『もしも月がなかったら』

成毛 眞2009年01月23日 印刷向け表示
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もしも月がなかったら―ありえたかもしれない地球への10の旅
作者:ニール・F. カミンズ
出版社:東京書籍
発売日:1999-07
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科学の入門書にして思考実験の教科書でもある、ロングセラー本だ。原書は1993年に書かれている。日本での翻訳本の出版は1999年だ。原書が書かれてからすでに15年以上にいなるのだが、陳腐化していない。

それもそのはずで「もしも月がなかったら」「もしブラックホールが地球を通り抜けたら」「もし可視光線以外の電磁波が見えたら」などのありえない地球の姿を仮定し、科学的に推定するのだから、この15年間にその分野で新しい知見が出てきていない限り、最新の科学読み物であるともいえるわけだ。

もしも月がなかったら、地球の自転速度は速くなり、1日は8時間になってしまう。

もしも月がもっと地球に近かったら、地震が頻発する。

もしも地球がもうすこし小さかったら、人間の背は伸び、胸板はもっと厚くなるであろう。

著者は精密な思考で10章にわたってこのような興味深い結論を導く。

もう少し具体的に紹介してみよう。もしも月がもっと地球に近かったら、引力は当然強くなり、干満の差がはげしくなる。内陸に流れ込む満ち潮が大きくなり、引き潮で無機物を大量に海に運ぶ。結果的に生命の建築材料が増え、初期の生命体の進化が加速し、そのおかげで酸素濃度は高くなり、さらに進化は加速する。この惑星では大きな潮汐と巨大地震の頻発するため、人類はすばやい反応をすることになると思考実験が続いていくのだ。

最後のもしもは「もしもオゾン層が破壊されたら」である。これだけは時代遅れの感がある。いまでは「もしも地球の平均気温が10度上がったら」であろうか。しかし、この思考実験の結論はすでにみんな知っている。答えは人類の破滅だ。

本書は思考実験を体験したい人にもお勧めの本だ。中高生レベルの科学知識があればすいすい読める本である。

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