うわっ!ボーイズラブになっとるやんか 『竹取物語、伊勢物語』

仲野 徹2018年10月14日 印刷向け表示
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BL古典セレクション1 竹取物語 伊勢物語
作者:雪舟えま
出版社:左右社
発売日:2018-10-05
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HONZでレビュアーしてますと、いろんなところが本を送ってくれはります。ありがたいことですわ。買うつもりでいた本が送ってもらえたらむっちゃうれしいけど、買った本が送られてきたらちょっと悲しい。

そんなんとちごて、こんなん絶対に買わへんわ、という本が送られてくる時もあります。けっこう礼儀正しいから、お送りいただいた本は必ず目をとおします。けど、やっぱり、自分で買いそうもない本はよう読み切らんことが多いです。スンマセン。

この本も、まず、本屋さんで手に取ることはない本です。竹取物語はさすがに内容を知ってます。伊勢物語は、昔、古文の授業で『東下り』とか『筒井筒』をなろた記憶があるけど、別に興味ないし。

ん? 現代語訳はええとして、ボーイズラブに翻案してるというやないですか。はぁ?登場人物が全員男? ありえへんやろ。かぐや姫はどないなんねんっ!と、ここまでいくと、かえって読みたくなってしまうのがいとあわれなり。

で、とりあえずは竹取物語。これが、おもろい。というか、感情移入がえらくしやすい。お、ひょっとして、あんたはおっさんずラブ系か? と思われたかもしりませんけど、ちゃいます。

竹取物語、詳細は別として、子どもの頃に読んで、みんなあらすじは知ったはるでしょう。けど、ちょっと視点を変えてみてください。大人になって、初めて読んでみたと。あかんでしょう。絶世の美女が、男に難題をふりかけて困らせる。たとえどんだけ美人でも、そんな性悪女に感情移入しにくいことないですか?

そこへいくと、BL竹取物語はちがいます。かぐや姫ならぬ「かぐや彦」。そら、無理難題を言いたくもなるでしょう。次から次へと男に迫られるんです。むっちゃ男前やから、きっと女には不自由してないやろうに、男まで相手にするのはじゃまくさいんとちゃうやろか。どうです? 感情移入しやすいことないですか?

竹取の翁が、かぐや彦を家に連れて帰ると、待っているのは嫗ではなくて爺です。それも、なんかむっちゃ仲むつまじい。そんな爺ちゃん同士はいてそうな気がするし、冒頭からぐいぐい引き込まれること間違いなし。

古典にはまったくうといんで、伊勢物語は、通しで在原業平が主人公かと思ってました。けど、「むかし、おとこありけり」と、へんによそよそしい文章から始まる段が多いので、そうではないらしいです。とりとめのない話が125も続くので、普通に読んだら、途中でいやになりそう。

でも、この本では、一貫して業平の物語として訳されてます。ストーリーもわかりやすくしてあります。古典文学の解釈上、それがええのかどうかはわかりません。けど、そうしてもらうと、散文の集合やったのが、かなりの物語性をもってきて、読みやすさが格段にあがります。

業平がめったやたらともてまくる。えらい男前で、歌詠みの才能もむっちゃあります。なんか気に入らんことないですか?でも、この本では、もてる相手、付き合う相手がすべて男です。そうか、おっさんずラブやったらまぁええか♡、まけといたろ、と思うのはわたしのようなもてないおっさんのひがみでしょうか。

著者の雪舟えまさんは、ボーイズラブ系の作家にして歌人だそうです。それだけに、伊勢物語はいうにおよばず、竹取物語でもようさんでてくる和歌の現代語訳がわかりやすうて、ごっつええ感じです。それに、業平が恋人のもとへ「愛にいく」とか、「一般てきに」とか、独特の漢字かな遣いもいとよろし。

便利なもんで、竹取物語とか伊勢物語はとおの昔に版権が切れてるので、ネットで原文やふつうの現代語訳は読み放題。え、ここはもともとどないなっとったんや、とかしらべて、ふむふむとか思うのも楽しかったです。

本書が、BLファン、古典ファンにとどまらず幅広い読者に手に取ってもらえることを祈っております

わたたし限定かもしれんけど、雪舟さんの意図は100%果たされましたな。まいりました。完全に版元・左右社の企画勝ちですわ、これは。BL古典セレクションシリーズとして『古事記』やラフカディオ・ハーンの『怪談』も出されるそうなんで、楽しみです。

HONZはノンフィクションのみのレビューやけど、あまりのおもろさに、内藤編集長にお願いして、例外としてここに紹介させてもらいました。そやけど、なんでこの本をお送りいただいたんやろ? なんか、左右社に操られてるような気がしますけど、おもろかったし勉強になったし、まぁまけといたります。

竹取物語/伊勢物語/堤中納言物語/土左日記/更級日記 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集03)
作者:  翻訳:森見 登美彦
出版社:河出書房新社
発売日:2016-01-11
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こちらはストレート現代語訳。竹取物語は森見登美彦さん、伊勢物語は川上弘美さんです。
 

日本霊異記/今昔物語/宇治拾遺物語/発心集 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集08)
作者: 翻訳:伊藤比呂美
出版社:河出書房新社
発売日:2015-09-11
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町田康さんの宇治拾遺物語は爆笑まちがいなし。いやぁ、オリジナルよりはるかにおもろい。

 

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