HONZ卒業旅行&忘年会 in 伊豆①

2024年12月21日 印刷向け表示
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2024年7月15日、13年間続いたHONZは遂に幕を閉じた。初期メンバーはたった10人のキュレーター勉強会から始まり、その後メンバーが入れ替わり立ち替わり、24年7月には総勢24人という大所帯にもなったが、「もう、やり切ったかな」というテンションで呆気なく終わった。

「せっかくだから卒業旅行をしよう」成毛眞の呼びかけにより、師走の忙しい時期にもかかわらず26名が集まり、1泊2日の伊豆旅行に出かけた。懐かしいメンバーが集まり宴会をしただけの活動期ではあるが、「本好きってどんなところに旅行に行くの」「本好きが集まって何話すの」ということに興味があれば、ぜひご笑覧ください!

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HONZ旅行企画会議

企画者の東えりかの繁忙によりバトンを受け取った私・刀根だが、とんでもなく荷が重い。一番難しいのは場所の選定である。全国から集まりやすい場所として、伊豆方面というのは確定だ。あとは、好事家で捻くれ者のメンバーがを唸らせ、酒を浴びてはしゃいでも人様に迷惑をかけない場所はどこか。私は早速HONZの秀逸メンバーにFacebookで呼びかけた。塩田春香、中野亜海、足立真穂、3人の鬼才編集者たちを味方につければ叶えられないものはない。特別に秀逸メンバーによる企画会議を明かそう。「どこか旅行先の候補はありますか? HELP ME!!」

早い!この3人はいつも迷うということがない。ひとりが「こんなのどう?」と言ったら、高度な妄想力と豊富な経験値であっと言う間に企画を広げてしまう。この後さらに有力情報が。あの伝説の”冒険歌手”が伊東在住で、サンハトヤが良い意味でヤバいと推しているそうだ。ここで、「サンハトヤ」「サフィール踊り子号」「昭和の社員旅行」というキーワードが3つ揃い、あとはJTBにお願いした。HONZのFacebookグループにも適宜情報は出しているが、誰も言葉を発してくれない。皆の「飲めれば何でもいい」という適当感がしっかり伝わってくる…。

ということで、12月14日(土)から15日(日)にかけて、伊東のサンハトヤに宿泊してきました〜!

サフィール踊り子号に乗車

迎えた当日。東京駅で10時40分に待ち合わせ。絶妙に遅れる電車と東京駅の人混みに焦りながら向かった先には、「絶対あの集団ではありませんように」と目を背けたくなるハイテンションな団体がいる。HONZには謎の団結力があり、まるで運動会前の中学生たちのようだ。一人ひとりがなんとかこの場を盛り上げようという使命感を胸に、やる気に満ち溢れた笑顔と声量がキラキラしている。「はい、迷子にならないようにね!」と内藤順がさらに煽る。みんな、連呼しなくていいんだよ〜! とはいえ、久しぶりのメンバーとの再会に皆嬉しそうだ。

11時にサフィール踊り子号に乗車。座席が広い、窓が大きい、高級感に酔いしれたのも束の間、クルクル座席を回して向かい合わせ。プシュー、乾杯! 車内販売がやってきた。ワインやクラフトビールなど、メニューの非日常感が楽しい。皆が手を伸ばすから、車内販売のお兄さんもてんやわんやである。

ここで新井文月が秘密道具を持ち出す。なんと、HONZメルマガの、あの伝説の4コマ漫画集ではないか!改めて眺めると、新井の人の特徴を押さえる才能に脱帽してしまう。新井はHONZの13年間で無職から売れっ子のアーティストに大変身した。いつか、この4コマ漫画にも高く買値がついてしまうのだろうか。

ひときわ口が回る人がいる。栗下直也。早くも3杯目に突入している。栗下は最近9時に寝て5時に起きる生活をしているらしい。酒量も落ち着き、規則正しい生活を送りながらもフリーランスで原稿を進める、理想的な日々を送っているそうだ。HONZ名物である栗下の泥酔音頭は、今夜も見られるのだろうか。きっと本人は期待されてさぞかし重荷だろう。「おそらく夜になれば自分は使い物にならないから、今のうちに飲んどけ」という作戦だと言うが、まさか行きの列車で終わるわけはあるまいな。一方で麻木久仁子は「成毛御大が起きている限りついていく」とか、古幡瑞穂は「私の体力がどこまで持つか……」とか、皆の心意気にあっぱれである。あいかわらず本読みたちは体育会系だな!

