
成毛 眞
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『山口晃 親鸞 全挿画集』五木寛之「親鸞」連載で全開になった山口晃ワールド
2019年03月15日2008年9月から2014年7月まで1052回にわたって地方紙に連載された五木寛之の長編小説『親鸞』に添えられていた総画集である。もちろん1052点の挿画は原画通りフルカラーで掲載されている。…more
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『地磁気の逆転』地球に刻まれた歴史を読み解く
2019年03月14日本書は岩石に刻み込まれた壮大の地球史と、迫りつつある人類の危機を描いた読み応えのあるサイエンス本だ。前半では磁力の科学史をじっくりと記述し、後半は地磁気反転の謎とその恐るべき影響について警鐘を鳴らしている。…more
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『宇宙の覇者 ベゾスvsマスク』アマゾン創業者とテスラ創業者。宇宙ビジネスの覇者になるのは?
2019年03月10日アマゾン創業者のジェフ・ベゾスと電気自動車製造会社テスラ創業者のイーロン・マスク。太陽が昇るどこかの惑星を背景に2人が対峙している表紙は鮮烈だ。どちらかがほかの星に降り立つ日も近いことを暗示しているようだ。本書は宇宙開発史の大転換点となった2……more
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『東海道ふたり旅 道の文化史』エッセイの名手が読み解く知的でビジュアルな東海道五十三次
久しぶりに出会った、上品にして趣深いエッセイとして読んでいる最中だ。読み終えるのがもったいないのだ。全35章。3章ほどをゆっくりと読むために、わざと場所と時間を変えている。早朝のカフェでクロックムッシュと、午後はおにぎりをほおばりながら公園の……more
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『核兵器』テクノロジーの世紀にこそ学ぶべき核兵器の恐ろしさ
2019年01月20日本書は核兵器の基本原理から最新構造までを、現役の物理学者が徹底的に解説した稀有な技術書である。価格も9000円台と超弩級だし、数式やグラフも多様されているため、一般の読者向けに書かれたことは間違いない。…more
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『日本史で学ぶ経済学』趣味としての教養で心豊かに
『日本史で学ぶ経済学』は、「趣味としての教養」のニーズを満たす一冊だ。享保の改革について「足高の制」や「目安箱」などを中学校で学んだはずだ。本書はそこではなく、例えば勘定所を公事方(司法)と勝手方(行財政)に分割して行政の効率化を図ったことを……more
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『50 いまの経済をつくったモノ』経済学の視点から技術を見つめる一冊
人類が発明した50のモノを、洗練された筆致で書き綴った、気軽な読み物だ。取り上げられているのは「コンクリート」や「紙」など手で触れられるものから、「経営コンサルティング」や「不動産登記」など目には見えない社会制度までと幅広い。…more
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『広重TOKYO 名所江戸百景』広重の足跡をたどりながら浮世絵と過ごす上質な時間
見開きの右頁全面には、歌川広重の名所江戸百景から選んだ一枚の浮世絵。左頁には広重がその浮世絵を描いた場所の地図と、浮世絵に描かれている文物の絵解き。さらに時代背景や鑑賞のポイントも解説されている。つや消しの上質紙を使って、119枚もの浮世絵を……more
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『京都、パリ ―この美しくもイケズな街』斯界の泰斗が語り合う二都にまつわる薀蓄
辞書によると、「薀蓄」とは深く研究して身につけた知識のことである。しかし、小粋なバーの隣席に下手な薀蓄を傾ける御仁がいると、面倒くさいこと、この上ない。その話題が京都やパリであれば尚更だ。老舗カバン店のお家騒動だの、ルーブル美術館のスマホアプ……more
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放射線を正しく怖がるために『放射線について考えよう。』
2018年09月28日これほど丁寧で網羅的に放射線を説明している本をほかに知らない。この本を書棚に入れておけば、なにか事が起こったときにいつでも引き出して正確な知識を得ることができるだろう。健康診断でCT検査やPET検査を受けるときにも参考になる。しかも、科学に興……more
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『硯の中の地球を歩く』1億年前の原石に命を吹き込む無名の名工の誇りと決意
端正な本だ。カバーと帯を取りはずすと、表紙には原寸大に近い一面の硯が刷られている。装丁だけでなく、紙質や印刷も素晴らしい。ゆっくりと味わうように読んだ。著者は書道道具店の四代目。浅草の店では定番の筆や墨なども取り扱っているが、高級な硯は代々の……more
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『酒の起源―最古のワイン、ビール、アルコール飲料を探す旅』「食」から人類の歩みを知る
酒をテーマに選ぶ研究者や編集者たちは、酒に酩酊効果だけではない、アートを感じ取っているからかもしれない。タイトルがおしゃれというだけでなく、本文もグラスを片手にゆったりと読めるように工夫されている。本書も例外ではなく、要所に図版や地図が使われ……more
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『ノモレ』アマゾンの先住民を描いたノンフィクション文学の金字塔
2018年07月21日一昨年夏に放送されたNHKスペシャル「大アマゾン 最後のイゾラド」の姉妹作品である。イゾラドとは、文明社会と接触したことのないアマゾン先住民。狩猟と採取だけで太古から生きてきた自給生活者であり、その姿はまさに裸族だ。現在でも少人数のグループに……more
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『細菌が人をつくる』糞便移植も効果アリ?! 細菌100兆個の最新知識
うつ病や自閉症などの脳の病気も腸に関係しているという研究が報告されはじめた。過食症や肥満傾向も腸の影響を受けているという研究もある。この腸とは実際には腸内細菌と腸の共生的な関係のことだ。本書はこの知られざる腸内細菌だけではなく、人間と共生して……more
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『経営者 日本経済生き残りをかけた闘い』「伝説の記者」が描いた日本の近代資本主義
2018年05月29日「伝説の記者」と呼ばれていた著者は四半世紀にわたり永野塾という早朝勉強会を主宰していた。参加者の多くは若い記者や編集者たちだった。のちに高名なジャーナリスト、敏腕の編集長、大学教授などを輩出することになるその勉強会では、もっぱら主宰者である著……more