『できる人はダラダラ上手』-編集者の自腹ワンコイン広告最新の脳科学で解明される「何もしないこと」の効用!

2014年5月23日 印刷向け表示
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できる人はダラダラ上手: アイデアを生む脳のオートパイロット機能

作者:アンドリュー スマート
出版社:草思社
発売日:2014-05-15
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仕事で行き詰まったとき、気分転換に散歩したり、ちょっと休んでダラダラしているうちに、よい方法がひらめく――。本書は、誰しも思い当たる、この体験を脳科学や複雑系、心理学などから科学的に解き明かそうとした意欲的な作品です。

北欧出身で脳神経科学を研究する著者のアンドリュー・スマートは、人間が休息しているときに活性化する「デフォルトモードネットワーク」という脳機能の研究に着想を得て、「何もしないこと」の効用を探っていきます。

デフォルトモードネットワークは、「脳のオートパイロット機能」とも呼ばれ、飛行機の操縦にたとえられます。何もせず脳を休ませるとその機能が作動し、脳内ネットワークが自律的につながり、新しい発想の世界へと導いてくれるのだとか。何やら謎めいていますが、自己組織性や複雑系に関心がある方には、共感する部分も多いでしょう。

著者によれば、ある脳科学研究では「何もせず脳を安静にする時間が多い人ほど、ひらめきの瞬間が多くなる」という結果が見られるそうです。実際に、ニュートンは、相当なダラダラ人間だったとか、哲学者のデカルトが、XとYの座標軸を思いついたときはゴロ寝の最中だったとか。

かつてないほど創造性やイノベーションが求められる現代。問題は、その道筋です。イノベーションには、豊かな発想を育む創造的な環境が求められるのに、多くの働く現場では、仕事の効率ばかりが強調される。著者は、「何もしないこと」の効用を説きながら、「効率」と「創造性」という矛盾する命題で板挟みになった人たちが、無茶な時間管理やマルチタスク(同時並行作業)で過重労働に陥っていることにも強く警鐘を鳴らします。

“わたしたちはそんなに頑張るべきではありません。
というよりも、何もしないほうがいいくらいなのです”

日々の仕事に追われ、家では育児や家事に追われ、バタバタ上手に暮らす編集担当としては、「タイムマネジメント」「マルチタスク」は、かなわぬ夢。できなくて悩んでいましたが、本書では、そもそもばっさり切り捨てですから、ちょっとショックでした。私は何を頼ればいいのよぉーー?という気持ちで……。

マルチタスク信奉者としては、えっ、仕事が終わってなかったら徹夜、前倒し、同時並行が基本でしょう……?!ダラダラなんかしちゃダメダメ……と原稿を読みながら思ったのですが、読み進むうちにすっかり改宗。休息優先、ダラダラ上手になって、ベストセラー連発をめざす日々です。これが意外に快適でして、ダラダラって素敵ですよ~。
 

三田 真美 草思社編集部。外資系企業を経て出版界へ。いったんフリーランスとなるが、2013年末より現職。企画編集した本に、渡邊奈々『チェンジメーカー』、H.シュルツ『スターバックス再生物語』など。
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作者:成毛 眞
出版社:中央公論新社
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