『ノモレ』アマゾンの先住民を描いたノンフィクション文学の金字塔

成毛 眞2018年07月21日 印刷向け表示
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ノモレ
作者:国分 拓
出版社:新潮社
発売日:2018-06-22
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 一昨年夏に放送されたNHKスペシャル「大アマゾン 最後のイゾラド」の姉妹作品である。イゾラドとは、文明社会と接触したことのないアマゾン先住民。狩猟と採取だけで太古から生きてきた自給生活者であり、その姿はまさに裸族だ。現在でも少人数のグループに別れて暮らしているという。

数年前のある日、ペルーの奥地で突然イゾラドが出現し、村々が襲われ、弓矢で村人が殺傷された。驚いたペルー政府は犯人と目されたイゾラドと接触することを決断した。

NHKの取材班はその模様を克明に記録した。イゾラドの弓は非常に強力であり、弓や槍には毒も塗られている。まさに命がけの取材だ。目の前に立つイゾラドの剣幕に怯え、友達を意味する言葉「ノモレ」を連呼するしかないカメラマンの声は震えているようだった。

番組は文化人類学的に貴重な映像記録という側面を持っていた。イゾラドが文明化すると、太古からの人類の記憶のひとつが消え去ってしまう。それゆえに第三者である取材者が語るという形式になっていた。しかし、実際の接触責任者は現地で村長をつとめるロメウという男で、彼の祖先もまたイゾラドだったのだ。

本書は番組とは立ち位置を変え、ロメウとその祖先と、今を生きるイゾラドの物語を書き綴った秀逸なノンフィクション文学だ。

アマゾン源流の川の流れと、太古からの時間の流れ。広大なアマゾンの森林と、小さな人間同士の繋がり。隠喩と対比の絶妙な組み合わせが心地よい。ところどころに挟み込まれる散文詩も美しい。テーマこそ非日常なのだが、どこか懐かしいような気持ちにさせる不思議な作品に仕上がっているのは著者の力量なのだろう。

NHKのディレクターが受信料で取材に行き、それを個人名で本にすることに反感を持つ人もいるだろう。しかし、われわれ国民が世界的な映像記録を残し、作家を育ててやっていると思えば、高くはないはずだ。

※週刊新潮より転載

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