
峰尾 健一
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『県都物語』新刊超速レビュー
2018年03月21日本書は都市計画の第一人者が、47の県庁所在地(東京都については東京駅周辺)の成り立ちを、実際に訪れた経験と豊富な資料をベースにたどり、各県都の個性を浮かび上がらせていく1冊だ。漠然と歩くだけではわからないが、どの都市の構造にも何らかの特色があ……more
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タイトルの割に中身は真摯『誰もが嘘をついている ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性』
2018年03月04日本書は、グーグルや大学の客員講師などを勤めてきたデータサイエンティストが、データ分析が浮き彫りにする事実やそのインパクトについて縦横無尽に語った一冊である。著者がメインに取り組むグーグル検索分析を中心に、大規模なデータを活用した調査の数々を紹……more
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『消費資本主義』「見せびらかし」の心理をひも解く
2018年01月23日高級な車や時計、ファッションなどに代表されるような、機能というよりはステータスを手に入れようとする「見せびらかし消費」について、進化心理学の視点から考察していく1冊だ。著者によると、人々が見せびらかそうとしているものは、富や地位というよりも個……more
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『感染地図』疫学の父が立ち向かった、見えない敵
コレラの真の感染経路を突き止めて瘴気説の転覆に大きな役割を果たし、「疫学の父」として知られるジョン・スノー。彼の物語を中心に、1854年晩夏のロンドンでのコレラ禍を多様な角度から検証した1冊である。当時は正体不明だったコレラと、自分の論理の矛……more
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『家族をテロリストにしないために イスラム系セクト感化防止センターの証言』「取り込み」はいかにして行われているのか
2017年10月31日本書は、実際にテロ組織に加入しようとする若者を引きとめたり、社会に復帰することを支援したりといった活動を行う「イスラム系セクト感化防止センター(CPDSI)」の創設者であるフランス人によって書かれた1冊だ。著者はセンターを創設した2014年4……more
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『殴られて野球はうまくなる!?』「効き目」があるから、なくならない?
2017年09月24日昔に比べたらはるかに減っているものの、暴力は以前として野球界に生き続けている。本書は立教大学野球部4年時に、23年ぶりの東京六大学リーグ優勝を経験した著者が、元プロ野球選手・指導者・元高校球児など何十人もの野球関係者にインタビューを行い、今な……more
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インドア派にこそ読んでほしい『NATURE FIX 自然が最高の脳をつくる』
2017年08月13日森や海など自然豊かな環境に行くと、気分が上向き、体調も良くなる。体感的には納得しやすい話だが、科学的にはどれほどのことが明らかになっているのだろう? 環境・健康・科学などについての記事を執筆する米国のジャーナリストが、自然と脳、自然と健康に関……more
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『息子が殺人犯になった コロンバイン高校銃乱射事件・加害生徒の母の告白』わかりやすい原因などない、という現実
2017年07月23日コロンバイン高校銃乱射事件。1999年4月20日、コロンバイン高校の学生2人が無差別に発砲を行い、最終的に自殺。教師1人と生徒12人が死亡、24人が負傷したという傷ましい出来事である。本書は加害者のうちの1人、ディラン・クレボルドの母、スー・……more
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『人の心は読めるか?』「どう読むか」の前に、そもそも「読めるのか?」
2017年05月20日一見、読心術の本のような体裁である。だが、タイトルをよく読むと、人の心を「どう読むか」ではなく、そもそも「読めるか?」という視点だということに気がつく。「他人を理解する上で大事なのは、相手の気持ちを推し量る能力の”穴”を把握することだ」。まえ……more
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『人はなぜ物語を求めるのか』物語との、虫のいい付き合い方
2017年05月03日本書は物語論(ナラトロジー)と呼ばれる研究分野の視点から、人はいかに物語によって世界を理解しようとしているのかを説く一冊だ。旧約聖書から桃太郎に至るまで、古今東西の様々な物語とその分析が引用されるだけでなく、時には認知心理学や神経科学などの知……more
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パンデミックの複雑な見取り図『感染源 防御不能のパンデミックを追う』
2017年03月19日『マラリア全史』など感染症をテーマとしたノンフィクションを多数著している科学ジャーナリストの最新作である。内容は疫学、認知科学、進化生物学、政治史など多岐にわたり、分野横断的だ。過去の事例もふんだんに盛り込みながら、時代も地域も分野の壁も飛び……more
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悪役になったのはここ最近『脂肪の歴史』
2017年02月19日原書房の“「食」の図書館”シリーズからの1冊である。バターやマーガリンといった食用脂肪の歴史を辿っていく。今では嫌われ者とされている脂肪も、地域や時代を越えて眺めるとずいぶん違った扱れ方をされていることがわかる。「悪役」としての脂肪に別の角度……more
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読み物としても味わえる教科書『質的社会調査の方法』
2017年01月19日『断片的なものの社会学』の著者としても知られる社会学者の岸政彦氏と、2人の若手研究者が質的調査の手法についてまとめた一冊だ。マニュアルのような教科書よりも、読み物として読んで面白い本を作りたいという試みが成功していて、社会学を学ぶ学生や院生に……more
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『マラス』凶悪ギャングの心の底は
2016年12月19日本書は、マラスと呼ばれる中米諸国のギャングたちの実像に迫るルポである。敵対組織だけでなく、一般市民を盗みや脅し、誘拐、殺人の標的にすることも少なくない彼らは、なぜギャングの道を選んだのか。表層的な凶悪さではなく、マラスたちの「素顔」を追い、底……more
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『ふわとろ』私たちはどこに「おいしさ」を感じているのか
2016年10月19日「シャキシャキ」、「ジューシー」、「もっちり」、「濃厚な」、「歯ごたえのある」などの、おいしい感覚を表す言葉の数々。「シズルワード」と呼ばれるこうした言葉たちを軸に、「おいしさ」とは何なのかを考えていく1冊だ。世の中に飛び交う食べ物の感想や宣……more