伝説の“冒険歌手”

さて、ここで、今回の重要人物「冒険歌手」を紹介しよう。HONZの熱心な読者はご存知だと思うが、冒険歌手こと峠恵子さんである。時は2015年11月12日にさかのぼる。当時は月に1度、「今月読む本」を3冊紹介し合う朝会を行なっていた。いかに他のメンバーと本を被らせないかを試行錯誤して、3冊と言わず5冊6冊をバックに詰め込み(風呂敷に包んで持ってきていた人もいた)、朝7時から熱烈な戦いを繰り広げていたのである。この日は塩田春香の圧勝であった。

この日、塩田は運悪く最後に本を紹介するという順番だった。最後となると、大抵の本は紹介され、手持ちの本で無事に足りるかハラハラする。なんとなく盛り上がりに欠ける静かな朝会が進み、塩田にバトンが渡されたとき、大爆発が起こる。その時の様子を東が書き留めていたので引用しよう。

この朝会の前日、早朝に内藤順は塩田春香に叩き起こされている。「朝会、みんなどこにいるんでしょう?」という電話に「明日だよ…」と不機嫌に答えた内藤。ああ、これは一生言われるなあ、と思っていたところ、最終走者である塩田が紹介した本が大爆発した!2015年のN0.1だ!と成毛が叫ぶ。『冒険歌手』の内容を聞くうちに、スクリーンに映し出されたアマゾンの在庫がどんどん減っていく。あまりの凄さにみんなその場で買っているのだ!今朝レビューがアップされた、急げ!この本のインパクトが凄すぎて、あと2冊は何を言ったか覚えていないけど、どちらも面白そうではある。


この朝会以降、塩田春香仲野徹、そして内藤順の著者インタビューへと続く。「カーペンターズを歌えば峠恵子の右に出るものはなし」と評される峠恵子の歌が聴きたい。何より本人に会いたい! 無理を承知でお願いしたら、「HONZ旅行に参加できるのであれば、いくらでも歌います〜」とプロとは思えない気さくな返事に、一同会えることを楽しみにしていた。

伊東に到着

12時40分、伊東に到着。峠恵子の熱烈な歓迎を受け、メンバー一同大盛り上がり。峠さん、そのうちわ、昭和にもほどがあるぞ!

さらに昭和色を強めるべく、峠恵子に続くは、伊東駅前の廃れたアーケード。湧き出る温泉に手を浸し、宴会グッズを探しながら一同進む。昼食に選んだのは峠さんおすすめの喫茶店「わかば」。

1948年創業の「わかば」は、サンドウィッチやピザトーストなど昭和懐かしメニューを楽しんだ。柳瀬博一、内藤順、久保洋介が選んだのは「スペシャルホットケーキ」、つまりはソフトクリームとプリンとホットケーキの全部乗せプレートだ。甘党3人は期待を裏切らない。柳瀬はハチミツ全部をかけて、60歳を迎えたとは思えない食欲を見せつける。旅行中終始、柳瀬は食べるか喋るかしかしていない。見ているこちら側が心配になってくる。なんだか、食べ物を食べているというより、夢を食べてしまうバクのようにも見えてきた。

「わかば」のご主人が個性的だ。会計時に必ず一人ひとりに話しかけてくれる。麻木が会計を終えた人に「お会計の時に何か言ってた?」と聞いていく。「5000円札って何だか偽物みたいだよな」「この前高校生が一人ずつお会計と言われて大変だったんだよ」と皮肉めいた言葉も投げかけられた者もいた。HONZで一番人の話を引き出すのが上手い足立には、「僕は歯のインプラントで600万円を現金一括払いしたんだ。車だって現金さ」と続く。さすが、足立真穂、相手の話が止まらないじゃないか。

サンハトヤホテルへ

ふたたび駅へ向かい、サンハトヤの無料送迎バスでホテルへGO! 10分ほど海岸沿いを走ると海に向かって垂直に構えるサンハトヤホテルに到着した。「はとやに決めた〜🎵」でお馴染みのCMに、海底風呂に古代プールなど昭和の夢が詰まったホテルである。ホテルマン太田さんから館内説明を受ける。「古代プールはどこにありますか?」「喫煙場所はどこですか?」「お酒はどこに売っていますか?」「三段逆スライド方式とはなんですか?」「ハトヤのCMに出ていた男の子がここの専務になっているって本当ですか?」質問内容が徐々にマニアックになってきた。ちなみに、CMに出演している男の子はハトヤでは働いておりません。生成AIの真っ赤な嘘に思わず笑ってしまう。

今回の旅行のテーマは「昭和の社員旅行」である。大事なのは、宴会だ!! ハトヤCMを浴びるように聞いた世代の人たちの中にもこれまでに宿泊した人はいない。海底温泉や古代プールなどハトヤ名物はたくさんある。宴会は6時からスタート。一同ひとまず解散だ。

HONZ卒業旅行&忘年会 in 伊豆② へ続く

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作者:成毛 眞
出版社:中央公論新社
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