『さあ、バリアフリー温泉旅行に出かけよう!』経験豊富な温泉ライターが教える安心で安全な“楽しみ方” 準備から旅の注意点まで、知って安心の親切マニュアル

東 えりか2019年05月26日 印刷向け表示
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 ここ10年あまり、一人暮らしの老母を誘い、年に一度は温泉旅行に出かけている。毎年楽しみにしているが80歳を超えたころから足腰が弱くなり、バリアフリーの旅館を選んでも不満が残ることが多くなった。

そんなときに見つけたのが本書である。世界32か国もの温泉を巡って取材し、温泉専門のライターとして活躍する山崎まゆみが、高齢者や障がい者の旅行に同行して実地を検分、自らも介助者として入浴した経験をもとに「明日から実践できるバリアフリー温泉」の手引きを書き上げた。

バリアフリーの旅館というと平らな空間で清潔だが、飾り気のない部屋のイメージがある。実際は、今でも温泉旅館といえば、段差の多い純日本式家屋が多い。昨今ではそんな旅館でも、完全なバリアフリーは無理でもバリアレス化を目指すことで、どんな人でも「温泉に行ける!」ように整備され始めた。

私はこの本で「トラベルヘルパー」という存在を初めて知った。外出支援のプロで、旅の始まりから終わりまで同行し介助する仕事である。

他にも温泉地や旅館によってその都度、介助者を手配してくれるサービスも紹介されている。介護タクシーも増えてきた。公共交通機関の相談窓口などを利用し、事前に準備することで、旅の負担は軽くなる。

故郷の新潟に戻り、氏神様を探したいという車いすの父の願いをかなえるべく娘が用意した旅行は、日本トラベルヘルパー協会関連会社の旅行社が手配した。

同行するヘルパーはさすがにプロ。家族の邪魔にならないように、しかし事故や危険が及ばないよう細心の注意をめぐらす。入浴の介助方法や食事の準備など素人では気づかないことばかりだ。

無事に温泉に浸かったあとは、みんなほくほくとした顔で食事となる。諦めていた旅行や温泉を満喫した達成感が伝わってくる。

著者には体の不自由な妹がいた。若くして亡くなった妹を温泉に連れて行けなかった後悔が、今の活動に繋がっていると語る。うちに閉じこもり気味な高齢者や障がい者が、旅を通じて外とのつながりを持つのは、励みとなりリハビリになるというのも頷ける。

紹介されている介護サービスやバリアフリーの旅館情報も貴重だが、何より教えられたのは、一緒に旅行をしようと思う家族の思いだ。使えるものは何でも使い、無理せず楽しむことが大事だ。

2020年に向けてユニバーサルツーリズムを促進する日本。心もバリアフリーの楽しい旅を探してみようではないか。(週刊新潮5月23日号)

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