『進化論の何が問題か』 新刊超速レビュー

村上 浩2012年06月05日 印刷向け表示
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進化論の何が問題か―ドーキンスとグールドの論争
作者:垂水 雄二
出版社:八坂書房
発売日:2012-05
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本書の主役は、『利己的な遺伝子』のリチャード・ドーキンスと『ワンダフル・ライフ』のスティーブン・J・グールド。言わずと知れたサイエンス界における大ベストセラー作家であり、研究者でもある2人は互いの著作を巡って激しく議論を闘わせていた。そのものズバリのタイトル、『ドーキンスVSグールド』という本も出版されている程に白熱した論争である。本書はこの2人の生い立ちからその理論、更には論争のポイントを振り返りながら、“進化論の進化”を辿る一冊となっている。

英国上位中流階級家庭に生まれたドーキンスとニューヨークのユダヤ系アメリカ人家庭に生まれたグールド。15歳までは非常に信心深く、寄宿舎学校では礼拝堂に忍び込んでまで祈りを捧げていたにも関わらず、『神は妄想である』という本を出すまでに至ったドーキンスと科学と宗教の(教導権が異なるゆえの)共存を訴えたグールド。生物そのものよりもその裏側にある普遍的な原理に興味を持ったドーキンスと八歳にしてコレクションしていた貝を<ふつう><少ない><珍しい>の三種類に分類するほど生物の多様性に魅せられたグールド。何から何までが対照的な二人である。

著者はドーキンスの本を多数翻訳しているため、自ら偏った立場にあると述べているが、本書で描かれるグールドもドーキンスに劣らず魅力的だ。何より、この2人は論争を楽しんでいたんだな、と感じることができる。進化という同じ領域を反対側から眺める両者は、互いに全力投球しあうことで磨き合っていたのだろう。優生学、宗教など進化論を軸とした論争の論点は実に多様であり、飽きることがない。

本書ではそれぞれの時代でターニングポイントとなった本や2人に影響を与えた進化論のキーとなる本、さらには進化論を築いた人々の伝記本が多数紹介されており誠に危険だ。その危険さは『なかのとおるの生命科学者の伝記を読む』を髣髴とさせる。何が危険かというと、HONZ読者の皆様はよくお分かりかもしれないが、ついついそれらの本をAmazonでポチりそうになるのだ。絶版本の多さがその厄介さに拍車を掛ける。本書を読み終わるのが先か、お小遣いが尽きるのが先か、在庫がゼロになるのが先か、実にはらはらさせられる。『動物行動学をきずいた人々』の到着が今から楽しみである。

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ノンフィクションはこれを読め!  2014 - HONZが選んだ100冊
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