ノンフィクション業界の6月の話題といえば、なんと言ってもハヤカワ新書の創刊でしょう。先が見えない時代、SF的な発想が必要になっていると言われている中で、どんな書籍が産まれてくるのか楽しみです。6月創刊は5点、中でもフィクションとノンフィクションが混ざり合ってきたような時代に「現実」とは何かを考えた『現実とは？―脳と意識とテクノロジーの未来』に注目しました。
本の内容もそうですが、この新書シリーズでは史上初とも言えるNFT電子書籍セットという作品があります。電子書籍のユーザー間売買を可能にしたこの取組、ぜひ体験してみては。
6月新刊からいくつかを紹介していきます。
標準化や共通化ということには「共通言語」は欠かせません。世界を見回してみると言葉は色々ですが、単位には国際共通のものがある、というのはなんだかすごいことな気がします。人類が6000年かけて試行錯誤してきた「測る」という取組について、世界的な物理学の権威が解説したのがこちら。
長さも重さも、時間も、あたり前になった今だからこそ、人類のこれまでの苦労と向かい合ってみませんか？
キルスコアとは、気候変動や廃棄、紛争など、先進国の経済成長がもたらす未来の損失を「失われる人命数」として算出したものだそうです。その人数は10億人。10億人の命が今世紀末までに奪われます。
至る所で「サステナブルな社会」が標榜されていますが、現実は「より豊かな生活」を求めてしまいます。そんなジレンマを抱えたこの課題に人類はどう向かい合うべきなのでしょうか。
医療記者岩永直子さんの最新ノンフィクション。コロナ禍中もその発信には助けられました。医療をめぐる問題はまだまだ多くあります。「優生思想」「安楽死」「医療費」「HPVワクチン」「免疫療法」などなど、それらの最前線を取りあげています。元々はBuzzFeedでの執筆記事をまとめて加筆した作品だそうです。奇しくもこのタイミングでBuzzFeedの退職が発表されました。私たち読み手に真実を伝えるために今後も書き続けて欲しい、そんな応援の気持ちも込めて紹介したい1冊。
日本赤軍の最高幹部だった重信房子が出所したのが22年5月のこと。その後は、新聞取材などでの露出は少しあったものの大きな動きはありませんでした。この『はたちの時代』は学生時代から連合赤軍の最後までを著者自身が綴った決定的な自叙伝。22年という長い獄中生活を経て振り返った人生はどのようなものに見えているのか。振り返って刻んでおきたい歴史の一つです。
韓国の「バーニング・サン事件」や「n番部屋事件」は日本でも報じられ衝撃を与えました。これらの事件は特殊なものではなく、女性が男性客を接待するようなお店では女性への暴力が日常的に行われているのだと言います。著者が疑問に思ったのは、なぜ周囲に溢れているそういった事件に驚かないのか、という点でした。快楽のために女性を商品として扱う産業があり、商品として扱われるため発生する暴力があり…といったことを文化・産業の実態から読み解きます。それは日本にも無関係ではありません、70年代のキーセン観光など日本人をターゲットにした産業もあったからです…知っておくべき現実が見えてくるノンフィクション。
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紹介した作品の他には、やはりAIにまつわる本が増えてきています。特にChat GPTに関しては、その使い方はもちろんのこと、利用が広がった先にどんな世界が描かれていくのか、改めての未来予測が始まっています。
世界の劇的な進化を先回りして創造するために、ぜひ本屋さんに足を運んでみてください。
