先月出た本 2023年7月

2023年8月6日 印刷向け表示
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暑い暑い7月が終わりました。海外旅行に行く人も多くなる一方で、国内はとにかく外国人観光客で大盛り上がり。世界が近くなったのを改めて感じています。

そんな時に読みたくなるのが旅行記でしょう。辺境作家として大人気の高野秀行さんの新作『イラク水滸伝』が発売と同時に注目を集めています。イラクにある謎の巨大湿地帯〈アフワール〉に挑む旅模様。この夏、旅行に行く人も行かない人も楽しめること間違いなしでしょう。

作者:高野 秀行
出版社:文藝春秋
発売日:2023/7/26
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その他、7月新刊から気になるいくつかを紹介していきます。

作者:アルテュール・ブラント
出版社:筑摩書房
発売日:2023/7/28
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美術品をめぐる事件と、それを追うノンフィクションというのにはなぜかいつもそそられます。単なる盗難だけではなく、贋作があったり、歴史があったり。そんな気持ちをくすぐる新刊が出ていました。この著者、アルテュール・ブラントは美術界のインディージョーンズと呼ばれている人物だそうです。ベルリンの壁崩壊とともに、姿をくらましていたヒトラーが作らせた馬の像が見つかった、というのは当時ニュースにもなっています。そんな事件の裏側に迫ったノンフィクション。

作者:キース・トムスン
出版社:東京創元社
発売日:2023/7/28
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こちらもこの時期にぴったり(?)の1冊。海賊が残した日誌をもとに、海賊たちのリアルな生活をありのままに描いています。

数々の冒険モノ、映画やアニメなどに描かれる海賊像がありますが、リアルな海賊たちは数ヶ月も身体を洗えず、水も食料もジワジワ減っていき…と恐怖と隣り合わせの生活を送っていたようです。どのように戦い、どのように生活をしたのかリアルな姿が描かれます。

作者:ニール・ブラッドベリー
出版社:青土社
発売日:2023/7/26
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毒殺なんて、歴史上の話かなと思っていましたが、近代でも大活躍しているようですね。この本では「毒がどうやって人体を蝕むのか」という点に注目して、細胞や人体レベルで毒を探求しています。

取りあげられているのは実際の毒殺事件に用いられたという11種類の毒。ストリキニーネやトリカブト、シアン化合物といったミステリ読者にはお馴染みの毒が語られている一方で、インスリンやカリウムといった身近な名前も。化学好きだけでなく、犯罪ノンフィクションもの好きにもオススメ。

作者:クリストファー・ブラットマン
出版社:草思社
発売日:2023/7/7
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著者は「戦争の原因は5つしかない」と書いています。

なぜ暴力はなくならないのか、なぜ戦争はなくならないのか、多くの人々が長年研究をしてきたことによると「人々はめったに戦わない」のだそうです。敵対する集団はあまたあるものの、多くの敵同士は交渉や取引でその解決をしています。なぜなら戦争はあまりにコストがかかりすぎるから。それでも暴力という手段に出てしまう5つの原因がはっきりしているのであれば、その対処をしていくことが平和に繋がるのでは…?戦争があるということから目をそらさず、平和への道を探る1冊。

作者:ダン・イーガン
出版社:原書房
発売日:2023/7/19
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半導体が不足し、石油が不足し…と、資源不足にまつわる話題が事欠きません。リンの世界的な枯渇もその一つ。農業をするために絶対必要な資源、リンの不足が大きな問題になっています。土壌からリンが失われた土地では農作物が出来なくなっているというニュースも報じられるようになってきました。リンは枯渇の一方、水への流出によって水質汚染も引き起こします。そして、数少なくなってきたリンをめぐる争奪戦も起き始めているのだとか。気候温暖化による食糧不足が懸念されていますが、この問題はさらに深刻のようです。リンを循環させ枯渇させないようにする世界の取組とは!?

*

毎日「暑い暑い」とバテ気味ですが、こうやってノンフィクションの新刊をおさらいすると、「世界は確実に動いているな」ということを感じずにはいられません。どちらに向かって動いているのか、成り行きで行ってはいけない方向がどこなのか、そういったことを教えてもらえるのもノンフィクション本の良さなのかもしれませんね。

決定版-HONZが選んだノンフィクション (単行本)
作者:成毛 眞
出版社:中央公論新社
発売日:2021-07-07
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『決定版-HONZが選んだノンフィクション』発売されました!