12月のこれから売る本-大垣書店烏丸三条店 吉川敦子

2014年12月14日 印刷向け表示
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一年の終わりが近づいています。振り返ると、いつも周りの方々に助けられ、励まされ、支えられてここまでこれたなぁとしみじみ思います。とりわけ仕事関係の方々には大変お世話になりました。

「ビジネスライク」という言葉があるように、ともすると利害関係が最優先事項になりがちなものですが、私は幸いにも公私ともに仲良くしてくださる方も多くて、本当に幸せな時間を過ごさせて頂きました。今回は、まわりの人と良好な関係を築くための一助になる本をご紹介します。

問いかける技術――確かな人間関係と優れた組織をつくる

作者:エドガー・H・シャイン
出版社:英治出版
発売日:2014-11-26
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100の言葉よりも1つの問いかけが、人を動かす。と帯に大きく書かれた本書。組織心理学の第一人者が語る、優しくて心の扉をそっと開けるような他者へのアプローチ法のすすめは、読むだけで優しくなれるような、そんな力に満ちています。

1 自分から一方的に話すのを控える
2 「謙虚に問いかける」という姿勢を学び、相手にもっと質問するように心がける
3 傾聴し、相手を認める努力をする

本書ですすめられているのは、周りの人の力を引き出す努力。自己をいかにPRするかという本が流行していますが、その逆を行く主張です。しかし私達日本人には「和を以て貴しとなす」の精神に通じるこの方法論の方がしっくりくるのではないかなぁと思います。

私たちはとにかく自分がしゃべることに一所懸命になる「自分が話す文化」のなかにいるので、相手に質問するのが上手ではない。ましてや謙虚な姿勢で聞くとなると、特に難しい。そもそも、自分が話すことの、いったいどこがそんなに悪いというのか。

この問いに端的に答えるには、社会学的な視点が役に立つ。社会学的にみると、質問せずに一方的に話すことは、相手を上から見下ろすような格好になるのだ。つまり「あなたはこのことを知っているべきですが、まだご存じないでしょうから教えてあげましょう」というのを言外に含んで示唆していることに等しい。
(中略)
一方で質問するという行為は会話の相手に力を与えると同時に、一方的に私を弱い立場に置くことになる。私が知りたかったこと、あるいは知る必要があることについて、相手はなんらかの情報を持っているのだということが示唆されるからだ。

相手を押しのけて自分が前に出るのではなく、皆で仲良く一歩一歩前にすすもうとする考え方に、なんだか疲れていた心が癒される思いです。心穏やかに人との輪を大切にしたいと願う方は是非読んでみてください。

声に出さないコミュニケーション手段としての服装術。洗練された服装を習慣化することの大切さを説いた本をご紹介します。

チャンスをつかむ男の服の習慣

作者:政近 準子
出版社:KADOKAWA/中経出版
発売日:2014-11-27
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「人間は中身が大切!服は清潔であれば良い」「男がおしゃれに気を使うなんて恥ずかしい」というご意見を男性から伺う事が少なからずあります。著者の政近さんは説きます。
自身の価値が「仕事だけ」で構成されているのではなく、「内面・外見を含めたパーソナルな能力、魅力である」ことを本当の意味で自覚し習慣を身に付けることの大切さを。洗練された着こなしは、周りの人を時に幸せにします。

ただ闇雲に服にお金を投じろとは言っていないのです。限られた金額であってもその中で上質の物を選ぶ努力、自分にとってベストな選択をするためのコツが書かれていて、服に対する投資の費用対効果を最大化するための方法が満載です。

具体例の一つとして挙げられているのは、帯にも書いてある「お手入れされた4万円のスーツは10万円のスーツに勝つ」というもの。10万以上する一張羅のスーツをお手入れせずヘビーローテーションするとあっというまにくたびれてしまいますが、4万のスーツを3着買って中3日はあけて着まわしながら、着た後はブラッシングをかかさないなどお手入れを怠らなければ、10万円のスーツ以上の価値をもたらしてくれるのです。

他にも「洋服や革靴など装いのアイテムをいい状態に保つ習慣を身に付けることの大切さ」「自分が好きな服を着るのではなく、相手からどんな装いを求められているのか考えて服を選ぶようにする」「自分のセンスを磨くのはもちろんですが、時にはプロの力を借りることの重要性を知る」など、納得しすぐにでも取りかかれそうな、着こなしのヒントがつまっています。

図や写真も多く、色柄の合わせ方の提案がたくさん掲載されているので、スーツ、ネクタイ、シャツのお買い物の際に持っていくと、より効果的なお買い物をすることができます。清潔であればいい、人に不快感を与えない程度であれば、という意識から一歩前に出て、似合う服をまとうことをひとつの重要なスキルであると認識を改め、より信頼され好感を持たれる男性になりませんか?

すでにおしゃれに気を使っている男性も、自分の装いがひとりよがりなものになっていないかチェックするために使えますので、とりあえずスーツを着る機会がある男性全員におすすめします!

成功の秘訣は行動が全て。わかっていてもできない。一歩踏み出せず、机上の空論から抜け出せない。そんな時に読めばやる気が湧いてくる一冊です。

欲望の先にビジョンがあるから、欲望を洗いざらい挙げて、ビジョンを作り出す方法。自分をダメだしした後に受け入れ、仲良くなろうと努力する事の重要性。日常のルーティン作業に新しい物事へのチャレンジを組み込む方法など、アドラー心理学をベースにした行動イノベーションのメソッドが書かれています。

なぜダメなのか考える代わりに、どうすれば今より前進するかを考えようという著者のメッセージは、背中をグイグイ押してくれますよ。

今回で私のこれから売る本のコーナー連載は終了です。拙い文章にお付き合い頂きましてありがとうございました。
 

吉川敦子 1982年生まれ。中高大、ならびに就職先もすべて京都。他府県へ出る機会を逃し今に至る。抹茶と和菓子をこよなく愛し、飲み会よりお茶会への出席率の方が高い。2014年秋から長年の悲願であったビジネス書担当に就任。文芸書担当も兼任しているので大忙しの毎日。マイブームは建築探訪。特に、安藤忠雄さんのチャーミングなお人柄から生み出される、大胆かつ繊細な建築物が大好きです。

【大垣書店烏丸三条店】
〒604-8166 京都市中京区烏丸通三条上ル 烏丸ビル1階
TEL 075-212-5050

決定版-HONZが選んだノンフィクション (単行本)
作者:成毛 眞
出版社:中央公論新社
発売日:2021-07-07
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『決定版-HONZが選んだノンフィクション』発売されました!