
鰐部 祥平
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『ヒトラーの原爆開発を阻止せよ! “冬の要塞”ヴェモルク重水工場破壊工作』戦記物では収まらない大作!!
本書は第二次世界大戦のさなか重水をめぐり行われた連合国とナチスとの攻防に脚光を当てた作品だ。舞台はノルウェーのオスロ西方にあるテレマルク県に広がるハンダルゲン高原という荒涼とした大地だ。極寒の地で冬には雪で閉ざされ、地元の猟師が時々、トナカ……more
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『海賊の世界史 古代ギリシアから大航海時代、現代ソマリアまで』海賊は社会を映す鏡である。
海賊ははるか古代より存在する。様々な文化、様々な海域、様々な政治状態、そして様々な民族によって海上での略奪行為は行われてきた。海賊と一言でいっても、その背景には多くの違いがある。だが、古代から現代、洋の東西を問わず、海賊には二つの見方が対立し……more
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『プーチンの国 ある地方都市に暮らす人々の記録』地方にこそ、国の姿がある
その国の首都のみを見ていては、その国の本当の姿を知ることはできない。これは世界中のどの国にも当てはまる事実であろう。ロシアでもこのように言われている。「モスクワは真のロシアではない」と。実際にこの言葉の意味を体現するような出来事もおきている。……more
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『ブラック・フラッグス 「イスラム国」台頭の軌跡』ザルカウィと群像
アフマド・ファディル・アル=ハライレー。それが本書の主人公の名前である。だが本名よりもこちらの名前のほうで世間には知られている。その名はアブー・ムサブ・アッ=ザルカウィ。イラクのアル=カーイダ(AQI)の創設者である。イラク戦争のさなか、米軍……more
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『戦場を歩いてきた カラー写真で読み解く戦場のリアル』ジャーナリストが見つめた戦地の日常
本書は日テレの番組、NEWS24の「戦場を歩いてきた」というコーナーを書籍化した物である。戦場ジャーナリストである佐藤和孝が戦場で撮り溜めてきた写真を通して、戦地に生きる人々の日常の姿を伝えるという趣旨の下に作成されたコーナーである。戦争と言……more
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『ボコ・ハラム イスラーム国を超えた「史上最悪」のテロ組織』地域型武装組織から国際テロ組織への変貌
2014年、ナイジェリアで学校の寄宿舎が武装した男たちに襲われ、200人以上の少女が誘拐された事件を覚えている人も多いであろう。事件後、インターネットでイスラーム過激派組織「ボコ・ハラム」が犯行声明を出し、その動画の一部は日本のメディアでも取……more
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『復讐者マレルバ 巨大マフィアに挑んだ男』 生きるために殺し続けた男。それは現代版の『罪と罰』なのか?
「マレルバ」とは雑草のことである。雑草こそが本書の主人公のアントニオ・ブラッソことジュゼッペ・グラッソネッリの少年時代のあだ名である。雑草の名から連蔵できると思うが、彼は生粋の犯罪者である不良少年だった。本書はイタリアのシチリア島出身である「……more
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『裁判所の正体 法服を着た役人たち』三権分立でさえ幻なのか
これは一人の元裁判官と一人のジャーナリストの対談である。しかし、元裁判官である瀬木比呂志があとがきで語っているように、対談集という枠では収まらない本に仕上がっている。裁判官とジャーナリストというプロフェッショナルな世界でお互いの技量を競いあっ……more
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『マリー・アントワネットの髪結い 王妃の素顔を見た男』王妃に仕えたある男の生涯
人をどのように評価するかは難しい。人間とは常に多面的かつ多層的な存在だからだ。しかし、私たちが他者を評価する際には、常に人の一面にスポットを当てることで単純な評価を行おうとする。他者にレッテルを貼る事により、一方的でわかりやすい物語を形成する……more
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毒のある戦略論!『戦争にチャンスを与えよ』思考が振り子のように揺れる。
毒のある本だ。本書を読み始めてすぐにそう感じた。毒のある題名を付けて購読者の気を引き、中身は平凡でつまらない本も多数存在するのだが、この本はそうではない。本書の著者エドワード・ルトワックはワシントンにある大手シンクタンク、米国戦略国際問題研究……more
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『太陽王ルイ14世 ヴェルサイユの発明者』文化現象の北極点を創った男
2017年04月18日時間や空間を図るには確かな基準点が必要となる。しかし、贅沢や美しさという抽象的なものにも基準となる点や線は存在するのだろうか。フランス文学者の鹿島茂は世間一般で言われるように、これまで美しさや贅沢にというものには基準となるものなど存在しないと……more
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『発達障害』まずは正しい知識から。
近年、アスペルガーやADHDといった発達障害が注目を集めている。本書の冒頭でも述べられているが、テレビドラマの登場人物でも発達障害を持っていると思われる行動をとる人物が活躍する作品が増えている。海外ドラマ『クリミナル・マインド』のDr.スペン……more
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『兵士に聞け 最終章』ついに完結する「兵士シリーズ」
ノンフィクション作家、杉山隆男の代表作といえば「兵士シリーズ」だろう。このシリーズは国防と言う重大な任務を背負いながら、国民にあまり知られることの無かった自衛隊、とくに兵士たちの生の姿を追い続け、見事なまでにその姿を浮き彫りにしてきた。第一作……more
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『プーチンの世界 「皇帝」になった工作員』プーチンに備わった6つのペルソナを読み解く
ウラジミール・プーチンという政治家は多くの謎に包まれた男である。ユーラシア大陸にまたがる大国を長年にわたり統治し、欧米の価値観や政治スタンスとは一線を画す事により、周辺地域に大きな影響力を与え続けてきた。この男が何を考え、どのような世界観を持……more