『夢の猫本屋ができるまで』8/24トークイベント@本屋B&B 

東 えりか2018年09月08日 印刷向け表示
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夢の猫本屋ができるまで Cat's Meow Books
作者:井上 理津子
出版社:ホーム社
発売日:2018-07-26
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2018年8月24日、台風20号の進路次第では中止も検討されたが、幸いにも通り過ぎて『夢の猫本屋ができるまで』のトークショウ@本屋B&B(下北沢)が無事開催された。登壇したのは、夢の猫本屋「キャッツミャウブックス」」店主・安村正也さん、本書の著者でノンフィクション作家の井上理津子さん、司会として私、HONZの東えりかの3人。

金曜日の夜8時という遅い時間の開催だが、50人を越えるお客さまにお集まりいただき、いよいよ開始。すでに3人とも前室でビールを飲んでいい気持ち。舞台の上でも安村さんは飲み続けている。会場の皆さんの手にもビールが目立つ。これは気楽にできそうだ。

キャッツミャウブックスに既に行ったことがある人は10人を越えていた。井上さんの著作を読んだことがある人も大体同じくらい。このイベント自体に興味を持ってきてくださった人が多いようだ。

私が司会をすることになったのは、井上理津子さんの著作のファンだったということがひとつある。文楽好きで大阪通いが始まったとき、ガイドブックとして頼りにしたのは『大阪名物』というガイドブックだった。(HONZのレビューはこちら)その後『さいごの色街、飛田』で人気を博したのはご存知の方も多いだろう。

安村さんとは4年前に社会人ビブリオバトルで、私がゲストとして呼ばれたときにお会いした。安村さんは伝説のチャンプとよばれる前年の社会人王者だった。その時紹介した本が『バイブレーターの文化史』。医療用から始まったこの器具の変遷を語っていた。

キャッツミャウブックスのことは取材中の井上さんからの連絡で、店主が安村さんと聞きおおいに驚いたのだ。そこでこのイベントの司会を買って出ることにした。本を読んでからキャッツミャウブックスを訪問したとき、平日の開店直後であるのにお客さんが数人いらしたことに驚いた。年配の女性が数人、猫を眺めながら本を見ている姿は平和そのものだった。(レビューはこちら

井上さんは、最初、仕事としてこの本の構成に携わったそうだ。それまでに『名物「本屋さん」をゆく』『すごい古書店 変な図書館』など、本のまわりの取材を重ねていた井上さんだが、最初は猫本屋のコンセプトがちょっと心配だったという。どんなお客さんが来るのか、一回来た人がリピーターとなるのかと思っていたが、1年経ってそれが杞憂だったことが嬉しいと笑っている。

安村さんがこの店をやろうとしたきっかけは本書に詳しいが、一番困ったのは、店の場所だったそうだ。どこかの貸店舗を想定していたのが、自分の理想やこだわりから一軒家を買うことになり、結局は本書の売りのひとつであるパラレルキャリアを続けることになったのは怪我の功名なのだろう。

この「パラレルキャリア」を私は「二足の草鞋」と呼んだのだが、それは大いに違うらしい。この件に関しては井上さんと安村さんの間でも意見の違いがあり、多少の論争となった。ただ安村さんの言う、収入が分散しているというのは心の負担が少ないし、なによりどちらに対しても真剣になって気分も違う、というのには納得した。現在、政府が掲げている働き方改革の一環である兼業・副業のメリットであると思う。

昨今、魅力的な個人書店がさまざま登場している。安村さんが開店するにあたっても多くの先達のアドバイスがあったそうだ。一番背中を押されたのは、猫本というコンセプトがしっかりしていて、固定のお客さんが着いてくれると思われると言われたことだそうだ。

クラウドファンディングについても、資金を集めることとともに、この本屋について知ってもらい興味をもってもらいたい、という気持ちが強かったそうだ。SNSでの発信は、即時性があるうえ拡散するスピードも速い。興味を持ってくれそうな人に情報を容易に発信できることも強みだ。

実際、SNSがなかったらこの夢が実現できたがどうかわからない、と安村さんは語る。今は「本屋」という肩書が先にくるが、クラウドファンディングで先に興味を示してくれたのは猫好きの人だった。

店員の猫たちが保護猫であり、収益の一部を保護猫のために充てている。「猫が本屋を助け、本屋が猫を助けるお店」は実現したのだ。

犬好きの井上さんには「世の中にこんなに猫が好きな人が多い」というのは驚きだったようだ。だが安村さんいわく、猫好きはどんな猫でも全部好き、ノラでも血統書付きでも猫の話で盛り上がれるが、犬好きは自分の犬がまず好きで、次に同じ犬種、そして近くの散歩仲間とわりと縦割りになっているのではないか、と安村さん。確かにそんな傾向はある。ちなみに私は大学の専攻が動物なので、どんな生き物も好きです。

このあと、猫本屋の経営的な話になっていくのだが、本書をよむと開店資金や収支報告まで赤裸々に報告されていることに驚くだろう。「夢の猫本屋」とはいえ夢を夢で終わらせないためにシビアな現実、お金の問題を避けては通れない。

本書の面白いところはそこだ。商売を始めるための資金計画は一番ないがしろにできない問題だ。井上さんはそこを鋭く突っ込んで書いた。

そもそも安村さんの一人称で書かれていないのも読みごたえになっている。第三者で、本屋そのものに詳しい井上さんの目を通して書かれた本書は、今後、新しく個人書店を開きたいと思う人たちの良き参考書となるだろう。


1時間あまりのトークのあと、司会をビブリオバトル普及委員会の瀬部貴行さんに代わってもらい、正式なルールに則って猫本ビブリオバトルを開催した。

安村正也さんが選んだ本。

世界のしおり・ブックマーク意外史 (アマチュア歴史学)
作者:猪又義孝
出版社:デコ
発売日:2017-08-23
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 ひさびさのビブリオバトルで調子が狂ったようだ。5分間でネコの話までに至らず。

 井上理津子さんが選んだ本。 

性悪猫 (やまだ紫選集)
作者:やまだ 紫
出版社:小学館クリエイティブ
発売日:2009-10-01
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 犬好きな井上さんもこの本だけはずっとそばにあるらしい。二十代半ばのとき、好きな男を京都の女に取られた話とどう結びつくのか、最後まで聞きたかった。

私が選んだ本。

小笠原が救った鳥: アカガシラカラスバトと777匹のネコ
作者:有川 美紀子
出版社:緑風出版
発売日:2018-04-23
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  勝者はごめんなさい、私でした。HONZのメンバーから「またプロが大人げない…」と言われるだろうなあ。レビューをご覧ください。
 

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