『地球白書2010-2011』

山本 尚毅2011年06月06日 印刷向け表示
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僕が入学した北海道大学農学部は一年時に英語を一単位でも落とせば、留年が決定するという理不尽な制度。もちろん、何人も毎年振り落とされていく。軽やかに「インディ・ジョーンズのテーマ」を歌いながら、「不可」を軽快に出すアメリカ人。レイチェル・カーソンの『沈黙の春』の原文がテキストだった厳しい女史の授業もあった。あまりにも、過酷だった。

沈黙の春 (新潮文庫)

「飢餓と飽食」を胸に大学に入学したものの、時代の流れもあって環境問題といわれるものに傾倒していく。農業環境政策学ゼミ(ルーツは新渡戸稲造先生であり古く由緒正しい)に所属し、レスター・ブラウンという偉大なる博士の著書に出会うことになる。

「飢餓」と「飽食」―食料問題の十二章 (講談社選書メチエ (20))

温室効果ガスである二酸化炭素の削減ばかりが前に出てくる日本であるが、放射能と同じで二酸化炭素も人間の目に見えず、可視化が難しい。放射能と違う点は、人類には地球環境の変化を通じて、間接的に(放射能は直接的に人の体に影響を与えるとしている)影響を与えることだ。しかし、本当に二酸化炭素の増加が地球の温暖化の原因となっているのかは未だに謎である。『正しく知る地球温暖化』はアラスカで北極圏の研究を行っていた科学者が書いた書物。著者の観点からすれば、地球温暖化の原因はIPCCが無視してきた小氷期が確かに存在したこととしており、この小氷期が1800年頃に終わった後から0.5℃/100年の温暖化が現在まで200年間持続していることを示している。地球温暖化という都合のよいプロパガンダに踊らされてはいけないと警笛を鳴らしている。

正しく知る地球温暖化―誤った地球温暖化論に惑わされないために

一方で映画にもなったアル・ゴアの『不都合な真実』に書かれていることはどこまで信じていいのだろうか?Amazonの書評を読む限りは賛否両論が飛び交っている。もうここまで来ると何を信じるかは各個人に委ねられているのかと思うくらい。北風と太陽で言うならば、北風であり、ゴアは北風をアメリカ国民及び世界中に吹きかけたことで、ノーベル賞をとった。北風では人々は本心からは動き出せない。(茂木さんの北風と太陽の連続tweetが素敵→こちら)本と合わせてこの動画も見るといいのでは→「アル・ゴア 『不都合な真実』にある35の科学的間違い」

不都合な真実

では、この場合の太陽はなんであろうか?そのヒントが『地球白書2010-2011』にあるかもしれない。地球白書はレスター・ブラウンが1984年に創刊した。

地球白書 2010-11

84年『地球白書』創刊のことばを引用する。

「未来は落胆させられるものであり、また希望のもてるものである。いまや、貧しい人々の生活を向上させるモメンタムが世界の各地で失われている。しかし、 私たちが直面している事態は、私たち自身がつくり出したことであり、私たちにコントロールできるはずである。これ以上の技術的進歩がなくても、全ての問題 は解決されるし、すべての人間の基本的要求は満たされうる。つまり問題は技術や資源ではなく、認識と政治的意志である。未来が輝かしく有望なものである か、暗く荒涼たるものであるかは私たちが環境からの訴えに応じて、政策とものごとの優先順位とを改めるのに、いかに素早く政治行動を起こせるかに掛かって いるのである。」

今年のテーマは「持続可能な文化」である。労働時間の短縮、メディアリテラシー、パーマカルチャー、ソーシャルマーケティングなど分野横断的に多岐にわたっている。本全体ではほぼ脈絡がないことが残念。ちなみに、白書とあるので、定量的なデータが中心化という印象を持たれるかもしれないが、むしろ定量データは少なく、世界で起こっているポジティブなソリューション事例集になっている。(もちろんネガティブな課題もある)

大量消費、地球温暖化について、東北大震災で一気に話題が吹き飛んでしまった印象があるが、永続的に幸せを考える上で必要となってくる知識であり、議論ではなかろうか。

ただ、地球白書は分厚すぎる、この手のことを知りたい方には『つながりを取り戻す時代へ』もお勧めである。

つながりを取りもどす時代へ―持続可能な社会をめざす環境思想 リサージェンス誌選集

ゼミの教科書だった。

レスター・ブラウン エコ・エコノミー

これもよく引用される一冊。

成長の限界―ローマ・クラブ人類の危機レポート

P.S.個人的に環境で自分ごとなことは愛すべきパウダースノーが30年後も失われないよう、良質な雪が降り続けてくれること、潜って驚きや感動がある海を見ることができること、できれば、後世にも受け継がれていくこと。しかし、自分自身の普段の行動と地球全体の環境問題の間を取り持つ想像力はいつも枯渇しているのが、現状だ。

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