『スノーボール・アース』

2011年11月15日 印刷向け表示
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科学本なのに、まるで小説を読んでいるかのようである。物語が壮大でロマンに溢れ、本書を読んでいると、不思議とやる気と力がみなぎってくる。ロマン溢れる仕事をしたいと思っている若手ビジネスマンにはぜひ読んで欲しい一冊だ。

本書は、地質学者を目指していた学生がボストンマラソンに挑戦し、見事9位入賞を果たした場面から物語が始まる。完走後、この学生は将来の進路について考えこむ。マラソンと地質学どちらの方が世にインパクトを与えられるか、と。結局、マラソンではオリンピックで金メダルを取れる見込みがないと諦め、地質学の世界にのめり込んでいった。この学生が、本書の主人公ポール・ホフマンである。現在は、スノーボール・アースの提唱者として広く世界に知られている人物だ。確かに彼の判断は間違っていなかった。彼はその後著名な地質学者(ハーバード大学終身在職教授)になり、今まさに科学史の歴史に名を残そうとしている。

スノーボール・アース(「全地球凍結仮説」とも呼ばれている)とは、先カンブリア紀に北極から赤道まで地球はほぼすっぽり氷に覆われていたという仮説だ。初耳だとにわかに信じがたいが、ポール・ホフマンたち地質学者は本気で地球は全面的に凍ったと考えた。提唱された当初は、あきらかに常軌を逸したアイデアだ。

筆者は小さい頃、地球は小惑星の衝突・合体によって現在の大きさになり、当時マグマ状だった地球は雨によって冷やされ、徐々に徐々に、現在の美しい地球になっていったと教わった(もしくは当時観ていたドラえもんなどのアニメはそういう設定だった)。しかし、実際の地球はそれほど緩やかに現在の姿になったわけではない、とポール・ホフマンはいう。地球46億年の歴史の中で、少なくとも2回、多ければ5回地球全体が全面凍結したと言うのだ。想像を絶する超大災害を数回経験していた、と。

このスノーボール・アース仮説が『サイエンス』に掲載されると、多くの反論が地質学者や気象学者などから噴出した。そりゃあそうだ、どう考えても彼のスノーボール・アース仮説は当時の常識範囲を超越していた。しかし、激しやすい性格のポール・ホフマンはこれら反対論を論理的な説明と証拠によって次々とねじ伏せていく。まるでRPGゲームのように、次から次へと強敵(反論)が出てきては、それらを自説で打ち負かしていく。たまに追いつめられてもうダメかというという局面もあるが、不思議とタイミング良く助け舟(他の科学者の新しい発見)が出てくる。

このあたりになると物語にグイグイと引き込まれてしまい、時間を忘れてページをめくってしまう。常軌を逸したアイデアが世の中の常識になろうとしている歴史的な過程をまさに追えるのである。さながら大陸移動説を唱えていたアルフレッド・ウェゲナーの現代版を追っているかのようだ。

しかもこのスノーボール・アース仮説は従来の地質学上の見方や考え方を崩すだけでなく、生命体の進化・発展に関する研究へも一石を投じている。ポール・ホフマンが主張するスノーボール・アース仮説は、生物史上、急激に複雑な生物が増えた時期(カンブリア大爆発)の直前に起こったとされており、もしかするとこの全地球凍結が生物の進化に何らか影響したかもしれないのだ。この件に関しては、現在、生物学者が躍起になって研究を進めているところであり、今後の展開が楽しみである。

科学書というと専門用語が多く出てきてつい読むのが億劫になってしまいがちだが、本書は本当にワクワクしながら読める。本書を読むと、科学とは単なる実験・調査による発見ではないということがよく分かる。個性豊かな科学者達の信念と信念のぶつかり合い、或いは個性と個性のぶつかり合いなのだ。はっきり言って、こんなに刺激的で魅力的な科学と科学者の物語に出会える機会はそうそうない。本当にオススメだ。

 

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『生命の起源を宇宙に求めて』

生命の起源として有力視されているのが、深海底の熱水噴出孔。熱水噴出孔の周辺には、酸素を必要としない嫌気性生物の生態系が存在していた可能性が高い。しかし、それに挑むのがパンスペルミア説。生命の素となった有機物が宇宙空間で生成されて、彗星や隕石によって地球に飛来したというぶっ飛んだ説だ。

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『破局噴火』

今から7万5千年ほど前のトバ火山の破局噴火で、人類は絶滅寸前になったという仮説がある。このとき子孫を残せたカップルは1万人以下に激減したそうである。

破局噴火-秒読みに入った人類壊滅の日 (祥伝社新書126)

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