先日、ある私的な席でご迷惑をかけた知人にお詫びをしようと酒席を設けた。
もちろん、支払いはこちらが持つ前提だが、待ち合わせの前から日本酒をがばがば呑んでいたら、ぐでんぐでんになってしまい、記憶が無くなり、気づいたら家の寝室の天井を眺めている自分がいた。翌日知ったが、おごるどころかお金を一切払わず仕舞い。「おわびします」と呼び出しておきながら、おごらせる。鶯谷のSMクラブでも経験できないドSなプレイを謝罪代わりに提供。我ながら正気とは思えない。
頭にちらついたのが「禁酒」の二文字であるが、「お酒やめますか、人間やめますか」だと人間やめますと答えかねない私。悩みに悩んでいた頃に出会ったのがhonzに献本で届いていたこの本だ。「はじめに」を読むとこの本が大好きになる。
お酒を無理にやめる必要はありません。お酒の量を減らせばよいのです。-中略-大切なのは、あなたに芽ばえた「お酒を減らしたい」という気持ちを育てることなのです。
実践まで踏み切るかどうかは別にして、酒飲みとしては、「やめる必要はありません」の一語だけで読みたくなる。内容は普段の飲み方やお酒と健康との関係性を認識した上で、4週間の厳守にチャレンジするノート形式の内容だが、「ほーっ」と関心したのは酒量を数える際のドリンク制の提案だ。毎年思うのだが、健康診断で「お酒をどの程度、飲みますか」と問診票でたずねられても困る。何合やら、ビールにして何杯やら聞かれても計算が弱いのでわからない。ドリンク制はアルコール度数と容量で計算する形だが、例えば、ビール一杯は中ジョッキで1・4ドリンク、ワインはグラス1杯、1・2ドリンク、チューハイジョッキで2ドリンクなどが一般的。計算式も載っているが、計算しなくても一覧表が載っているので一目で自分のヤバサがわかる。
生活習慣病のリスクが高まるのは男性で1日4ドリンク以上、女性で2ドリンク以上。強くは無いがピッチが速い私にあてはめると7時に宴会が始まったら7時30分には確実にオーバーしかねない。この時点で「ヤバイ、ヤバイ」と感じるのだが、追い討ちをかけるのが、その後に続く、お酒の飲み方3分間チェックテストである。質問に対して回答を選び、合計点数で減酒が必要かを把握できるようになっている。
回答の選択肢は
0、ない 1、月に1度未満 2、月に1度 3、週に1度 4、毎日あるいはほとんど毎日
という形式だ。一方、設問はこんな感じだ。
過去1年間に飲み始めるとやめられなかったことが、どのくらいの頻度でありましたか?
間違いなく私のアンサーは「4、毎日あるいはほとんど毎日」である。
過去1年間にお酒を飲んだ後に罪悪感や自責の念にかられたことが、どのくらいの頻度でありましたか?
間違いなく私のアンサーは「4、毎日あるいはほとんど毎日」である。
もう、設問を読まずに4である。悲しくなってくる。四択と見せかけて、答えをひとつしか選べない。
唯一、「0、ない」を選んだ設問があった。
肉親や親戚、友人、医師、あるいはほかの健康管理にたずさわる人が、あなたの飲酒について心配したり、飲酒量を減らすように勧めたりしたことがありますか?
心配されるほど飲んでいないということかもしれないが、これでは友達いない人ではないか。いないけど。
私の診断結果は、「禁酒、減酒に取り組みましょう。このテストだけで確定的なことは言えませんがアルコールの専門的治療が必要な可能性もあります」。ま、まじか。そもそも、この原稿を外で飲んできたあとに、「氷結」飲みながら書いている時点で診断結果に何にもいえねー北島康介状態ですが。どうなるんだろう、私。
ただ、取り組むかどうかは別にして、お酒との接し方の今の状況を「見える化」してくれる本書の意義は大きい。私の場合は、「友達がいない酒好き。酒を飲まなきゃ原稿も書けない。要減酒」と言ったところか。淋しい。淋しすぎる。「友達がいない酒好き。酒を飲まなきゃ原稿も書けない。要減酒。」二回書いても淋しさはまぎれない。
少しばかりまじめなことを書くと、本書は2013年4月に「メタボ健診」に導入された減酒支援にも対応した内容。酒好きは忘年会ラッシュで記憶をぶっとばす前に、隙間時間にでも書店で本書を手にとって3分間チェックテストだけでも取り組んでみて欲しい。HONZメンバーでは刀根明日香は必読か。HONZメンバーでは刀根明日香は必読か。二度書いてあるのは誤植ではない。結果のひどさに、その後、やけ酒しても責任はとれないけれども。