
出口 治明
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『答えのない世界を生きる』
2017年08月31日いかなるビジネスであれ、ビジネスは人間と社会を相手に行うものである。そうであれば、僕は、人間と人間が創り出した社会の本質を理解することがビジネスにとっては何よりも大切だ、と思っている。その意味で、小坂井敏晶著『社会心理学講義』(筑摩書房)は、……more
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『モンゴル帝国誕生 チンギス・カンの都を掘る』
2017年08月23日人類のグローバリゼーションは海の道と草原の道を結んだクビライ治下のモンゴル世界帝国で最初のピークを迎えた、と一般には考えられているが、モンゴル帝国の創始者・チンギス・カンについては意外とその治績が知られていない。本書は、長年モンゴルで発掘を続……more
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『教養としての社会保障』
2017年07月15日少子高齢化が進む中で、社会保障の持続可能性について不安を持つ人々が増えているようだ。「年金は破綻する」といった論調などその最たるものであろう。僕は半世紀近く生命保険業界に身を置いてきたので補完関係にある社会保障については昔から興味があったが、……more
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『黒海の歴史 ユーラシア地政学の要諦における文明世界』
2017年07月02日「地中海世界」や「環太平洋諸国」と聞けば誰しもそれなりのイメージが浮かぶだろう。ところが世界政治のフォーカルポイントであるにも関わらず「黒海」はそうではない。12カ国から成る黒海経済協力機構(BSEC)を知っている人がどれだけいるだろう。本書……more
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『ダ・ヴィンチ絵画の謎』
面白い。まるで推理小説を読むようだ。しかも、嬉しいことにカラー版、美術好きには堪らない1冊だ。本書は、史上最高の画家、レオナルド・ダ・ヴィンチの最も有名な作品「モナリザ」にまつわるいくつかの謎について、当意即妙の文章で縦横に論じたものである。……more
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『われらの子ども 米国における機会格差の拡大』
2017年05月11日わが国ではシングルマザーの家庭を中心として、子どもの実に6人に1人が貧困に喘いでいる、といわれている。このまま放置すると、社会的損失は40兆円に達するとの試算もある(「子供の貧困が日本を滅ぼす」文春新書)。本書は、アメリカにおける子どもの貧困……more
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『イブン・バットゥータと境域への旅』
14世紀の初めにモロッコで生を受けたイスラームの法官、イブン・バットゥータは、なぜ30年に及ぶ大旅行を達成し得たのか。その背景には、モンゴル世界帝国による平和(パクス・モンゴリカ)とイスラーム世界の安定した権力(デリー・スルタン朝、エジプトの……more
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『失われた宗教を生きる人々 中東の秘教を求めて』
2017年03月09日ある考古学者がイラク南部で、四千年以上昔の木のパネルを発見した。美しい彫刻が施されていたが、蝶の羽のようにもろくなっていた。見つめていると雨が降りはじめ、写真を撮る間もなくパネルは溶けて泥と化した。中東の多様な宗教と民族のモザイク模様は長く輝……more
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『産まなくても、育てられます 不妊治療を超えて、特別養子縁組へ』
2017年02月26日子どもがほしいと願う「あなたは子どもを産みたいのでしょうか、それとも、子どもを育て、ともに過ごしたいのでしょうか」と著者は問いかける。後者なら、不妊治療の他にも特別養子縁組という「もうひとつの方法」があるのだ。本書は、親になりたいと願うすべて……more
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『平安京はいらなかった 古代の夢を喰らう中世』
2017年02月03日冒頭、著者は「日本という国に、あのような平安京などいらなかった」と喝破する。「平安京は最初から無用の長物であり、その欠点は時とともに目立つばかりであった」と。「では、なぜ不要な平安京が造られ、なぜ1000年以上も存続したのか」と著者は畳み掛け……more
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『「本をつくる」という仕事』
2017年01月26日自分で本を書くようになってから、1冊の本が世に出るまでには本当にたくさんの人のお世話になっていることがよく分かった。本書は、「書店は広大な読者の海と川とがつながる汽水域であり」、本づくりとは「源流の岩からしみ出た水が小さな流れとなって集まり、……more
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『異端カタリ派の歴史 十一世紀から十四世紀にいたる信仰、十字軍、審問』
2017年01月25日読者の皆さんは、「異端」という言葉からどのようなイメージを連想されるだろうか。おそらく、おどろおどろしいイメージの類ではないか。しかし東欧で興り(ブルガリアのボゴミル派)、11世紀に西欧に伝播したキリスト教の一派、カタリ派は、聖職者(完徳者、……more
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『パリの住人の日記Ⅱ1419‐1429』
2017年01月07日英仏100年戦争の後半期、1405年からパリの住人(名前不詳)が日記を書き始め、それが写本の形で残った。15世紀初頭のパリの実相を伝える貴重な資料としてホイジンガの「中世の秋」にも度々引用されている。本書はその名訳で(Ⅰ巻は2013年刊行)年……more