『大名行列を解剖する』

成毛 眞2009年12月05日 印刷向け表示
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大名行列を解剖する―江戸の人材派遣 (歴史文化ライブラリー)
作者:根岸 茂夫
出版社:吉川弘文館
発売日:2009-10
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読みながら「ふーん」「へーっ」「はぁー」「ほーっ」と感嘆詞が止まらない。帯には「大名行列はなぜ長い? 派遣・アルバイト・格差社会・・・」などとあるから、面白江戸読み物だと思うとさにあらずだ。

著者の主要著書は『近世武家社会の形成と構造』などであるから、けっして歴史読み物作家ではなく、立派な史学の先生なのだ。「あとがき」でも大名行列に注目している理由として「近世武家社会の構造そのものが行列であり、多様な特徴が集約されており、その変質の中に近世社会のさまざまな動向が特徴的に見られる」と書かれている。

とはいえ、たとえば御三家の紀州徳川家。行列は280人という壮大なものだった。そのうち藩主に拝謁できるのはわずか35人だ。「へーっ」。大名行列で「下にーぃ、下にーぃ」というのは御三家と御三卿だけ。「ほーっ」。280人のうち多ければ200人以上、少なくとも60%の160人はじつは派遣だったという。「はぁー」。という具合だ。

「人宿」という人材派遣業があり、そこから徒(かち)、若党、陸尺(ろくしゃく)、中間などの武家奉公人が文字通り派遣されていたという。大名行列で、徒は二本差しであり、黒の羽織袴を着ている。若党も二本差しで羽織だ。つまり、立派な侍だとしか思われない人たちがじつは派遣だったのだというのだ。もちろん、同じ徒であっても、国元のそれは代々の家来であろう。

行列の多数は江戸において都市下層民であり、出替わり奉公人として雇われた。当然、主従関係は崩壊しはじめる。彼らの行動はガサツそのものだ。170-180人も集まって歌舞伎の市村座に討ちいるは、元の主人を襲うは、乗物の主人を捨てるは、もう大変である。

そして最後には派遣業の人宿や部屋頭も役人と癒着しはじめるのだ。江戸時代のもろもろを現代のそれに当てはめて、日本はぜんぜん変わってないなぁ、などと嘆くことに意味があるとは思われない。ボクはそのように江戸ものを読むことはない。

しかし、いつもここだけは江戸時代のようだと思うのは司法だ。まずは特捜検察によるガサ入れである。ザッ、ザッ、ザッと段ボールを抱え、2列に並んでキッと前を向いて乗り込む姿は、御用提灯にねじり鉢巻で捕り物に向かう行列を思い出す。もっとも江戸なのは裁判所だ。裁判前の法廷映像はお白州そのものだ。きっと前を向きポーズを決めるお代官。町奉行所は検察と裁判所を兼ねていた。現代でも刑事では裁判所は検察の下部機関のようでもある。

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