『とうがらしの世界』進化の過程から各地の料理まで

東 えりか2020年09月11日 印刷向け表示
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とうがらしの世界 (講談社選書メチエ)
作者:松島 憲一
出版社:講談社
発売日:2020-07-10
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 「激辛」という言葉が新語・流行語大賞のひとつに選ばれたのは1986年のこと。現代でもこの言葉は生き残り根付いている。2003年、激辛スナック菓子「暴君ハバネロ」が登場した。これはトウガラシの品種名そのものを使っている。激辛は日本の食文化に大きく影響している。

著者は信州大学農学部准教授でトウガラシ研究の第一人者。もともとはソバの育種研究室に所属しており、ソバの品種とともに収集していた各地のトウガラシの研究を始めたのが30年ほど前。ちょうど激辛ブームが始まったころだ。絶妙のタイミングだったと言えよう。

トウガラシの起源は中南米である。1492年にコロンブスが数種類のトウガラシをスペインに持ち帰ったという記録があり、それが世界中に伝播し、その先で独特な進化を遂げ、料理のレシピに不可欠なスパイスとなっていった。

同じ品種の種を蒔いても土地や気候によって味が違うのだそうだ。そういえば、大阪鶴橋の友人は、キムチを漬けるために韓国から取り寄せると言っていた。

トウガラシってどんな植物なのか、どうして辛くなったのか。まずは進化の過程をわりやすく説明する。それは植物の種子拡散戦略だった。

身近な謎だった、ししとうに時々激辛が混じっている理由や、辛み成分のカプサイシンはダイエットに効くのかという問いにも答え、人が食べられる辛さではないギネス記録を持つ「カロライナの死神」開発までの熾烈な研究合戦に驚かされる。

後半で紹介される、著者が食べ歩いた世界の唐辛子料理が興味深い。辛みは食欲を増進させる。

日本でも江戸時代以降親しまれ、日本三大七味唐辛子の江戸”やげん堀中島商店”、京都清水の”七味屋本舗”、信州善行寺前の”八幡屋磯五郎”の調合には店の気構えが伝わる。昨今では日本の伝統品種も見直されている。私好みの辛さを持つトウガラシを探してみたい。(週刊新潮9月10日号より転載)

 

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