
刀根 明日香
-
『バナの戦争 ツイートで世界を変えた7歳少女の物語』シリア情勢を知る最適な一冊
そして最後に、本書の素晴らしいところは、暗い話ばかりでは決してないということ。希望が日常を眩しく照らす場面こそが、本書の一番の魅力である。例えば、爆撃が酷く、病院が破壊され、食料や水も十分に確保できないなか、3人目の子どもを妊娠していた母は現……more
-
『五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後』「民族協和」を目指した学生たち
2017年12月17日本書は、著者が建国大学卒業生たちを訪れ、大学時代の様子や卒業後の人生についてインタビューしたのをまとめたものである。建国大学が傀儡国家の最高学府という性格を持ち合わせているため、敗戦後多くの資料が焼却されて残っていない。また、卒業生も85歳以……more
-
世界一の戦闘飛行機を創った男『銀翼のアルチザン』
本書は「疾風」を世に生み出した中島飛行機と、そこで生きた人間の物語である。戦闘機について無知な私が、登場人物を通じて戦闘機の世界をはじめて知った。軍によるコンペティション(競争試作)が何度も行われ、そこで中島、三菱、川崎等の会社が競っていたこ……more
-
『虹色のチョーク』働く喜びをチョークにのせて
2017年06月17日粉の飛散が少なく人の肌にやさしい「ダストレスチョーク」と、ガラスやホワイトボードなどつるつるした素材に発色良く書くことができ、濡れた布で簡単に消すことができる筆記具「キットパス」。活気的な2つの文房具を開発したのは、日本理化学工業という会社だ……more
-
『猿神のロスト・シティ』
4年前に読んだ『マチュピチュ探検記』が面白くて、その後は本屋さんに行く度に冒険記を手に取るようになった。この本のなかで、冒険の背後では、歴史や文化、権力闘争や学界論争などが何重にも折り重なって物語が形成されていることを知った。さらに夢中になっ……more
-
今日もどんぶり、明日もどんぶり!『満腹どんぶりアンソロジー お~い、丼 』
2017年03月17日本書は、人気作家たちのどんぶり愛あふれるエッセイ集である。各章をずらりと並べると、「天丼」「カツ丼」「牛丼」「親子丼」「海鮮丼」「いくら丼」「まだまだあるぞ丼」「うな丼」と続く。お昼には牛丼、ちょっと気合いを入れる時はカツ丼、お出かけ先で海鮮……more
-
『MUJI式 世界で愛されるマーケティング』時代や文化を超える、暮らしの普遍性とは何か?
2017年01月23日『MUJI式 世界で愛されるマーケティング』は、無印良品の商品開発やブランドを理論と実践の二つの側面から解説した一冊だ。ブランドのエッセンスが非常に容易な言葉で描かれており、MUJIの世界観を分かりやすく伝えてくれている。今回はそんな本書の読……more
-
今の日本を知るならこれ!『フランス文学は役に立つ!』
なぜ、今フランス文学なのか。実は、フランス大革命は個の解放を歴史上初めて宣言した非常に大事な出来事であった。個と家族、個と社会の関係が劇的に変わり、新たな時代に突入する。そんな最中生まれた文学作品の数々を、現代の日本では100年、200年の遅……more
-
『自然が答えを持っている』大村智をもっと知りたい!
本書は、ノーベル賞受賞講演「自然が答えを持っている」を含めた、大村智先生のエッセイ集である。研究以外のいろんな側面、例えば絵画との出会いや、ふるさとへの想い、夢を追いかけることなどがメインとなっていて、大村先生を多方面から知ることが出来る一冊……more
-
『ウイルスは生きている』家なき子ウイルスと生命の輪
2016年05月17日「家なき子」のウイルス。生物の細胞という部屋に入って、細胞膜という「壁」に囲まれ、リボソームという細胞内でタンパク質を作る役割を持つ言わば3Dプリンターを自由自在に操り、自身のDNAをたくさんコピーする。部屋が自分のコピーでいっぱいになったら……more
-
『ポンコツズイ』ディスって笑え!病気を治せ!
著者の矢作理絵さんが患った病気は、100万人に5人の確率でなる「特発性再生不良性貧血」という厚生労働省指定の血液難病だ。本書では、著者曰く「汚くて、ダサくて、弱くて、もがきあがく、かなりかっこ悪い」闘病生活を追っていくのだが、その語り口が内容……more
-
『私のインタヴュー』「女優の私」から「個人の私」へ
5歳で映画界デビューを果たし、年に20本も30本も映画に出演した子ども時代、小学校に通い学ぶ機会さえ与えられず、親類縁者の生活を担ってきた。働き続けて息も詰まりそうになる日々からの解放、それが結婚だった。〈女優の私〉から〈個人の私〉を大切にし……more
-
『数学の大統一に挑む』こんな私でも数学を好きになれますか?
果たして、現代数学の概念を私のような文系人間が理解出来るのだろうか。本書を読む1周目、数学の単語についていくのに精一杯であった。「アーベル群」「ガロア群」「ゲージ理論」「三次方程式」「志村−谷山−ヴェイユ予想」・・・・。でも、最後まで読み通せ……more
-
『漫画家、映画を語る』
2015年06月17日本書は漫画界の鬼才9名により、映画&漫画論がインタビュー形式でじっくり語られている。『銀河鉄道999』の著者である松本零士や、『進撃の巨人』の著者である諫山創は知っている人も多いのではないだろうか。…more
-
一人の女性の生き様『ナグネ』
2015年04月17日本書は国家や民族、宗教という枠組みを越えた1人の女性の話だ。彼女の生き様には心がぱっと晴れるような力強さがある。そして、彼女の人生を追うことは、日中韓の複雑な政治背景と、日本が忘れかけている負の歴史、また中国で弾圧されているキリスト教信者の見……more