやすいのは、県都にフォーカスしていることが大きい。誰しも多かれ少なかれなじみがある、県都という切り口こそが本書の「へそ」だと思う。

お値段も一県都につきたった83円とお買い得。ぜひ、書店で見かけたら気になるところからパラパラめくってみてほしい。発売から1週間足らずなので、店頭でも目につきやすいだろう。

県外に行く機会が多い人には特にオススメだ。行く前や帰った後にさらっと眺めるだけでも楽しい。背景にある物語を知れば、行き慣れた都市も新鮮に映るはず。

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ノンフィクションはこれを読め!  2014 - HONZが選んだ100冊
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