青木薫のサイエンス通信
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『アルツハイマー征服』圧倒的な取材力と筆力で読ませるサイエンス・ノンフィクション!
2021年01月10日本書には、日米欧の多彩な登場人物が、丹念な取材にもとづいて生き生きと描き出されています。下山さんの念頭には、欧米の一流ライターが到達している高みがあったのではないでしょうか。ギャップに架かったこの橋を、今後、日本の新世代ライターが続々と渡って……more
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『サーストン万華鏡』を読む ウィリアム・サーストンの世界
2020年12月03日ここにご紹介する『サーストン万華鏡 人と数学の未来を見つめて』は、サーストンの数学観や、数学と社会との関わりについての彼の考えに迫ることを目指して、八人の日本人筆者が、それぞれ異なる角度から多次元的にアプローチする、たいへんユニークな本です。……more
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サミュエル・バトラー『エレホン』を読む 反ダイバーシティと反シンギュラリティの世界
バトラーの『エレホン』は、SFのはしりとも言われるらしいのですが、奇妙な力で現代人の心に波を立て、脳みそに負荷をかける、特異な作品だと思いました。そこでこの作品の不思議さについて、私なりに少し書いてみたいと思います。…more
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『「役に立たない」科学が役に立つ』
2020年08月04日この日本語版の表紙は、とても美しいです。この本を手に取ったとき、わたしはまず、この表紙の絵に引き込まれました。ノアの箱舟であることはわかります。でもなぜ、ノアの箱舟なのだろう? そこからわたしの頭の中でいろいろな想像が駆け巡りました。…more
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『タングステンおじさん』化学にのめり込んだ、少年時代のオリバー・サックス
2016年09月01日母方のおじである「タングステンおじさん」の手ほどきを得て、オリバーは化学の世界に踏み込みます。やりはじめたらとことんやる、やりすぎるほどやるオリバー・サックスの性格は、すでに少年時代から誰の目にも明らかだったようで、金属の光沢や重さ、ときに示……more
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『ネアンデルタール人は私たちと交配した』鏡に映ったもう一つの私たち
2015年07月04日スヴァンテ・ペーボって誰? と思っている、そこのあなた(わたしもだったけど(^_^;))、この名前は覚えておいて損はなさそうだ。彼は、世界各地の自然史博物館を、最先端の分子生物学データバンクに変えた科学者である。そして「われわれは何者なのか?……more
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エイズ治療研究の最前線--『完治』への道
2015年03月26日「青木薫のサイエンス通信」番外編の更新です。今回取り上げたのは、仲野徹とのクロスレビューになる『完治 - HIVに勝利した二人のベルリン患者の物語』。なぜHIVを克服するのが難しいのか?そこを深く理解することで、患者を「完治」へと導いた主治医……more
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『捏造の科学者 STAP細胞事件』知ることからしか始まらない!
2015年01月24日「青木薫のサイエンス通信」久々の番外編です。今回取り上げたのは、毎日新聞の科学記者・須田桃子さんによる『捏造の科学者 STAP細胞事件』。論文に欠陥が発覚した後、一部の科学者たちの反応に、青木さんは違和感を感じたという。科学史にも残るであろう……more
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『エピジェネティクス』を理解するために パート3
2014年08月30日で、本の中身です。もちろんエピジェネティクスについて書かれているわけですが、私はあえて、これを細胞ワールドへの手引書ととらえたいですね。はっきり言いますが、細胞は、現代生命科学の重要なキーワードだと思うんです。 「え? 細胞って、あの、玉ねぎ……more
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『エピジェネティクス』を理解するために パート2
2014年08月29日私が仲野さんの『エピジェネティクス』を読み始めてすぐにわかったのは、仲野さんという人は、巨人の肩の上に立って、立ちションをするような人ではないのだな、ということでした。 「巨人の肩」の話は、みなさんご存知のことと思います。アイザック・ニュー……more
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『エピジェネティクス』を理解するために パート1
2014年08月28日仲野徹さんが、岩波新書の一冊として『エピジェネティクス』という本を出されたので、その紹介をしてみたいと思います。とはいえ、「この本にはこんなことが書いてあります」という話をするのではなく、むしろ同じ分野の本を何冊かまとめてご紹介しながら、何か……more
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「上書き保存」で、記憶を編集する
2014年07月03日「パーシャル・リコール」では、記憶の一部 --もう少し具体的に言えば、トラウマなるような強い恐怖など-- を消去できるかもしれない、という話なのです。こう言われると、「えっ! 記憶を操作するなんて、そんなことやっていいの?」、「記憶って、個人……more
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完全食品ソイレントが突きつけるもの
2014年06月03日完全食品「ソイレント」を通して、「食」の現在が見えてきます。気候変動、人口爆発、貧困のなかの肥満……。豊かな文化に彩られた食を楽しみたいのは誰しも同じ。でも、目をつぶってはいられない問題も山積しているのです。…more
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新説!ストーンヘンジ――ランドスケープ考古学
2014年05月03日数々の憶測に彩られてきたストーンヘンジ。21世紀になって、ランドスケープ考古学という新しいアプローチで、大きな成果が得られているようです。…more
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ITERとバベルの塔
2014年04月03日ソ連の科学者サハロフが1950年代にトカマク型の核融合炉を考えたときには、10年かそこらで実現するだろうと思っていたそうです。しかし21世紀の今、ITERを先頭に立って引っ張っている人は、生きているうちにその完成を見ることはないのかもしれませ……more