『47都道府県・地質景観/ジオサイト百科』日本列島は美しい地質景観の宝庫だ!

2024年2月23日 印刷向け表示
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作者: 鎌田 浩毅
出版社: 丸善出版
発売日: 2024/1/31
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いま日本で「地学」がブームになっている。日本列島の地質は世界的に見てもユニークなものが多い。プレート境界で火山が集中し地震も活発な島々には、多様な要因による珍しい地形が集まっている。

本書は全国各地に点在している美しい地質景観/ジオサイトを、47都道府県別に紹介した地学解説書である。加えて関心の高い地震・火山についても理解できる要素を数多く盛り込んだ。

地質景観の観察は地球研究にも直結するため、教育的にも学術的にも大きな意義がある。書名「地質景観/ジオサイト」のジオサイトとは、「ジオパーク」にあるさまざまな興味深いエリア・スポットを指す。

2000年代から「ジオパーク」という地球を学ぶ取り組みが世界各地で広がった。地質に関連する自然現象のみならず、大地を利用して人が営んできた産業に関わるものも含まれる。

筆者の私は京都大学に着任前、通産省地質調査所(現在の産業技術総合研究所)に18年間勤務していた。そのうち15年間は熊本・大分県周辺の火山地域をくまなく歩きながら地質調査を行い、5万分の一「宮原(みやのはる)地域」の地質図を完成した(1997年に通産省から刊行)。

そもそも私が地学に惹かれたのは、25歳の駆け出し研究者のころ、地球の美しさに心底感動したからである。広々とした九州の火山で、風を感じ土の匂いを嗅ぎ、大地の息吹を直接肌で受けとめながら山をひたすら歩いていた。

五感のすべてを駆使しながら地球の成り立ちに考えをめぐらすことには、何にも代えがたい心地よさがある。熊本県の阿蘇火山に出会って「地学を一生続けていきたい!」と思った瞬間である(鎌田浩毅著『火山はすごい』PHP文庫を参照)。もしその頃に本書「47都道府県・地質景観百科」があったら、私は貪るように読んでいたと思う。

もう一つ、本書を皆さんにお勧めしなければならない理由がある。最近の日本列島では地震や噴火が頻発しているが、これは2011年に起きた東日本大震災と関係がある。

マグニチュード9という巨大地震によって日本列島の地盤は不安定となってしまった。近年よく起きる地震はこの時に地盤へ加えられた歪みを解消しようとして発生している(鎌田浩毅著『やりなおし高校地学』ちくま新書を参照)。おそらく今後数10年にわたって地震と噴火は止むことがないだろう。

こうした中で日本列島に関する地質景観の知識は、単に好奇心を満たすだけではなく、災害から自分の身を守る際にもたいへん役立つ。その意味からも一人でも多くの日本人に地質そのものに関心を持っていただきたいと願っている。

本書は基礎情報を懇切丁寧に解説する第1部と、各論編として都道府県別に具体例を挙げて解説する第2部から成る。各地域に興味をもつ読者が観光情報として用いるのみならず、小中高校の自由研究や郷土学習にも活用していただきたい。

特に第2部は都道府県別にユニークな情報を掲載したので、まず自分が住んでいる都道府県からチェックしていただきたい。

地学には人類が3000年もかけて築き上げてきた「教養」と「実学」の両方が詰まっている。「大地変動の時代」に突入した日本で、こよなく美しい自然に囲まれた日本で、地学のおもしろさにぜひ開眼してほしい。そのきっかけとして本書がお役に立てれば幸いである。

作者: 鎌田 浩毅
出版社: PHP研究所
発売日: 2015/7/1
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作者: 鎌田 浩毅
出版社: 筑摩書房
発売日: 2019/9/6
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決定版-HONZが選んだノンフィクション (単行本)
作者:成毛 眞
出版社:中央公論新社
発売日:2021-07-07
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