『測って描く旅』新刊超速レビュー

村上 浩2012年10月23日 印刷向け表示
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測って描く旅
作者:浦 一也
出版社:彰国社
発売日:2012-10
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書名には、著者や編集者たちの色々な思いが込められているのだろう。その思いの丈は、ハッと驚くタイトル、ついつい手に取りたくなるタイトル、そして、二匹目どころか五匹目くらいのどじょうを狙ったタイトルが書店に溢れていることからもうかがい知れる。

本のタイトルは様々であるが、その最も大切な役割は、その本に何が書かれているかを伝えることではないか。「書籍の内容を伝える」という観点から見ると、本書のタイトルは必要にして十分。つまり、本書は著者の『測って描く旅』の成果をまとめた本なのである。これにてレビュー終了、としてもよいくらいだ。

インテリアプランナーである著者は、どこへ行くにも測って描く道具を欠かさない。行く先々の美術館、レストラン、ホテル、トイレ、とにかく測って描きまくる。旅先でのスケッチを趣味とする人は多いかもしれないが、メジャーやレーザーポインターで寸法を正確に計測している人は少ないだろう。そして、公共の場で迂闊に著者の真似をすると、変な人だと怪しまれるだろう。

先ずは書店でそのイラストを見て頂きたいところだが、『直す現場』や『工場は生きている―ものづくり探訪』のように細密に書き込まれたラインが好きな人なら、間違いなく好きになるはずだ。まじまじと見入ってしまう絵柄に正確に付け加えられた寸法のおかげで、頭の中でその情景をありありと再現させることができる。つい想像を膨らませすぎて、あっという間に時間が過ぎていくので注意が必要だ。

著者が測ることにこだわるのは、対象を正確に把握するため、そして、その対象に抱く感情の理由を分析するためである。背筋を伸ばしてくれる椅子、旅先での緊張感を和らげてくれるホテルのベッド、会話が弾むバーカウンター。その1つ1つに、ミリ単位での仕掛け、意図が存在する。身体とテーブルの間が3寸(9cm)を超えてはならず、多くの場合約2寸(6cm)となっているのには必然性があるのだ。

著者は、ホテルに着くと先ず部屋を測って描くことから始めるそうだ。その「測って描いて泊まる旅」の成果は、前著の『旅はゲストルーム』にもまとめられている。こちらは文庫版フルカラーで900円とお買い得だが、スケッチ付きで紹介されている高級ホテルに泊まってみたくなるので、結局は高い買い物とるかもしれない。私がホテル、もしくは旅行代理店のマーケティング担当者なら、直ぐに著者に宣伝用イラストを依頼するだろう。具体的に想像できる分、どうしても実物を体験してみたくなるのだ。

本書には、実践的な測り方や測ることの意味の解説もある。また、第5章「日本のヒューマンスケール」のように、日本の建築物を実測して得られた考察も楽しめる。140ページというコンパクトさだが、イラストも文章も最後まで飽きさせない。メジャーを頼りにこの世を見れば、あなたにも新たな発見があるかもしれない。

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ノンフィクションはこれを読め!  2014 - HONZが選んだ100冊
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出版社:中央公論新社
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